なぜオージーはベジマイトが大好きなんだろう?

なぜオージーはベジマイトが大好きなんだろう?

オーストラリアを代表する食べ物のひとつベジマイト(Vegemite) は、オーストラリアで年間22万個が販売されている人気商品で、一般家庭に必ずあると言っても過言ではありません。

かつて私のホストファミリーも「出張にもベジマイトも持って行かなくちゃ」とジョークを言ってましたし、我が家の棚にもいつも常備されていて、うちのオーストラリアうまれのパートナーは4歳の頃にはもうベジマイト を食べていたそうです。

それくらいオーストラリアでは子供から大人まで親しまれているベジマイトなのですが、とはいえ、食べ慣れていない人は、独特の塩辛い味に驚く人も多いです。

一体この謎の食べ物は何なのか、そしてどうしてオーストラリア人はこれが好きなんだろう?と不思議に思う人もいますよね。

 

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ベジマイトとは

ベジマイトは、もともとはイギリスのマーマイトの代わりに開発された、酵母を主原料として塩や野菜の抽出物を混ぜて作られた粘着性のある黒いペーストの発酵食品。独特の匂いと味がしますが、ビタミンB群が豊富に含まれていて栄養満点で、疲労回復や美肌にも良いようです。

現在もでも軍の栄養補給として食べられたり、赤ちゃんの離乳食にも使われる事もあるんだとか。

80年代に世界的にヒットしたMen at Work の『Down Under』という歌詞の中でも “ベジマイトサンドイッチ” というフレーズが出て来るくらい、ベジマイトはオーストラリアの象徴となっています。

ベジマイトの正しい食べ方

ベジマイトは一見チョコレートのようにも見えますが、そのつもりで食べると大変!びっくりして吐き出してしまうかもしれません。

だからなのか、よく「ベジマイトはまずい‼︎」と言っている日本人もいますが、その場合そもそもの食べ方が間違っているケースが多いです。オーストラリア人だって、ベジマイトの塊をパクッと食べたらおいしくないと思うでしょう。

例えば、みりんを一口飲んで「まずい」と言われても困りますよね(笑) そんな感じです。

いちばんポピュラーなのは、まずトーストにバターを塗って、その上から薄くベジマイトを塗る食べ方です。塩加減のお陰でチーズのような味になっておいしいのです。

マフィンに塗ったり、料理の隠し味にするなどの上級者の使い方もあるようですけどね。

似たような商品も

最近チーズが入ったベジマイトなども発売されていますが、ベジマイトではなくプロマイトや色んな類似商品が存在します。

プロマイト (Promite) は1950年代からベジマイトに並んで Masterfoods社から発売されている商品で、根強いファンもいるようです。

Dick Smith の OzEmite は発売当初は AussieMite だったのですが、アデレードの会社と商標が被り裁判沙汰になったという事件も。

ちなみに、この OzEmite はベジマイトが麦の酵母から出来ているのに対して、トウモロコシから出来ているのでグルテンフリーがウリのようです。

ベジマイトを持ち運びをしたい場合やお土産なら、小分けにされたベジマイトが便利です。

Limited Edition 2015

2015年にはチョコレートでおなじみCadburyから、ベジマイト味のチョコレートなる物が発売されたり、次々とベジマイトのスナック菓子なども出ています。

ベジマイトの権利返還⁉︎

実は2017年にベジマイトに関する大事件がありました。

ベジマイトはオーストラリア独自で親しまれる食べ物にも関わらず、1935年にアメリカの会社に買収されてから事実上90年以上もアメリカのプロダクトだったのですが、ついにメルボルンに拠点を置くオーストラリアの会社 Bega Cheese がベジマイトの権利を買い戻したのです。

そう、だからそれからベジマイトのラベルが微妙に変わったのに気付いた人もいるかと思います。

Before

After

これはオーストラリアにとって喜ばしい大事件だったようです。

ベジマイトの面白い生い立ち

そんなベジマイトですが、初めから人気があった訳ではありません。

オーストラリアがイギリスから独立した翌年1902年、イギリスでマーマイトという製品が発売され、オーストラリアにも輸入されていましたが、第一次世界大戦が勃発でマーマイトの入手が難しくなってしまいました。

そこで1922年にフレッド・ウォーカー (Fred Walker) が化学者 Dr Cyril Percy Callister を雇い、マーマイトに似た製品の開発をしたのが始まりです。

商品名は、£50の賞金を付きで一般公募により募集した結果、何百もの応募の中からウォーカーの娘のシーラ (Sheilah) によって選ばれたのが、当時18歳と20歳だったビクトリア州 Albert Park 在住の姉妹 Hilda と Laurel Armstrong が考えた “ベジマイト” に決定。彼女たちはベジマイトガールズとして有名になりました。

売れ行き不調のベジマイト

しかし、ベジマイトが発売された1923年当初はまだマーマイトの人気が根強くて、売れ行きはよくありませんでした。

売れ行きが上がらないまま、1925年にアメリカの James L. Kraftと会社を提携し、Kraft Walker Cheese Co.と名を変えプロセスチーズの製造も開始。

どうにかしてベジマイトを売る事が出来ないものかと、1928年から1935年の間、実験的にベジマイトの名前を変えていた事もあります。

その幻の名前が“パーウィル(Parwill)”。スローガンは「Marmite but Parwill」、オージージョークなのですが、意味がわかりますか?こういう事です。

Ma might not like the taste, but I’m sure Pa will.
ママは味が好きじゃないかもしれないけど、パパは好きだと思うよ。

この分かりにくい戦略は成功せず、結局ベジマイトの売り上げは上がらないまま7年後に元のベジマイトという名前に戻されました。

 

うん、ベジマイト の方が数倍良いと思う!
ちなみに、私のパートナーこのエピソードを初めて聞いたそうですが、Parwill と聞いただけですぐダジャレを理解してました。おそるべし!

1935年、ウォーカーは心臓病で亡くなり、彼の会社はアメリカのKraft Foodsに買収されましたが、その後もベジマイトの売り上げ促進の為に様々なキャンペーンが実施されました。

チーズ製品を買うと無料のクーポンでベジマイトがもらえるキャンペーンや、アメリカの車が当たる詩のコンクールも開催。これが功を奏し、少しずつベジマイトの人気が上昇していきます。

そして1939年に第二次世界大戦が勃発。

再びマーマイトの輸入が止まり、ベジマイトの需要は更に増え、ちょうどイギリス医学会からもビタミンBの豊富なベジマイトは支持された事とも重なり、オーストラリア軍の配給食としても活躍。

ベジマイトが開発されてから20年後の1942年には、オーストラリアのほどんどの家庭で食べられるようになるほど人気商品に成長していました。

1954年入ると、明るくエネルギッシュなトリオが歌う「♪happy little Vegemites」がラジオで流れ、その歌は1956年のメルボルンオリンピックの時にはテレビコマーシャルとなり大ヒットしました。

こうしてベジマイトは栄養のある健康食品として子供から大人まで親しまれるようになり、オーストラリア人にとっては懐かしいふるさとの味となっていったんですね。

ちなみに、1984年4月にスーパーマーケット等で導入されたバーコードの電子スキャンでは、ベジマイトが一番最初のプロダクトだったそうです。

もしももっとベジマイトの歴史やプロダクト、レシピなどを知りたい方は、こちらの英語ウェブサイトも見てみてください。
https://vegemite.com.au

他の国のベジマイト?

さて、今までベジマイトはオーストラリア特有の食べ物と言ってきましたが、ベジマイト の原型はイギリスのマーマイト(Marmite) です。

ベジマイトが発売されたのは1923年ですが、それは第一次世界大戦が勃発した影響でマーマイトがオーストラリアに輸入されなくなったので、オーストラリア独自に開発された事に起因しています。

もともとヨーロッパでビールの醸造が始まった17世紀から、イギリスではビールを生産する時に出来る副産物のビール酵母の沈殿物を食べる習慣がありました。20世紀に入り、ドイツの科学者がその酵母を凝縮する方法を発明し、マーマイトとして商品化されたのです。

ちょっとややこしいマーマイト事情

マーマイトは1902年からイギリスのマーマイト社が発売を開始しましたが、オーストラリアのお隣の国ニュージーランドでも同じようなマーマイトが発売されています。

イギリス

ニュージーランド

写真を見比べると分かりますが、入れ物が違いますよね?実はニュージーランドではSanitarium社がニュージーランド独自のマーマイトを製造しているんです。

しかし、商標登録を同じマーマイトという名前にしてしまったので、ややこしい事になっています。というのも、イギリスのマーマイトをニュージーランド・オーストラリアに輸出する時は “Our Mite”、ニュージーランドのマーマイトがイギリスに輸出される時は “Vitamite” という商品名に変えないといけない事態に。

ちなみに、ニュージーランドではベジマイトも50年に渡って製造されていたそうなのですが、オーストラリアの関係性やマーマイトに人気が押されるなどの理由で2006年に製造停止しています。

これらと同じような商品で、アイルランドにはボブリル(Bovril)、スイスにはセノヴィ(Cenovis)という物が売られています。

2007年のアイルランドでは、セントパトリックデーを記念してギネスビールの酵母から作った限定のマーマイトも発売されたそうですよ。

味の違い

ここで気になるのが味に違いですよね。

ベジマイトは野菜エキスなどが入っているのに対して、ニュージーランドのマーマイトは砂糖やスパイスが入っているので、食べ慣れた人からすると微妙に味が違うようです。

マーマイトの味はニュージーランドの方が、イギリスよりも塩けが少なくマイルドだと言われています。

うちのパートナーは、マーマイトは微妙に味が違うので親しみのあるベジマイトの方が好きだと言ってましたが、オーストラリア在住のイングランド人に聞いてみると、最近はどっちでも気にしなくなったとの事でした。

 

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おわりに

今ではオーストラリアで知らない人はいないベジマイト 、有名になるまでには色んな苦労や物語があったんですね。

健康志向の方はベジマイトが食べたくなったのではないでしょうか? おいしい食べ方を研究するのも楽しいかもしれないですね!