アポロ11号の月面着陸を舞台にした映画『The Dish (2000) -邦題: 月のひつじ』 のあらすじ・感想

映画The Dish (ザ・ディッシュ)は、1969年にアポロ11号が月面着陸した際、オーストラリアの小さな田舎町にあるパークス天文台が中継することになった時の実話をベースにした作品です。

人類初の月面着陸の映像を地球に中継するという重要な役割を与えられたパークス天文台のスタッフの奮闘や、アメリカ人とオーストラリア人のすれ違いなど、静かな田舎町の人々と世界的な歴史的出来事が交錯する様子がユーモアたっぷりに描かれています。

日本語のタイトルは『月のひつじ』です。

 

(出典: https://en.m.wikipedia)

 

The Dish (月のひつじ) について

「一人の人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては大きな飛躍である (That’s one small step for a man, one giant leap for mankind)」という名言を残したニール・アームストロングが月面を歩いた映像は、とても有名です。

ですが、この映像が実はオーストラリアの小さな田舎町から生中継されていたというのは、あまり知られていないのではないでしょうか。

 

映画の舞台となっているのは、シドニーから西へ約360km内陸にある人口1万人ちょっとの田舎町、パークス (Parkes) です。

「Dish」というのは、電波望遠鏡 (Radio Telescope) という天体観測する装置のこと。

邦題の『月のひつじ』は、羊が多い町だからなのでしょうが、ちょっと不思議なタイトルではあります。

 

タイトル The Dish (月のひつじ)
監督 Rob Sitch 🇦🇺
脚本 Santo Cilauro 🇦🇺, Tom Gleisner 🇦🇺, Jane Kennedy 🇦🇺, Rob Sitch 🇦🇺
公開 2000年
上映時間 101分

出演:

Cliff Buxton 役: サム・ニール (Sam Neill) 🇮🇪🇳🇿
Al Burnett 役: パトリック・ウォーバートン (Patrick Warburton) 🇺🇸
Glenn Latham 役: トム・ロング (Tom Long) 🇺🇸
Ross “Mitch” Mitchell 役: ケビン・ハリントン (Kevin Harrington) 🇦🇺
Bob McIntyre 役: ロイ・ビリング (Roy Billing) 🇳🇿🇦🇺
Janine Kellerman役: エライザ・ショネット (Eliza Szonert) 🇦🇺
Rudi Kellerman 役: テイラー・ケイン (Tayler Kane) 🇦🇺

 

 

Eri
この映画はオージースラング全開で、ハラハラドキドキしながらも笑えるし、アメリカとオーストラリアの文化の違いも良く分かって面白いです。そして、最後はしっかり感動もさせてくれますよ!

映画を見る際の豆知識

この映画は実際の出来事がベースにはなっていますが、オーストラリアのコメディアンたちが脚本作りに加わって、多少脚色されています。

事実と脚色

映画では停電やNASAから派遣されたスタッフとの摩擦が描かれていますが、実際はそんな事実はありません。

それに、作中ではパークスだけが南半球の中継地になっていましたが、本当は首都キャンベラに近いハニーサックルクリーク (Honeysuckle Creek) も中継地として使われています。

確かに月面着陸の様子はパークスからの中継でしたが、受信はパークスよりも先にハニーサックルとカリフォルニア州ゴールドストーンがしてたようです。

他にも天文台に来たアメリカ人はひとりではなく数名、当時のオーストラリア首相 John Gorton はパークスではなくハニーサックルのみの訪問など、事実と異なる部分は色々あります。

ただ、パークスで110 km / h (68 mph) の強風に煽られながら、60度の傾斜で危険を冒して月面歩行の映像を中継したのは本当だそうです。

アポロ計画

話の軸となる「アポロ計画」とは、1961年から1972年までNASAが行った有人月面着陸計画です。

最後のアポロ17号まで計6回、12人が実際に月面を歩きました。

余談ですが、1969年7月20日に人類初の月面着陸を果たしてから、2019年でちょうど50年目です。

最近は、近い未来に宇宙旅行が可能になると騒がれているのを聞くようになりましたね

大量のオージースラング

この映画、笑ってしまうくらいオーストラリア英語だらけなので、スラングを勉強したい人にも良いかもしれません。

「Pack of galahs! (クレイジーのような意味)」と怒鳴られても、アメリカ人はポカーン。

「 I’m a drongo! (オレはバカじゃない)」は、おじいちゃん世代が使うような古いオージースラングらしく、若い世代はもう使わない死語だそうです。

そういう楽しみ方もありかもです (笑)

あらすじ (ネタバレ注意)

1969年のある日、アメリカのホワイトハウスからオーストラリアの首都キャンベラの首相のもとへ、一本の電話が入りました。

その内容はなんと、月に着陸したアポロ11号の信号を、羊牧場の真ん中に建っているパークス (Parkes) の天文台から受信して中継して欲しいとのこと!

パークには南半球でいちばん大きな電波望遠鏡を持つ天文台があったので、NASAはそれに目を付けたのです。

なぜわざわざオーストラリアなのかというと、アポロ11号が月面着陸する予定日は、月がアメリカの裏側に来るので北半球からでは受信が難しかったからです。

弱くて見失いやすい信号を受信するには、巨大なパークスの電波望遠鏡が必要でした。

かくしてパークスの町は大騒ぎになります。

 

アメリカとオーストラリアの技術者が協力してミッションを成功させるため、パークス天文台に NASA のスタッフが派遣されるものの、両者は働き方や文化の違いから衝突もありました。

そんな中、ケネディ宇宙センターからアポロ11号が打ち上げられ、月面着陸する数日前にはパークスにアメリカの大使が到着。

当日はオーストラリアの首相が訪問するなど、羊だらけの町は盛り上がります。

重大責任を任された天文台の技術者たちは、トラブルを乗り越えながら結束を固めていきますが、推定6億人と言われる世界中の人たちがテレビの前で見守る中、究極の選択を迫られる事になり…。

続きは実際に観てみてください。

個人的な感想

NASAでバリバリ働くアメリカ人と、片田舎でのんびりと仕事をするオーストラリア人。

アメリカ人がオーストラリアの働きぶりを見てヒヤヒヤするのも分かりますし、オーストラリアのベテランスタッフが都会から来たスマートな人間に引け目を感じて過剰反応してしまう気持ちも分かります。

とにかく両国の違いがよく表現されていて、面白いと思いました。

オーストラリア人の大らかさや、のんびりした雰囲気。悪く言えば田舎者さがよく出ていて、脚本書いたのオーストラリア人のはずなのに、自虐ネタ?と思うくらい、色んな人が色んな事をやらかします。

登場人物もみんなキャラが立っていて、個性が強い!

でも、いくら60年代のど田舎とはいえ、若者たちは純粋過ぎるくらい純粋で、「オーストラリアの首相が町に来る!」「自分の町で歴史的瞬間の中継が行われる!」と素直に浮かれる人々は、ただただ微笑ましいです。女性が「ここだけの話よ」と言ってウワサがあっという間に広がるのは万国共通ですね。

個人的には町長が嬉しそうにみんなに言いふらしたりチョウネクタイしてソワソワしたりする姿がとてもかわいらしく思いました。

だから「トラブルが起きた」と、こっそり知らされた時の町長の血の気が引く様子は、気の毒なほどです。

 

のんびりした雰囲気漂う田舎にいきなり降って来た世界規模の話は、誇らしい反面、プレッシャーは相当なものだったでしょう。

いつものちょっとしたうっかりミス、では済まされないでしょうから。

観てるこっちまでドキドキハラハラさせられました。

…ですが、しっかり笑わせるシーンも用意されてますし、ハラハラしたり笑ったり感動したり、忙しい映画です(笑)

こうやって、いつの間にかどんどんとそれぞれのキャラクターの魅力に引き込まれ、最終的には結局みんな良い人だったなーという余韻が残りました。

そして、最後は「人類ってすごい!」という心地よい充実感と感動で満たされて終わります。

 

アメリカとオーストラリアと月で連絡を取り合い、世界中へ発信するなんて。

現代人はあまり何も思わないかもしれませんが、改めてすごいことだなあと思いました。

あと、チラッと出てくる60年代っぽい車やキッチンの内装などが、とってもかわいかったです。

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