タスマニアの食の魅力は、この州だけにある料理の多さだけではありません。冷涼な気候、海に囲まれた地形、牧草地や果樹園といった土地の条件を生かし、シーフード、乳製品、肉、果物、野菜、お酒まで幅広く生産されています。
カレースカロップパイやセイボリートーストのようなローカルフードもあれば、オイスターやチーズのように他州にもありながら、タスマニアの産地で食べることに価値があるものもあります。ファーマーズマーケット、農場の直売所、海辺の店、ワイナリーや蒸留所を訪ねれば、食べること自体が旅の目的になります。
この記事では、初めてタスマニアを訪れる人が押さえておきたい食べ物から、見つけたら試してみたい家庭料理や季節の農産物まで紹介します。
珍しい郷土料理だけを探す場所というより、海、牧場、果樹園、畑から届くものを、生産地の近くで味わう場所です。
まず知っておきたいタスマニアの食べ物
| 食べ物・飲み物 | タスマニアらしさ | 主な楽しみ方 |
|---|---|---|
| カレースカロップパイ | タスマニアを代表するローカルフード | 町のベーカリーで食べ比べる |
| オイスター、クレイフィッシュ、アワビなど | 島の周囲で育つ・水揚げされる海産物 | 養殖場の直売所、港、シーフード店で味わう |
| チーズと乳製品 | 牧草地と酪農を背景にした代表的な名産品 | デアリー・ドアや島の生産者を訪ねる |
| レザーウッドハニー | タスマニア固有の木から採れる蜂蜜 | 蜂蜜専門店、マーケット、土産店で試す |
| リンゴ、チェリー、ベリー類 | 冷涼な気候を生かした季節の果物 | 直売所、マーケット、果物狩り、サイダーで楽しむ |
| ワイン、ウイスキー、ジン、サイダー | 州内各地に産地と造り手がいる | セラードア、蒸留所、醸造所を巡る |
タスマニアらしい料理とローカルフード
カレースカロップパイ

タスマニアの郷土色を最も分かりやすく感じられる食べ物が、スカロップパイ(scallop pie)です。ホタテとソースをパイ生地で包んだもので、カレー味が特に有名です。クリーミーなモルネーソースを使う店もあり、具材や味付けはベーカリーによって異なります。
タスマニア州政府観光局はカレースカロップパイを「非公式な州の料理」として紹介しており、島内各地のベーカリーで見つけられます。Richmond、Ross、Bridport、Stanleyなど、観光途中に立ち寄りやすい町にも提供店があります。

なお、タスマニアではカレーそのものにも長い歴史があります。現在もオーストラリアのスーパーで見かけるKeen’s Curry Powderは、19世紀半ばにタスマニアで生まれました。カレー味のスカロップパイが定着した背景を知るうえでも興味深い話です。
(参考:Discover Tasmania「Seafood Trails」/ABC「Tasmanians have been keen for curry since colonial days」)
セイボリートースト
セイボリートースト(savoury toast)は、パンに卵、ベーコン、タマネギ、チーズ、トマトソース、ウスターソースなどを混ぜた具をのせて焼く、タスマニアの家庭的な軽食です。家庭によって材料や作り方が違い、特に北西部の思い出の味として語られています。
レストランの定番料理というより、家庭や地域の料理なので、旅行中に必ず買えるとは限りません。マーケットやローカルカフェで見つけたら試してみたい一品です。タスマニアらしい家庭料理を知る題材として、料理サイトのレシピ記事にも発展させられます。
(参考:ABC「The secret delights of savoury toast」)
海に囲まれたタスマニアで味わいたいシーフード
オイスター

タスマニアでは冷たくきれいな海を利用したカキの養殖が行われています。主に養殖されているのはパシフィックオイスターで、オーストラリア原産のフラットオイスターも生産されています。
Coles Bay周辺、Dolphin Sands、Bruny Island、Cambridge、Smithton周辺などには養殖場や直売所があり、海を眺めながら殻を開けたばかりのカキを食べられる場所もあります。ワイン産地と近い場所では、タスマニア産のスパークリングワインと組み合わせる楽しみ方もあります。
(参考:タスマニア州天然資源環境省「Oyster Farming」
サザンロックロブスター(クレイフィッシュ)

タスマニアで一般にcrayfishと呼ばれるのは、サザンロックロブスターです。Bicheno、Stanley、King Islandなどでは、港に近いシーフード店やレストランで出会えることがあります。
高価で、漁期や入荷状況によって提供されない日もあります。クレイフィッシュを目的に店へ行く場合は、事前に在庫や予約の要否を確認した方が安心です。King Islandではクレイフィッシュを包んだパイも名物になっています。
アワビ、ホタテ、ウニ、ムール貝、魚
タスマニアの海産物は、オイスターやクレイフィッシュだけではありません。天然アワビ、ホタテ、ウニ、ムール貝、タコ、各種の魚なども、海辺の店やレストランで提供されています。
アワビは輸出される割合が高く、どの店でも食べられるわけではありません。見つけたら試してみたい食材です。東海岸のFreycinet PeninsulaやBicheno、北西部のStanley、南部のDunalley、Hobartのウォーターフロントなどは、シーフードを旅程に組み込みやすい場所です。
(参考:Discover Tasmania「Top seafood experiences in Tasmania」
タスマニア産サーモンとオーシャントラウト
タスマニア産のアトランティックサーモンやオーシャントラウトは、州内のレストランや鮮魚店で広く見かける食材です。アトランティックサーモンはタスマニアの在来魚ではなく、海面養殖で生産されています。
スモークサーモン、グリル、寿司、持ち帰り商品など食べ方はさまざまです。養殖地域や生産方法、環境をめぐる議論もあるため、産業として詳しく扱う場合は最新の制度や状況を確認する必要があります。
(参考:タスマニア州天然資源環境省「Aquaculture」
牧草地から届くチーズ、乳製品、肉
タスマニア産チーズと乳製品
タスマニアは酪農も盛んで、チェダー、ブリー、カマンベール、ブルーチーズ、フェタなど、さまざまなタイプのチーズが作られています。牛乳だけでなく、羊乳やヤギ乳を使う生産者もいます。
特に知られているのが、King Island、Bruny Island、北東部のPyengana、北部・北西部の酪農地域です。生産者のデアリー・ドアでは、試食や購入だけでなく、牧草地や製造背景を含めて楽しめます。
King Island Dairyは一時閉鎖が発表されましたが、2025年に新しい所有者への売却が決まり、島での生産が継続されました。現在の見学、試食、店舗営業については、旅行前に公式情報を確認してください。
(参考:Discover Tasmania「Farms and food producers」/Premier of Tasmania「Bright future ahead of King Island Dairy」
ビーフ、ラム、ワラビー
牧草地の多いタスマニアでは、ビーフやラムも重要な食材です。King Islandのグラスフェッドビーフや、Flinders Islandを含む島しょ部の肉は、地域の食を紹介するレストランや精肉店で扱われています。
ワラビーもタスマニアのレストランやマーケットで見かけることがあります。赤身で脂肪が少なく、ステーキ、煮込み、パイ、ブリトー、サラミなど、提供方法はさまざまです。
ワラビーや在来食材を文化的背景まで含めて知りたい場合は、タスマニアのアボリジナル事業者が行う食体験やツアーを選ぶ方法もあります。食材を珍味として扱うだけでなく、土地、季節、文化との関係を学べます。
(参考:Discover Tasmania「Tasmanian Aboriginal bush-food tours」
タスマニアで探したい蜂蜜と在来食材
レザーウッドハニー

レザーウッドハニーは、タスマニア西部を中心とする冷温帯雨林に育つレザーウッドの花から採られる蜂蜜です。花の香りが強く、ほのかにスパイシーさを感じる独特の風味があります。
レザーウッドはタスマニア固有の植物で、開花期は主に1月から3月。養蜂家は開花に合わせて巣箱を遠隔地の森へ運びます。蜂蜜そのものに加え、アイスクリーム、菓子、ドリンクなどに使われることもあり、持ち帰りやすいタスマニア土産にもなります。
(参考:Discover Tasmania「Amazing plants and trees」
タスマニアンペッパーベリー
タスマニアンペッパーベリーは、タスマニアをはじめオーストラリア南東部に自生する植物から採れる在来食材です。乾燥させた実や葉がスパイスとして使われ、肉料理、ソース、チーズ、塩、アイスクリーム、ジンなどにも合わせられます。
名前にTasmanianと付きますが、タスマニアだけに生育する植物という意味ではありません。それでも、島の現代料理やアボリジナル文化に関わる食体験で出会いやすく、タスマニアらしい風味を知る入口になります。
果樹園と畑から届く季節の味
リンゴとサイダー
タスマニアは長くApple Isleと呼ばれてきました。現在のリンゴ産業は最盛期とは規模や市場が変わりましたが、リンゴは今もタスマニアの歴史と食をつなぐ重要な存在です。
特にHobartの南にあるHuon Valleyは、果樹園とサイダーで知られています。直売所でリンゴやジュースを買うほか、サイダー醸造所を訪ね、果樹園からボトルになるまでを知ることができます。
オーストラリアで「cider」は、一般にリンゴや洋ナシから作るアルコール飲料を指します。お酒を飲まない場合は、apple juice、sparkling apple juiceなどの表示を確認してください。
(参考:Discover Tasmania「Tasmanian Cider Trail」
チェリー、ベリー類、ストーンフルーツ

夏のタスマニアでは、チェリー、ストロベリー、ラズベリー、ブルーベリー、アプリコットなどが旬を迎えます。農場の直売所、道沿いの無人販売所、ファーマーズマーケットのほか、果物狩りを体験できる農園もあります。
収穫時期の目安は、チェリーが12月から2月、ストロベリーが10月から5月、ブルーベリーとラズベリーが12月から5月、リンゴが2月から5月です。天候や地域によって前後するため、農園を訪れる場合はその年の営業状況を確認してください。
(参考:タスマニア州天然資源環境省「Seasonal Produce Harvest Dates」
ピンクアイ・ポテト
Pink Eyeは、名前の通り皮にピンク色の目があるジャガイモです。黄色い果肉を持つワキシー系で、ゆでる、蒸す、焼くといったシンプルな調理に向いています。
タスマニアで特に親しまれており、新ジャガの季節にはファーマーズマーケットにも並びます。派手な観光料理ではありませんが、家庭の食卓や農業の歴史を感じられるローカル食材です。
トリュフ、サフラン、ワサビ、ヘーゼルナッツ
タスマニアでは、冷涼な気候を生かして黒トリュフ、サフラン、ワサビ、ヘーゼルナッツなども生産されています。北部・北西部ではトリュフ農園や生産者を訪ねる体験があり、冬にはトリュフハントが行われます。
これらは日常的にどこでも食べられる名物ではありませんが、レストランの季節メニュー、マーケット、農場の直売品として見つけられます。目的の食材がある場合は、収穫期と販売方法を事前に確認しましょう。
(参考:Discover Tasmania「Thrill of the truffle hunt」
食事と一緒に楽しみたいタスマニアの飲み物
冷涼地ワイン
タスマニアの代表的なワインは、スパークリングワイン、ピノ・ノワール、シャルドネ、リースリングなど。Tamar Valley、Pipers River、東海岸、Coal River Valley、Derwent Valley、Huon Valley、北西部などにワイナリーとセラードアがあります。
オイスターとスパークリング、サーモンと白ワイン、チーズとピノ・ノワールなど、現地の食材と組み合わせて楽しめるのも産地を旅する魅力です。
(参考:Wine Tasmania「Wine and Cellar Door Trails」
ウイスキー、ジン、クラフトビール

タスマニアにはウイスキーやジンの蒸留所、クラフトブルワリーも州内各地にあります。Hobart周辺だけでなく、Midlands、Launcestonと北部、北西部、Tasman Peninsula、King Islandなどにも造り手がいます。
車で産地を巡る場合、試飲する人は運転できません。ツアーを利用する、同行者と運転を分担する、宿泊地の近くにあるテイスティングルームを選ぶなど、移動方法も一緒に計画しましょう。
(参考:Discover Tasmania「Distilleries and breweries」
タスマニアの食を旅行中に楽しむ方法
ファーマーズマーケットへ行く
短い滞在で複数の生産者の商品を見たいなら、マーケットが便利です。HobartのFarm Gate Marketは日曜日、LauncestonのHarvest Launceston Community Farmers’ Marketは土曜日に開かれ、季節の野菜や果物、肉、魚、乳製品、パン、菓子、飲み物などが集まります。
開催場所や時間はイベント、道路事情、祝日などで変更される可能性があるため、訪問前に公式情報を確認してください。
農場の直売所と無人販売所を利用する
果樹園や農場が多い地域では、farm gateやhonesty boxと呼ばれる販売所を見かけます。現金のみの場合や、季節によって商品がない場合もあるため、小額紙幣や硬貨を用意しておくと便利です。
旅程に「食べる時間」を先に入れる
地方の生産者や飲食店は、都市部より営業日や時間が限られることがあります。冬季休業、予約制、売り切れ、漁や収穫による入荷の変化もあります。特に離島、海産物、農場体験、ディナーは、移動ルートを決める段階で営業状況を確認しましょう。
初めてのタスマニア旅行なら、何を優先する?
食べたいものが多くて迷ったら、まず次の5つを旅程に入れると、タスマニアの海、牧場、森、果樹園をバランスよく感じられます。
- カレースカロップパイを町のベーカリーで食べる
- オイスターまたはその日に入ったシーフードを海の近くで食べる
- タスマニア産チーズを生産者やマーケットで試す
- 旬の果物またはレザーウッドハニーを味わう
- ワイン、ウイスキー、ジン、サイダーから興味のあるものを産地で試す
さらにローカルな食を知りたいなら、セイボリートースト、ピンクアイ・ポテト、ワラビー、ペッパーベリー、季節のトリュフなどを探してみてください。
タスマニアでは、食材の産地そのものが旅先になる
タスマニアでは、同じ食材でも場所によって楽しみ方が変わります。Huon Valleyではリンゴとサイダー、東海岸ではオイスターやクレイフィッシュ、北部ではワインやトリュフ、北西部では乳製品や農産物、King Islandではチーズ、ビーフ、海産物といったように、食と土地が強く結び付いています。
「何を食べたいか」が決まったら、次は産地を地図で確認して旅程につなげてみましょう。タスマニアの食は、レストランの皿の上だけで完結するものではありません。海辺の小屋、牧草地の直売所、果樹園、週末のマーケットまで訪ねることで、この島のおいしさがどこから来るのか見えてきます。
※店舗、見学、試食、ツアー、収穫時期などの情報は変わることがあります。旅行前に各施設の公式サイトで最新情報をご確認ください。(2026年9月確認)
