インターネットが発達した昨今、いつでも気軽に映画を楽しむ事が出来ます。
でも昔は当然ネットもなくて、白黒でフィルムだったんですよね。20世紀初頭に初めて “映画” というものが世界に登場したばかり頃は、音声や音響すら入ってない無声映画でした。
ネッド・ケリーの物語『The Story of the Kelly Gang 』という映画が制作されたのは、オーストラリアがイギリスから独立して間もない1906年。
(出典: https://en.m.wikipedia.org)
この映画は5〜10分程度の映画が普通だった当時、異例の60分間という長さで “世界一長い映画” と言われたそうです。
タイトル | The Story of the Kelly Gang |
製作 | 1906年 (60分) |
監督 | Charles Tait |
1906年12月26日からオーストラリアで公開された後、イギリスでも好評だったそうで、商業的成功を収めた作品だったようです。
(ちなみに有声映画が世に出たのは1932年、カラーは1955年。)
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マレーアートミュージアムにて
でも、今どき白黒の無声映画なんて観たくてもなかなか観れないですよね?
実はラッキーな事に今年の初めに観れたんです!旅行中、たまたま滞在したニューサウスウェールズ州のアルバリー (Albury) という小さな町で。
ネッド ・ケリーシリーズを描いた事で有名なシドニー・ノーラン (Sidney Nolan) という画家がいるのですが、たまたま一泊する事になったホテルのロビーでそのシドニー・ノーランの絵が載ったパンフレットを見つけました。
どうやら Murray Art Museum で、期間限定 (2019年11月23日〜2月17日) のネッド・ケリー特別展示が開催されているとの事。
しかも、そこは滞在していたホテルからすぐ近くで入場無料。これは行くしかないですよね。
シドニー・ノーランの絵は、大抵のオーストラリアにある美術館に1枚くらいは展示されているのではないでしょうか。
私は彼の画集を持っているくらい好きなのですが、ネッド・ケリーシリーズを物語として時系列で鑑賞したのはこれが初めてだったので、とても感激でした。彼の絵は不思議な魅力があります。
そしてその傍らで、例の古い映画が上映されていたんです。本当は全部ゆっくり観たかったのですが、私たちは帰路を急いでいたので少ししか観る事が出来なかったのが少し心残りです。
ケリーギャングの物語
19世紀に実在したブッシュレンジャーと呼ばれるギャングだったネッド ・ケリー (Ned・Kelly) は、オーストラリア人に大変な人気があり、映画以前にも頻繁に劇場の舞台などで彼についての演劇を上演されていた人物です。
だから、60分という異例の長編映画の製作はごく自然な流れだったのかもしれません。監督 Charles Tait は、メルボルンの家族経営シアター Athenaeum Hall のオーナーでもあったそうですしね。
1906年というと日本は明治時代で、夏目漱石が『坊ちゃん』を発表した頃です。
ネッド・ケリーは1880年に25歳の若さで処刑されましたが、映画が公開された1906年当時はまだ彼の母親や弟ジムは存命していたので、きっと彼らはこの映画を観たのでしょうね。そう思うと不思議な感じがします。
ネッド ・ケリーについてもっと知りたい人はこちら
おわりに
ネッド・ケリーを題材にした映画はそれ以後も多く製作されていますし、彼の最後にいた地であるグレンロワンはネッド ・ケリーの観光地化されています。
とにかく、今回たまたま偶然に古いネッド・ケリーの映画に触れる機会があって嬉しかったので、記録しておきたいと思ってこの記事を書きました。
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