南オーストラリア名物「パイフローター」とは?アデレードで食べられるおすすめ店

オーストラリアの食べ物といえば、ミートパイやラミントン、ベジマイトなどが有名ですが、南オーストラリア州には、州外では意外なほど知られていない名物があるんです。

そのひとつが、ミートパイを濃厚なグリーンピースのスープに浮かべたパイフローター(Pie Floater

19世紀後半からアデレードの夜を支えてきた庶民の味で、2003年には、ナショナル・トラストによって南オーストラリア州のヘリテージ・アイコンにも認定されています。

しかし現在は、かつて街角に並んでいた常設のパイカートが姿を消し、いつでも食べられる店は多くありません。そこでこの記事では、パイフローターの歴史や食べ方とともに、2026年現在、アデレード周辺で提供が確認できる店を紹介します!

 

パイフローターとは?

パイフローターは、温かいミートパイを、とろみのあるグリーンピースのスープに入れた料理です。伝統的にはパイを上下逆さにしてスープへ浮かべ、その上からトマトソースをかけます。

基本の組み合わせはとてもシンプルです。

  • オーストラリア式のミートパイ
  • 乾燥したグリーンピースから作る濃厚なピー・スープ
  • トマトソース

好みによって、モルトビネガー、ミントソース、ウスターソース、塩、コショウなどを加えることもあります。店によってスープの濃さやパイの沈み具合、パイを上向きにするか逆さにするかも少しずつ異なりますが、昔ながらのスタイルを味わいたいなら、まずは逆さのパイ+ピー・スープ+トマトソースで注文してみるとよいでしょう。

どんな味?どうやって食べる?

味を想像するなら、オーストラリアのミートパイと、濃厚なスプリットピー・スープを一緒に食べるような感覚です。パイの香ばしい生地と肉のグレービーに、豆のやさしい甘みとコクが加わります。見た目ほど奇抜な味ではなく、寒い日にうれしい、ボリュームのあるコンフォートフードです。

食べ始めはパイ生地のサクサク感が残り、時間がたつにつれてスープを吸った部分がしっとりしていきます。ナイフとフォークを使うこともできますが、パイを崩しながらスープと一緒にスプーンですくうのが食べやすい方法です。

初めて食べるときのコツ:トマトソースやビネガーを最初から大量にかけず、まずひと口食べてから少しずつ足すと、パイとスープそのものの味も楽しめます。

パイフローターはどこで生まれた?

パイフローターの発祥には複数の説があり、「この人物が最初に作った」と完全に確定しているわけではありません。

有力な説のひとつでは、南オーストラリア州中北部の町ポート・ピリー(Port Pirie)でパン職人をしていたアーン・“ショーティー”・ブラッドリー(Ern “Shorty” Bradley)が、1890年代に考案したといわれています。ただし、現在確認されている初期の印刷記録は1914年。ブラッドリーが映画館近くで営んでいた夜のコーヒー・ストールの広告に、温かいパイやパスティ、ソーセージなどとともに「Floaters」が記載されています。

一方、1880年代にスコットランドからアデレードへ移住した菓子職人ジェームズ・ギブス(James Gibbs)も、初期のパイカートでフローターを広めた人物として知られています。

パイと豆を組み合わせる食文化自体は、イングランド北部の「ピー・アンド・パイ・サパー」に由来する可能性があります。スープに入れるダンプリングを「floater」と呼ぶ地域もあり、南オーストラリアへ渡った英国系移民の食文化が、現地の夜食として独自に発展したと考えられています。

アデレードの夜を支えたパイカート

アデレードでは、少なくとも19世紀後半から、馬や人が引く移動式のパイカート(Pie Cart)が街角で営業していました。19世紀末の最盛期には、市内におよそ13台が並んでいたといわれています。

パイカートは、夜遅くまで働く人や酒場帰りの人でも温かい食事を安く買える、当時としては貴重な存在でした。世界恐慌の時代には、営業を終えるパイカートの周りへ失業者が集まり、売れ残ったパイを分けてもらうこともあったと伝えられています。パイフローターは単なる名物料理ではなく、街の労働者や生活に寄り添った食事でもあったのです。

長く親しまれたのが、アデレード駅前のBalfours Pie Cartと、ヴィクトリア・スクエアの中央郵便局前にあったCowley’s Pie Cartです。また、ノーウッド・オーバル周辺のパイカートも、フットボール観戦と結びついた名物でした。

しかし、交通や外食環境の変化とともに数は減少。駅前のパイカートは、トラム延伸工事の影響で2007年に閉店し、最後まで定期営業していたヴィクトリア・スクエアのパイカートも2010年に姿を消しました。現在、昔ながらの常設パイカートで食べることはできませんが、その味はアデレードのベーカリーやカフェに受け継がれています。

アデレードでパイフローターを食べられる店

パイフローターをネットで調べると、古い観光記事や口コミには、すでに閉店した店や、期間限定で提供していたパブが数多く出てきます。ここでは、2026年8月時点で、公式サイトや公式メニューからパイフローターの提供を確認できる店を中心にまとめました。

エリアおすすめポイント営業
Bakery on O’ConnellNorth Adelaide初めての一皿におすすめ。複数のパイから選びやすく、CBDからも比較的近い原則24時間・週7日
Café De Vili’sMile End/Blair Athol南オーストラリアの有名パイブランド、Vili’sで味わえる。ピー&ハム・スープを使用24時間・週7日
Enjoy Café BakeryNorwoodノーウッド・オーバル向かい。フットボールとパイフローターの土地柄も感じられる24時間・週7日

初心者にもおすすめの Bakery on O’Connell

North Adelaide Bakery on O’Connell

ノース・アデレードのオコンネル・ストリートにある、南オーストラリア州の家族が経営する人気ベーカリーは、「Home of the Pie Floater」と歌っています。

店内で200種類以上の商品を作り売っているお店では、パイフローター用のパイもさまざまな種類のパイを選べるため、定番のミンス・パイだけでなく、好みに合うフィリングで試しやすいのが魅力です。2026年に訪れた旅行メディアの記者も、焼きたてのパイ生地と濃厚なピー・スープの食感を高く評価しています。

アデレードCBDの中心部から少し北に位置し、今回紹介する店のなかでは市内観光と組み合わせやすい立地なので、初めてパイフローターを食べる人や、パイの種類を選びたい人には、まず候補にしたい一軒です。

Bakery on O’Connell
住所:128–130 O’Connell Street, North Adelaide SA 5006
営業時間:原則24時間・週7日
※通常、12月24日午後5時から1月3日午前7時までは休業
公式サイト:Bakery on O’Connell
地図:Googleマップで見る

南オーストラリア州の有名ブランド Café De Vili’s

Vili’sは、ハンガリー移民のヴィリ・ミリシッツ(Vili Milisits)がアデレードで育てた、南オーストラリアを代表するパイ・ブランドのひとつです。Café De Vili’sでは、好みのパイをピー&ハム・スープに入れたパイフローターを注文できます。

マイル・エンド店はVili’sの工場に隣接し、アデレードらしいベーカリー文化を感じられる場所です。中心部から西側や空港方面へ移動するときにも立ち寄りやすく、パイフローターと一緒にVili’sのほかの商品を見てみたい人に向いています。

現在、公式に24時間営業が案内されているのは、マイル・エンド店とブレア・アソル店です。過去の情報に出てくるエリザベス店とヒルクレスト店は閉店しているため、訪問先を間違えないよう注意してください。

  • Café De Vili’s Mile End
    住所:2–14 Manchester Street, Mile End South SA 5031
  • Café De Vili’s Blair Athol
    住所:426 Main North Road, Blair Athol SA 5084営業時間:両店とも24時間・週7日

公式サイト:Café De Vili’s
地図:Mile End店Blair Athol店

ノーウッドで24時間楽しめる Enjoy Café Bakery

Enjoy Café Bakeryは、ノーウッドのメインストリート、ザ・パレードにある24時間営業のベーカリーです。公式メニューにパイフローターが掲載されており、さまざまなパイやケーキ、カフェメニューもそろっています。

店の向かい側には、SANFLのノーウッド・フットボールクラブの本拠地、ノーウッド・オーバルがあります。かつてこの周辺では、試合を見に来た人々がパイカートのフローターを食べる光景が見られました。現在のEnjoy Café Bakeryが当時のパイカートそのものというわけではありませんが、ノーウッド、フットボール、夜のパイフローターという土地の記憶を感じながら味わえる立地です。

Enjoy Café Bakery
住所:112 The Parade, Norwood SA 5067
営業時間:24時間・週7日
公式サイト:Enjoy Café Bakery
メニュー:公式メニュー
地図:Googleマップで見る

結局、どの店がおすすめ?

3店とも24時間営業で、時間を選ばず立ち寄れるのがうれしいところです。旅程や興味に合わせて選ぶなら、次のように考えると分かりやすいでしょう。

  • 初めて食べる/CBD観光と組み合わせたい:Bakery on O’Connell
  • 南オーストラリアの有名パイ・ブランドも体験したい:Café De Vili’s Mile End
  • ノーウッド散策やフットボール観戦と組み合わせたい:Enjoy Café Bakery
  • アデレード北部から行きやすい店を探している:Café De Vili’s Blair Athol

現在、アデレードCBDの中心部で毎日パイフローターを提供する常設パイカートはありません。CBD内のパブでは期間限定やスペシャルメニューとして登場することがありますが、確実に食べたいなら、公式に通年提供を案内している上記のベーカリーへ向かうのが安心です。

注文前に知っておきたいこと

パイやスープの内容は店ごとに違う

すべての店が同じレシピではありません。選べるパイの種類、スープの濃さ、ハムなど肉類がスープに入っているか、トッピングが料金に含まれるかなどは店によって異なります。

ベジタリアンやヴィーガンは必ず確認を

肉を使わないパイを選べても、ピー・スープにハムや肉のストックが使われている場合があります。たとえばCafé De Vili’sのメニューでは「pea and ham soup」と明記されています。ベジタリアンやヴィーガンの人、食物アレルギーがある人は、パイだけでなくスープとソースの材料も注文前に確認してください。

営業時間と価格は訪問直前に再確認

この記事で紹介した店は原則24時間営業ですが、祝日、年末年始、設備点検などで営業時間が変わることがあります。価格や提供方法も変更される可能性があるため、公式サイトや店舗への問い合わせで最新情報を確認するのがおすすめです。デリバリーアプリの価格は、店頭価格より高く設定されている場合があります。

南オーストラリアの歴史ごと味わいたい一皿

パイフローターは、洗練されたレストラン料理として生まれたものではありません。夜の街角で働く人、酒場帰りの人、フットボールを見に来た人のお腹を満たしてきた、安くて温かい庶民の食事でした。

そのため、見た目だけで「変わった食べ物」と片づけてしまうのは少しもったいない料理です。ミートパイをピー・スープに浮かべ、トマトソースをかけてスプーンで崩す。その一皿には、英国系移民の食文化と、ポート・ピリーやアデレードで働いた人々、そして夜のパイカートの記憶が詰まっています。

南オーストラリアを訪れたら、フロッグケーキやHaigh’sのチョコレート、Coopersのビールとともに、ぜひ一度パイフローターにも挑戦してみてください。

 

参考・関連情報
ABC News:Loved and loathed? How the pie floater became a South Australian gastronomic icon
Australian Food Timeline:Pie floater invented in Port Pirie
Experience Adelaide:The ‘Pie Floater’, Adelaide’s most famous culinary contribution
Time Out Australia:2026年のBakery on O’Connell訪問記事

※店舗情報は2026年8月25日に確認しました。営業状況、メニュー、価格は変更されることがあります。