オーストラリアの有名な食べ物のひとつとして、よくベジマイト(Vegemite) が挙げられます。
ただ、ネット等では「まずい」という意見も多く見られますが、ちょっと待って⁉︎ それ、食べ方を間違ってませんか?
ベジマイト好きなオーストラリア人だって、そんな食べ方をしたらまずいだろう…とツッコミたくなる事が多く、とてもモヤモヤします。
例えば、外国人がみりんや醤油を飲んで「まずー!日本人しか理解できない味だな」と言われたら「は?」って思いませんか?そんな感じ。
日本の大手サイトとかを見てても思うのですが、料理に使うとかそんなしゃれた事を考える前に、ますは正しく食べてください‼︎と言いたい…。
という事で、この記事ではベジマイトの正しい食べ方について触れた後、更にベジマイトについて詳しく解説していきます。
戸棚に常備されていると言われるベジマイト
そもそもベジマイトとは何でしょう?
ベジマイトは、酵母を主原料として塩や野菜の抽出物を混ぜて作られた発酵食品です。
チアミン (B1)、リボフラビン (B2)、ナイアシン (B3) などビタミンB群が豊富に含まれ、疲労回復や美肌にも良く栄養満点。軍の栄養補給としても食べられてもいるそうですよ。
昔ながらのオーストラリア人家庭の戸棚には必ずあると言われていて、過去に私がホームステイをした家庭にも常備されていましたし、もちろん我が家の棚にもあります。
80年代に世界的にヒットしたオーストラリアのバンド Men at Work の『Down Under』という歌詞の中にもベジマイト サンドイッチというフレーズが出て来て、オーストラリアを象徴する食べ物としても知られるようになりました。
実際、ベジマイトは年間約22万個が消費されているという人気商品で、私のオーストラリア人パートナーは少なくとも4歳の頃にはもう食べていたという記憶があるそうです。
そんなベジマイトの王道の食べ方は、やっぱりトーストされたパンに薄く塗って食べる事でしょう!
とにかく薄く塗る事!
おいしくベジマイトを食べるコツは、トーストに薄く塗る事です!
一見チョコレートのようにも見えるベジマイトのペーストは、厚塗りするとびっくりして吐き出してしまうかもしれないくらい強い味なので要注意です!
2020年に来豪したトム・ハンクスが新型コロナにかかり、療養中にツイートしたベジマイトトースト写真に対して、多くのオーストラリア人からすかさず「ベジマイト 塗り過ぎ‼︎」とツッコミが入ったのは記憶に新しいです。
Thanks to the Helpers. Let’s take care of ourselves and each other. Hanx pic.twitter.com/09gCdvzGcO
— Tom Hanks (@tomhanks) March 15, 2020
確かに、これは塗り過ぎですね〜!
おすすめの食べ方は、バターを塗ったトーストの上に薄ーくベジマイトを塗って食べると、ベジマイトの塩加減とバターがマッチしておいしいんですよ。ちょっとチーズの味にも似ています。
うちのパートナーは直に結構厚塗りしますが、上級者になるとこれくらいいっても大丈夫のようです。が、初心者にはおすすめしません。
他にもパンやマフィンに入れたり、料理の隠し味や赤ちゃんの離乳食にも使われる事もあるそうですが、まずは基本中の基本、トーストに塗って試してみてください。
もしベジマイトのレシピを知りたければ、ベジマイトのウェブサイト (英語) にも色々載っています。機会があればまた改めてこのブログでも紹介するかもしれません。
ベジマイトの種類も増えました
実は、1935年からベジマイトは事実上アメリカの会社の商品だったのですが、2017年に80年以上ぶりにオーストラリアの商品に戻りました。メルボルンに拠点を置くオーストラリアの会社 Bega Cheese が権利を買い戻したんです。
もちろんオーストラリアの人は大喜び!
それに伴ってベジマイトのラベルに書かれていた会社名も変わり、商品のバリエーションも増えました。
現在、ベジマイトは4種類発売されています。
- ベーシックなベジマイト
- グルテンフリーベジマイト
- 40% 減塩ベジマイト
- チーズ味ベジマイト (CHEESYBITE)
95周年記念ボトル
2018年には95周年を記念して限定デザインのボトルも出ています。
David Bromley というアーティストのデザインだそうです。
個人的に100周年記念も楽しみにしてます!
という事で、気になる人は試してみてくださいね。
試してみたいけど勇気のない人におすすめの商品
しかし、ベジマイトを試してみたいものの、瓶に入ったベジマイトを買うのは勇気がいるかもしれません。一度に使う量はごく少量なので、なかなか減らなかったりしますしね。
そんな人は、小分けのパックに入ったベジマイトを試してみてはいかがでしょうか?
このタイプのベジマイトは、よくホテルの朝食などでも置いてあるので、旅行に来たら食べるチャンスはいくらでもあるかもしれません。くれぐれもうすーく塗ってくださいね!
ベジマイト関連商品もおすすめ!
その他には、ベジマイト味のお菓子などもおすすめです。
ピーナッツのベジマイト味はもう売ってませんが、Shapes のベジマイト & チーズ味は2019年から大人気のフレーバーになってます。
これだとそんなに独特のクセがなくて食べやすいので「ベジマイトは苦手でもこれは好き」という人も続出。それに、スナックがオーストラリア大陸の形をしているので、お土産にも喜ばれそうですね。
Limited Edition 2015
数年前には Cadbury からベジマイト味のチョコレートも発売されてましたが、ベジマイトやチョコレートが大好きなうちのパートナーには不評で、私も怖くて試さないままでした。
でもオーストラリアの YouTuber さんが「めちゃくちゃまずい!最悪‼︎」と言っていたので、賢明な判断でしたね (笑)
2017年にはベジマイトのミートパイも発売されていたようなので、時々ベジマイト商品もチェックしておくと良いかもしれません。
ベジマイトのライバルはたくさん?
ところで、ベジマイトに似たような商品は他にもあります。
プロマイト (Promite) は1950年代からベジマイトに並んで Masterfoods社から発売されている商品で、「ベジマイトよりもプロマイト!」という根強いファンもいるようです。
Dick Smith のオージーマイト (OzEmite) はベジマイトが麦の酵母から出来ているのに対して、トウモロコシから出来ているのでグルテンフリー。
発売当初は AussieMite だったのですが、アデレードの会社と商標が被り裁判沙汰になり、OzEmite に改名されたという経緯もありました。
そう考えると、色んな選択肢があるんですね。でも、まだまだあります。
マーマイトとは何が違うのか?
ベジマイトと並んでマーマイト (Marmite) の名前もよく挙げられます。
両者が似ているのは当然で、なぜならこのマーマイトはベジマイトの元になったものだからです。
第一次世界大戦以前はイギリスからオーストラリアに輸入していたマーマイトですが、戦争が勃発した影響で入手困難になってしまったので、その代わりとしてフレッド・ウォーカー (Fred Walker) が、開発した代用商品がベジマイトだったんですね。
マーマイトは、もともとヨーロッパでビールの醸造が始まった17世紀からイギリスではビールを生産する時に出来る副産物であるビール酵母の沈殿物を食べる習慣があり、1902年にドイツの科学者がその酵母を凝縮する方法を発明し商品化されたものでした。
マーマイトはオセアニア版がある
ニュージーランドに行くとベジマイトよりもマーマイトの方が主流で、ニュージーランドでは Sanitarium社が独自に製造しています。
なので、ニュージーランドやオーストラリアでよく見るマーマイトは、イギリスの瓶に入ったマーマイトとは違って赤いフタのプラスチックボトルです。
ベジマイトは野菜エキスなどが入っているのに対して、ニュージーランドのマーマイトは砂糖やスパイスが入っているので、両者の味は似てますが違います。
マーマイトも、ニュージーランドの方がイギリスよりも塩けが少なくマイルドだそうですよ。
ニュージーランドでも50年に渡ってベジマイトが製造されていたそうなのですが、オーストラリアの関係性やマーマイトに人気が押されるなどの理由で2006年に製造停止されたようです。
イギリスのマーマイトはオセアニアでは名前が変わるのが面白い!
イギリスのマーマイトも、オーストラリアのスーパーマーケットで見掛ける事があります。ただし、マーマイトではなく“Our Mite” という名前になっていますけどね。
これは、ニュージーランドが先にマーマイトという商標登録をしてしまったので、イギリスのマーマイトをオセアニアに輸出する際は、名前を変えないといけなくなったからです。
逆にニュージーランドのマーマイトがイギリスに輸出される時は “Vitamite” という商品名になるとの事。面白いですね!
なので、変わり種としてベジマイトではなくこのアウアマイトをお土産にするのもありかも⁉︎
まだまだある世界のベジマイト⁉︎
ベジマイトに似た商品はマーマイトだけではありません。
アイルランドではボブリル (Bovril) がベジマイトやマーマイトのような商品にあたるそうで、オーストラリアでは調味料コーナーで売っているのをたまに見ます。
そして、スイスではセノヴィ (Cenovis) というのがそれにあたるそう。さすがにこれはオーストラリアで見た事がないですねえ。
探せば他にもあるかもしれませんね。あったら教えてください。
初めは売れず、名前も違った⁉︎
さて、ここからはちょっとトリビア的な歴史の話になります。
1954年に明るくエネルギッシュなトリオが歌う「♪happy little Vegemites」がラジオで流れ、1956年のメルボルンオリンピックの時にテレビコマーシャルにもなり大ヒットしたベジマイト。
1984年4月に初めてスーパーマーケットに導入されたバーコードの電子スキャンの最初の商品第一号はベジマイトだったとの事です。
そんなベジマイトですが、初めから人気があったわけではありません。発売された1923年当初はまだマーマイトの人気が根強く、売れ行きはさっぱりでした。
この “ベジマイト” という商品名は、£50の賞金を付けて一般公募で何百もの中から選ばれたもので、ビクトリア州の当時18歳と20歳だった姉妹が考えた名前でした。彼女たちは後にベジマイトガールズと呼ばれています。
そんな名前も一時期は売り上げを伸ばそうと、1928年から1935年の間、名前を変更するという試みもありました。
その時の名前は“パーウィル (Parwill)”。何だかおいしくなさそうですね。
スローガンは「Marmite but Parwill」なのですが、意味が分かりますか?
ママは好きじゃないかもしれないけど、パパはきっと好き。
…というオージージョークだそうです。
が、この戦略は分かりにくかったためか成功しないまま、7年後に元のベジマイトという名前に戻されています。(絶対そっちの方が良いですよね)
皮肉な事にベジマイトが売れるようになるのは、1935年にウォーカーが心臓病で亡くなり、アメリカの会社に買収された後です。
1925年にアメリカの James L. Kraft と提携して Kraft Walker Cheese Co.と名を変えていたベジマイトの会社は、完全に Kraft Foods になりました。
そこから、チーズ製品を買うと無料クーポンでベジマイトがもらえるキャンペーンや、アメリカの車が当たる詩のコンクールなど色々なイベントを打って売り上げを促進。これが功を奏して少しずつベジマイトの人気は上昇していったのです。
1939年に第二次世界大戦が勃発し再びマーマイトの輸入が止まった時には、イギリス医学会からもビタミンBの豊富な健康食品だと支持されるようになったのとも重なり、オーストラリア軍の配給食にもなっています。
こうしてベジマイトが開発されてから20年後の1942年には、オーストラリアのほどんどの家庭で食べられるようになるほど人気商品に成長して行ったのです。
そして、先に書いたように2017年にはアメリの会社からオーストラリアの会社にバトンタッチ。今後の活躍が楽しみです。
おわりに
今ではオーストラリアで知らない人はいないベジマイト。長く食べられている分、背景に色んな物語があって面白いですね。
という事で、とにかくまずはパンに薄く塗って食べましょう♪