映画 Shine (シャイン) のあらすじ・感想

映画 Shine (シャイン) のあらすじ・感想

今回のオーストラリア映画紹介は、1996年公開の『Shine (シャイン)』。実在するメルボルンのピアニスト、デビッド・ヘルフゴット (David Helfgott) の半生を描いた物語です。

(出典: https://en.m.wikipedia.org)

アカデミー賞を始めとする数々の賞を受賞したこの作品。ピアノのシーンはデビッド・ヘルフゴット本人が演奏しているそうです。

とても感動的な作品ですが、デビッドの家族や当時の関係者からは、作中の父親の描写は事実と反し、デビッドが精神を病んだ原因は父親ではないという抗議の声も上がっていて、1998年にデビッド姉マーガレットが 『Out of Tune: David Helfgott and the Myth of Shine』という抗議本まで出版しているという裏話も。

 

タイトル Shine (シャイン)
監督 Scott Hicks
脚本 Jan Sardi
製作 Jane Scott
公開 1996年
上映時間 105分

 

出演:
David Helfgott (大人) 役:
ジェフリー・ラッシュ (Geoffrey Rush) 🇦🇺
David Helfgott (青年) 役:
ノア・テイラー (Noah Taylor) 🇬🇧 🇦🇺
David Helfgott (少年) 役:
アレックス・ラファロヴィッツ (Alex Rafalowicz) 🇦🇺
Gillian役:
リン・レッドグレイヴ (Lynn Redgrave) 🇬🇧
Peter Helfgott役:
アーミン・ミューラー=スタール (Armin Mueller-Stahl) 🇩🇪

 

私の総合的感想:

純粋に感動しました。親子の関係について考えさせられる話ですが、最後はとても幸せな気持ちにさせられます。作中では絶えずピアノの音が流れているのも雰囲気があって良かったです。

 

 

⚠️ ここから先はネタバレあります。

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あらすじ

メルボルンでユダヤ系ポーランド人の両親の間に生まれたデイヴィッド・ヘルフゴット (1947〜) は、幼い頃から厳格な父親の元でピアニストの英才教育を受けて育ちました。

父親の期待に応えるように、十代の頃から数々のコンクールで才能を発揮するデビッド。そして、彼が14歳の時にコンクールに優勝し、アメリカに音楽留学という話が持ち上がります。

留学に心を躍らせていたデビッドでしたが、父親に大反対し泣く泣く断念。しかし、19歳の時にロンドン留学特待生の話が来た時は、父親の反対を押し切って進学しました。

留学先で猛練習の末、コンサートで難曲ラフマニノフの「ピアノ協奏曲第3番」を演奏。この曲を弾きこなす事は父親の夢でもありました。

舞台で大成功を収めたものの、いちばん褒めて欲しかった父親はついに彼と会ってはくれず、それから間もなくデビッドは統合失調症と診断され、10年以上の歳月を精神科病棟で過ごす事になってしまいます。

療養後、あるきっかけで1984年からパースにある “Riccardo’s” というワインバーで毎週土曜の夜に演奏を始め、徐々に知名度が上がっていく傍ら、占星術師ジリアン (Gillian) と出逢い、結婚。

父親とも再会を果たし、彼は彼自身の人生を歩んでいきます。

感想

実はこの映画、公開当時に地元の映画館で観てるんですけど、ほとんど内容を覚えてなかったんですよね。

1996年だから、私が高校生の頃。あの頃まさか私が将来オーストラリアに住むとは思ってなかったので、メルボルンとか言われても全然ピンと来てませんでした。

で、今回23年ぶり(!) に記憶の断片をたぐり寄せながらこの映画を観たのですが、そうだ、そう言えば私、この映画でラフマニノフを好きになったんだって思い出しました。確か、映画観た後に速攻でCDを買いに行ったはず。

ラフマニノフのピアノ協奏曲第3番 (Piano Concerto No.3) は作中でよく流れている曲で、主人公であるデビッドの神経質で繊細な感じとよくマッチしているんです。

Sergei Rachmaninoff, 1910s

この話を今流行りの “毒親” で片付けるのは簡単ですが、でも実際もしも自分の子供が期待通りの才能と資質を持っていたら、親としては舞い上がってしまうものなのかもしれないな…と考えさせられました。

それでも親は、子供に自分の夢を叶えてもらおうとしちゃいけないですけどね。子供を通して親は成長すると言われますが、だからといって子供を自分の分身として同一視するのは違うよなあ、と。

子供と親とは別人格。ここが難しい所で、愛情とエゴを混同してしまう人は意外と多いんですよね。

いや〜このお父さん、あまりにも私の父とそっくりで、懐かしい感じすらしました。

あれをするな、これをするなと子供の行動を制限して「親の言う事を聞いていれば間違いない」「お父さんほどおまえを愛してる人間は世界中どこにもいない」という言葉で縛って、夢をあきらめさせようとするシーンとか。

デビッドが「アメリカで勉強出来る!」って大喜びして心待ちにしていたのに、親の権利を振りかざされて突然奪われるショックと絶望感。これはとても他人事には感じられませんでした。

当時高校生だった私は、この映画を観てもおそらく「よくある親子問題」くらいにしか思ってなかったと思うんですけど、大人になってかなり経った今これを観ると「あれ?これはこれから起こる私の人生を示唆してたんじゃないかな?」と思ってしまうくらいデジャブ。あの頃は当事者過ぎたので、逆にこの話が他人事に思えたのかもしれません。

反対を押し切ってイギリスへ留学したデビッドに対して、夢を裏切られた父親の持つ愛情は、強い憎しみに変わってしまいます。

ただただ、父親の期待に応えようと幼い頃から努力し、イギリスでも父親に褒めてもらいたいが為に猛練習して大成功を果たしたのに、会ってもくれない父親。

似たような状況で、私の場合は開き直ったのですが、デビッドは精神を病んでしまうんですよね。

でも彼は、病気にならないと父親の呪縛から自由になれなかったのかもしれません。それを裏付けるかのように、病気になった後のデビッドは周囲を戸惑わせるような振る舞いがまるで子供のよう。

そうやって少しずつ良い子の殻から自分を取り戻していったのではないでしょうか。

それにしても、芸があるって強いですね。それだけで周りを笑顔にさせるってすごい事です。

デビッドの人生が好転し始めた頃、まるで自分の過去と対峙するかのように目の前の現れた父親。そしてハグ。ああ、彼は父親の呪縛を乗り越えたんだなあ…と思いました。

だけど遠回りはしたものの、父親の熱心な教育がなければデビッドはピアニストとして成功しなかったかもしれないんですよね。ピアノを通じて出会った奥さんと幸せそうに笑うデビッドはいなかったかもしれません。

色んな出来事を長い長い時間をかけて乗り越えて来たからこ見えてくる光景があります。彼を見ているとこちらも幸せな気分になれるのも、そんな彼だからかもしれません。

人生にムダな事なんて、きっとないんです。

おわりに

最後にラフマニノフについて書いておきます。

セルゲイ・ラフマニノフ
(Sergei Rachmaninoff 1873-1943)

ロシアの作曲家でピアニスト。ピアノ協奏曲第3番は1909年に作曲され、ピアノ協奏曲第2番と共にに人気の高い代表作。1929年に彼自らが録音したピアノ演奏も残されています。

今でこそ、ラフマニノフはレパートリーのひとつとして弾くピアノ二ストが多くなりましたが、ひと昔前までは演奏者の高い技術が要求される難曲と言われ、弾きこなすピアニストは多くなかったそうです。

尚、映画のモデルとなったデイヴィッド・ヘルフゴット本人は、現在ニューサウスウェールズ州の Happy Valley の自宅サロンで演奏を続けているそうです。

2015年には、『Hello I Am David! (邦題 デイヴィッドとギリアン響きあうふたり)』というドキュメンタリー映画も公開されました。

予告だけでも幸せな気分になるので、観てみてください。これは日本語字幕入ってます。