映画 The Dish (月のひつじ) のあらすじ・感想

  • 2019年7月1日
  • 2019年8月9日
  • 映画

近い未来に宇宙旅行が可能になるだろうと騒がれている昨今ですが、1969年7月20日に人類初の月面歩行を果たしてから、今年2019年はちょうど50周年になります。

「一人の人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては大きな飛躍である(That’s one small step for a man, one giant leap for mankind)」と言った当時のニール・アームストロング (Neil Armstrong) が月面を歩く姿は、あまりにも有名です。

でもこの映像、実はオーストラリアの小さな田舎町から生中継されていた事は、あまり知られていないのではないでしょうか?

2000年に公開された『The Dish』は、そんなオーストラリアで起こった実話をベースに作られた作品です。

(出典: https://en.m.wikipedia)

“Dish” とは電波望遠鏡 (Radio Telescope) という天体観測する装置の事で、邦題は『月のひつじ』。羊が多い町でアポロ11号の月面着陸の様子を中継したからなのでしょうが、タイトルだけでは何の話か分かりにくいですよね。

この映画の舞台はシドニーから約360km 離れた人口1万人ちょっとのパークス (Parkes) という町。ここで実際に起きた出来事が元になってはいますが、オーストラリアのコメディアンたちが脚本作りに加わって、多少脚色されています。

ニール・アームストロングの撮ったバズ・オルドリン

ちなみに、映画に出てくるアポロ計画とは、1961年から1972年までNASAが行った有人月面着陸計画で、最後のアポロ17号までで計6回、12人が実際に月面を歩きました。

 

 

タイトルThe Dish (月のひつじ)
監督Rob Sitch 🇦🇺
脚本Santo Cilauro 🇦🇺
Tom Gleisner 🇦🇺
Jane Kennedy 🇦🇺
Rob Sitch 🇦🇺
公開2000年
上映時間101分

 

出演:
Cliff Buxton 役:
サム・ニール (Sam Neill) 🇮🇪🇳🇿
Al Burnett 役:
パトリック・ウォーバートン (Patrick Warburton) 🇺🇸
Glenn Latham 役:
トム・ロング (Tom Long) 🇺🇸
Ross “Mitch” Mitchell 役:
ケビン・ハリントン (Kevin Harrington) 🇦🇺
Bob McIntyre 役:
ロイ・ビリング (Roy Billing) 🇳🇿🇦🇺
Janine Kellerman役:
エライザ・ショネット (Eliza Szonert) 🇦🇺
Rudi Kellerman 役:
テイラー・ケイン (Tayler Kane) 🇦🇺

 

 

私の総合的感想:

この映画はオージースラング全開で、ハラハラドキドキしながらも笑えるし、アメリカとオーストラリアの文化の違いも良く分かって面白いです。そして、最後はしっかり感動もさせてくれますよ!

 

 

⚠️ ここから先はネタバレあります。

 

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あらすじ

1969年、アメリカのホワイトハウスからオーストラリアの首都キャンベラの首相のもとへ一本の電話が入りました。

その内容はなんと、月に着陸したアポロ11号の信号を、羊牧場の真ん中に建っているパークス (Parkes) の天文台から受信して中継して欲しいとの事でした。

パークには南半球でいちばん大きな電波望遠鏡を持つ天文台があり、NASAはそれに目を付けたのです。

というのも、アポロ11号が月面着陸する予定日は月がアメリカの裏側に来るので北半球からでは受信が難しく、弱くて見失いやすい信号を受信するには、巨大なパークスの電波望遠鏡が必要でした。

かくしてパークスの町は大騒ぎです。

アメリカ側とオーストラリア技術者が協力してミッションを成功させる為に、パークス展望台にはNASAのスタッフが派遣されるのですが、最初は働き方や文化の違いから衝突も起きました。

そうこうしているうちに、ついにケネディ宇宙センターからアポロ11号が打ち上げられ、月面着陸の数日前にはパークスにアメリカの大使が到着。当日はオーストラリアの首相が訪問するなど、いよいよ羊の町は盛り上がっていきます。

一方、重大責任を任された天文台の技術者たちは、トラブルを乗り越えながら結束を固めていくものの、推定6億人と言われる世界中の人たちがテレビの前で見守る中、究極の選択を迫られる事になりました…。

感想

オーストラリア人は何かとアメリカに対抗意識を持つイメージがありますが、作中でも両国のその違いがよく現れていて面白いと思いました。

NASAの中でバリバリ働くアメリカ人が、重要な任務を遂行すべくオーストラリアの片田舎に来たものの、のんびり仕事をするオージーを見たらそりゃもうヒヤヒヤするでしょう。

でも、オーストラリアのベテランスタッフが都会から来たスマートな人間に引け目を感じて過剰反応するのも分からなくはありません。ただ、多くの日本人は仕事面に関してはアメリカ側に共感する人が多いでしょうか。

オーストラリア人の大らかさやのんびりした雰囲気、悪く言えば田舎者さがよく出ていて、脚本書いたのオーストラリア人のはずですが、オーストラリア人は本当に自虐ネタが好きだよね…?と思うくらい、色んな人が色んな事をやらかしてくれます。

とにかく、登場人物みんなキャラが立っていて個性が強いんです。

いくら60年代のど田舎といっても若者たちは純粋過ぎるくらい純粋で、「オーストラリアの首相が町に来る!」「自分の町で歴史的瞬間の中継が行われる!」と素直に浮かれる人々は、ただただ微笑ましい。女性が「ここだけの話よ」と言ってウワサがあっという間に広がるのは万国共通ですね。

個人的には町長が嬉しそうにみんなに言いふらしたりチョウネクタイしてソワソワしたりする姿がとてもかわいらしく思いました。だからこそ、トラブルが起きたとこっそり知らされた時の町長の血の気が引く気持ちの落差は気の毒なほど。

のんびりした雰囲気漂う田舎にいきなり降って湧いて来た世界規模の話は、誇らしい反面、プレッシャーは相当なものだったのではないかと予想します。ちょっとしたいつものうっかりミスでは済まされませんからね。

途中からは、観てるこっちまでドキドキハラハラ。

…と思ったらしっかり笑わせるシーンもしっかり用意されてるし、ハラハラしたり笑ったり感動したり、忙しい映画です(笑)

こうやって、いつの間にかどんどんとそれぞれのキャラクターの魅力に引き込まれ、最終的には結局みんな良い人だったなーという余韻が残りました。

そして、最後は「人類ってすごい!」という心地よい充実感と感動で満たされて終わります。

それにしても、現代人は慣れ過ぎて何も感じなくなっていますが、こんな風にアメリカとオーストラリアと月で連絡を取り合い、世界中へ発信するってすごい事だな、と改めて思いました。

あと私はレトロ好きなので、チラッと出てくる60年代っぽい車やキッチンの内装などがかわいかったです。

オージーイングリッシュの宝庫

この映画、笑ってしまうくらいオーストラリア英語だらけなので、スラングを勉強したい人にも良いかもしれません。学校ではなかなか習わない、普段オージーが使っている言葉を聞く事が出来ます。

「Pack of galahs! (クレイジーのような意味)」と怒鳴られても、アメリカ人はポカーン。

ただ、「 I’m a drongo! (オレはバカじゃない)」は、おじいちゃん世代が使うような古いオージースラングらしいです。若い世代はもう使わない死語になってるスラングって結構存在するんですよね (笑)

おわりに

実は、作中ではパークスだけが南半球の中継地になっていましたが、本当は首都キャンベラに近いハニーサックルクリーク (Honeysuckle Creek) も中継地として使われていて、月面着陸の様子は紛れもなくパークスからの中継ですが、受信はパークスよりも先にハニーサックルとカリフォルニア州ゴールドストーンがしてたようです。

停電やNASAから派遣されたスタッフとの摩擦もなかったし、天文台に来たアメリカ人はひとりではなく数名、当時のオーストラリア首相 John Gorton はパークスではなくハニーサックルのみの訪問しただったのだとか。

ただ、パークスで110 km / h (68 mph) の強風に煽られながら、60度の傾斜で危険を冒して月面歩行の映像を中継したのは本当だそうです。

それを聞くと「なーんだあ」となりますが、確かにあれが本当だったら、NASAに嘘ついたのがバレて問題になりそうですよね(笑)

アポロ計画を振り返りたくなった人の為にYouTubeも貼っておきます。

 

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