はい、勝手に始めた「今週のオーストラリア映画紹介」です(笑)
オーストラリアの映画はたくさんありますが、今週はニコール・キッドマン主演の『Australia (オーストラリア)』を紹介します。
(出典: https://en.m.wikipedia.org)
この映画はオーストラリア映画史上で2番目に高い興行収入という、国内で大成功を収めた作品。撮影はシドニー (NSW)、ダーウィン (NT)、カナナラ (WA)、ボーエン (QLD) で行われたそうです。(でも衣装デザイン賞を受賞したくらいで大きな賞は取っていません。)
映画の重要なシーンで度々現れるアボリジニのおじさんの演技がナチュラルだなあ〜と思っていたら、過去にも『クロコダイルダンディ』など色んなオーストラリア映画に出てる俳優兼ダンサーなんだそうです。どうりで!
アメリカとオーストラリアの共同作品だからなのか、英語がすごく聴きやすいと思いました。
タイトル | Australia (オーストラリア) |
監督 | Baz Luhrmann |
製作 | Anna McLeish / Sarah Shaw |
脚本 | Baz Luhrmann Catherine Knapman G. Mac Brown |
公開 | 2008年 |
上映時間 | 165分 |
出演:
Lady Sarah Ashley役:
ニコール・キッドマン (Nicole Kidman) 🇺🇸🇦🇺
Drover役:
ヒュー・ジャックマン (Hugh Jackman) 🇦🇺
Neil Fletcher役:
デビッド・ウェナム (David Wenham) 🇦🇺
King Carney役:
ブライアン・ブラウン (Bryan Brown) 🇦🇺
Nullah役:
ブランドン・ウォルターズ (Brandon Walters) 🇦🇺
King George役:
デヴィッド・ガルピリル (David Gulpilil) 🇦🇺 他
私の総合的感想:
私的にちょっとモヤモヤする所もありますが、雰囲気満点なのでオーストラリアが知りたい人の入門編には良いかも。
⚠️ ここから先はネタバレあります。
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あらすじ
舞台の始まりは1939年のオーストラリア。
物語の前半は、イングランドの貴族サラが牛追いのドローバーやアボリジニの混血であるナラたちと協力して、牛たちを港へ連れて行くアドベンチャーが中心です。
イングランドの貴族サラは、オーストラリアに行ったっきりの夫の様子を見る為にイングランドからダーウィンまでやって来ました。
初めての土地で彼女を迎えたのは、荒っぽい男たちや原住民たちのケンカや喧騒で、何もかもがカルチャーショックの連続。そんな中、アウトバックを車で数日かけてやっと夫が所有している牧場にたどり着いたのですが、彼女がそこで見たのは夫の変わり果てた姿でした。
葬儀を済ませたサラは、そのままイングランドに戻る段取りでしたが、混血の男の子ナラの告白により夫の所有する牛や牧場を盗もうとしていた黒幕がいる事を知ります。
サラは亡くなった夫の代わりに牛追として1500頭の牛たちを遠く離れたダーウィンまで連れて行き、自ら軍と契約をする決心をしました。その為に必要な人数は7人。彼女はドローバーやナラたちの協力を得ながら厳しいアウトバックの中を進んで行くのでした。
中盤はラブストーリーです。目的を成功させたサラたちはドラマティックに盛り上がり、サラとドローバーの関係は最高潮。ナラも引き取り、みんなで幸せに暮らしてハッピーエンド。
…なのですが、話はまだまだ一転二転して、後半ではアボリジニの血の入った子供を育てる事で出て来た問題に悩み葛藤。執拗に嫌がらせをしてくるニールやナラを捕まえて施設に入れたがる警察。そして、日本軍によるダーウィンの爆撃により再び運命に翻弄される主人公たちでした。
感想
この映画、公開当時は賛否両論だった記憶があります。でも最近のレビューを見るとどれもなかなか高評価のようですね。
あの頃のレビューで「オーストラリア人だけ絶賛してる映画」という揶揄がありました。なるほどな〜と思ったのは「牛追いという職業が身近ではなさ過ぎて感情移入出来ない」という感想。確かにそれはそうかもしれません。
まあ、でもタイトルを “オーストラリア” にしたからにはオーストラリアらしい描写が必要なわけで、牛追い (牛を移動させながら生計を立てる人) はオーストラリアの歴史を語る上で欠かせない職業ですからねえ。
あと、オーストラリアは人種差別とか色々あややこしい国なので、上手く配慮してストーリーを作らないと大変だろうなあ、と思いながら観ました。
冒頭でいきなり「日本軍が1941年12月17日に真珠湾を攻撃した後、オーストラリアの北側ダーウィンに来て攻撃した。そしてその頃オーストラリアでは、政府によりアボリジニの子供たちを親元から引き離し、白人の教育を施す政策がとられていた」的な内容の字幕が出て来て物語が始まるんですよ。
オーストラリアの話を観ようとしてるのに、突然 “日本” という言葉が出て来て驚いた日本人って結構いるんじゃないでしょうか。
まあ、オーストラリアの歴史を語る上で、現在もオーストラリア人にとってトラウマ的存在となっている第二次世界大戦中の日本軍によるダーウィンの攻撃は、外せないでしょうからね。そのわりには日本でほとんど知られていないので、この映画が知るきっかけになった人も多いのではないかと思います。
ただひとつ言いたいのは、やるからにはちゃんと描写して欲しいなあっていう事。
話が盛り上がる為の演出だったのかもしれないですけど、実際の日本軍は空撃のみで陸地には上がってないのに、映画では島に上陸して人を撃つシーンがあるんですよ。そこは勝手に作らないで欲しい。ここ、ちょっとモヤモヤするポイントです。
この映画の魅力はオーストラリアの雄大な自然と、だんだんと変化していく人々の心ではないかと。
気位の高いお嬢様が、粗野で野蛮な国にポンっと来てしまって、ショッキングな出来事の連続。これでもかというくらい思いっきりオーストラリアの洗礼を受けた後、だんだんとたくましく変化して行く過程は観ていて面白いです。
小さなナラを励ます為に柄でもなく歌をぎこちないなりに歌ってあげたり男顔負けで牛を追う姿は、最初のツンツンしていた彼女とはまるで別人のよう。
オーストラリアは自然の規模も大きいですから、夫に先立たれて途方にくれる彼女の背景に広がる大自然は、ますます彼女の小ささを際立たせて、こっちまで心細くなって来るようでした。
なのに、勇敢に立ち上がろうと彼女が決めた途端、背後に広がる大自然がこれから始まるアドベンチャーの舞台のように見えて来るので不思議です。
そして、自分ではコントロール出来ない人間の生死。
ちょっとした運の悪さに左右される人々の運命は、時代背景や環境の厳しさを改めて実感させられます。
人種や身分、性別など様々な差別の描写が出て来ますが、主人公たちはアボリジニや中国人たちと分け隔てなく接するキャラクター設定のようです。
でも、それってちょっときれい過ぎないかな、と疑ってしまう私です。現実的に考えたらそんなにすんなり行くものでしょうか。まあ、そんな描写まで入れてたらますます長くなってややこしくなるでしょうからね。
(余談ですが、個人的に料理人として雇われていた中国人のしゃべり方が、知り合いに似ててかわいかったです。)
最後の字幕で「アボリジニの人たちに対する同化政策は1973年に廃止され、2008年に首相が謝罪した」としめくくって終わるんですけど、うーん、何、このちゃんと謝罪しましたよ的な字幕。
実際の政府は散々この事を隠蔽しようとしてた挙句、謝るのを頑なに拒否し続けてやっと2008年になって謝罪したけど、差別はまだ残っているし問題は山積みなんですけどね。
まあ、それは置いておいて、エンターテーメントとしてはとてもドラマティックで面白い作品だと思います。
ひと山もふた山も盛り上がって、まだまだあるんだ⁉︎ みたいな感じで、結局3時間近く画面に釘付けになる事になります。
おわりに
私は公開されてわりとすぐこの映画を観たので、今回2回目の視聴でした。
当時、私ははシドニーで学生をしていて、その時授業の一環としてクラスで観たのですが、20〜30人くらいのクラスメイトの中に日本人は私ひとりだけでだったんですよね。
その時の私の気まずさ、想像できますか?10年前の嘘のような本当の話です、懐かしい(笑)
とにかく長編なので、たっぷり時間のある時にじっくり観るのが良いですね。 プラス歴史的背景も知ってたら更に楽しめるかも。
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