オーストラリア第2の都市メルボルンは、1835年にヨーロッパ人開拓者が入植して来て以来、ヤラ川 (Yarra River) を中心に発展して来ました。
そして、その川に架かる地理的にも歴史的にも重要な意味を持つプリンセスブリッジ (Princes Bridge) は、現在も19世紀の面影を残したメルボルンを象徴する橋です。
そんなプリンセスブリッジについて少しだけ深く知ってみると、メルボルンもまた違った印象を持つかもしれません。少し深掘りしてみましょう。
[adchord]
メルボルンのランドマークであるプリンセスブリッジ
プリンセスブリッジは1888年に建設された幅30m、長さ120mのアーチ橋で、シティとサウスバンクを繋いでいます。
メルボルンシティの南側、フェデレーションスクエアとフリンダーズストリート駅の間を通る St Kilda Rd 上にあり、車、トラム、歩行者が通る橋です。
馬車も通ります
シティ中心部にあるので市内観光でも必ず目にするであろうこの橋は、その立地の良さからムーンバフェスティバル (Moomba Festival) やニューイヤーズなどのイベントの中心地となる事もあります。
シティ側の橋の下左側はプリンセスウォーク、右側がフリンダーズウォークという遊歩道になっていて、橋を渡って反対側右はサウスバンクと呼ばれる多くのカフェやレストラン、ショッピングセンター、カジノなどがある観光にも人気のエリアです。
まさに観光や生活の中心地ですね。
橋の上は絶好の撮影スポット
ちなみに、この橋に上から見るメルボルンの町は “いかにもメルボルン!” という感じのヤラ川とビルが調和する景色が広がっているので、撮影スポットとしてもおすすめです!
橋の名前について
プリンセスブリッジという名前はイギリスのエドワード7世 (Edward VII) にちなんで名付けられ、最初はPrince’s Bridge でしたが、アポストロフィーが付いた名前は良くないという事で途中から Princes Bridge に変更されています。
カタカナ表記だと “プリンセスブリッジ” となっているのでこの記事でもそれに合わせていますが、Princess (王女) の方ではなく、Prince (王子の複数形) なので、実際は発音が少し違います。
Princes [prɪnsɪz] 王子 (複数形)
歴史
そんなプリンセスブリッジの存在は、開拓当初からシティとポートフィリップ湾に停泊する船を繋ぐ重要な役割を果たし、これにより経済や人口増加などのメルボルン発展に大きく貢献しています。
1888年のプリンセスブリッジ
Arthur Streeton (1867–1943)
実は現在のプリンセスブリッジは3度目に建て直された橋で、1845年は有料の木造橋、1850年には石橋でした。
サウスバンク側の橋の下にあるファンデーションストーン
この3番目のプリンセスブリッジは John Grainger が設計し、1886年から1888年にかけて David Munro によって建設されました。
橋にある紋章が有名
プリンセスブリッジを訪れた際にぜひ見て欲しいのが、橋に施されているビクトリア州やメルボルン、建設資金を提供した6つの町の紋章です。
メルボルンの紋章
- サウスメルボルン (South Melbourne)
- プラーン (Prahran)
- セントキルダ (St Kilda)
- マルバーン (Malvern)
- ブライトン (Brighton)
- コーフィールド (Caulfield)
- ムーラビン (Moorabbin)
本当は7つの町なのですが、なぜか理由もなくマルバーンだけ抜けているそう。
どこに紋章があるのか探してみるのも楽しそうですね。
[adchord]
デビッド・マンローの建設した他2つの橋
このプリンセスブリッジを建設したデビッド・マンロー (David Munro 1844–1898) は、同じくヤラ川に架かるクイーンズブリッジとサンドリッジブリッジの建設も担当した事でも知られているので、最後に少しだけ紹介しておきます。
クイーンズブリッジ
クイーンズブリッジ (Queens Bridge) は1889年に建設されたプレートガーター橋 (桁橋) で、1860年に建てられた木造の橋を取り壊して再建設されました。
サンドリッジブリッジ
サンドリッジブリッジ (Sandridge Bridge) は、1853年にポートフィリップのホブソンズベイにある鉄道会社の路線のために建設されましたが、1886年〜1888年にデビッド・マンローが現在のような斜めに架かる橋に再建設。
線路は1987年に閉鎖し、2006年には歩行者・自転車専用に再開発されています。橋の上の10個のアート作品は『Travellers』というタイトルで、電車で駅に到着し橋を渡る様々なタイプの移民を表しているそうです。
おわりに
普段は何も考えずに利用していた橋も、意外と興味深い歴史が隠れている場合があります。当時の様子に想いを馳せつつ歩いてみるのも良いかもしれませんね。