シドニーから北へ733km (車で約8時間)、クイーンズランド州境に近いニューサウスウェールズ州のバイロンベイ近くにBallinaという小さな町があります。
バイロンベイはオーガニックフードやサーフィンなどで有名な町で、多くの観光客が休暇を楽しむような人気の場所ですが、バリナはそこから車で30分ほど離れた観光客が素通りしてしまうような小さな町です。
でも、実はここにはオーストラリアでは有名なおもしろい建物があります。
それが知る人ぞ知るオーストラリアの Big Things のひとつ、巨大なエビ (Big Prawn) のモニュメント。
以前、日本のメディアで『インスタ映えする場所』としてここが紹介されてたそうですが、多分それだけを見て行ったらびっくりするくらいローカルな場所ではないかと思います。
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知る人ぞ知る巨大なエビ
全長9メートル、重さ35トンという巨大なエビは、人間と比較してみて分かるように、かなりの大きさです。
(Photo Taken: 17 January 2018)
The Big Prawn
507 River St, Ballina NSW 2478
でもこのエビ、大型チェーン店 Bunnings Warehouse の駐車場に建っていて、中心街からも少し離れています。
日常的な空間に建っている非現実的な巨大なエビ、何となくミスマッチで不思議な印象。
何故こんな派手な物が、ひっそりとこんな所に建っているのでしょうか。
最初は屋根にいた
このエビ、もともと数年前まではもっと観光客にも目立つトランジットセンターのレストランの屋根にいたんです。
2008年に長距離バスでゴールドコーストからシドニーに向かう途中、バスがランチ休憩も兼ねてこのトランジットセンターに止まったので、私もその時の姿を見ました。
バスを降りてふと見ると、レストランの屋根の上に巨大なエビ!(笑)
(Photo Taken: 5 January 2008)
オーストラリア国内にたくさんあるこういった建物は、時々とても分かりやすい形で町の情報を教えてくれるのですが、この時も “よく分からないけど、きっとこの町はエビが有名なんだろうなー” と思って、当時ちょっと贅沢でしたがエビのサンドイッチをランチに買って食べました。とてもおいしかったです!
そして後で知りましたが、やっぱり案の定ここはエビで有名な所でした。
当時の写真を見ると巨大エビの色は薄くて白っぽいですが、建設当初の1989年には濃かった赤が年月を重ねるにつれて退色してしまっていたようです。
しかも、この頃はエビの内部に登れて頭部から景色も楽しめるような構造になっていました。
そんなエビが何故わざわざ観光地でも何でもない地味な駐車場に移動されたのでしょうか?
これには色々理由がありました。
壊されるかもしれなかった
そもそもこのエビが建てられるきっかけは、当時ニューサウスウェールズ州のサービスステーション開発に携わっていたハンガリー出身の Mokany 兄弟のアイディアからでした。
何か道路から見えるインパクトのある建物をと考えて、アデレードの彫刻家 James Martin にデザインを依頼したもので、Goulburn にあるビックメリノ (The Big Merino) や Taree にあるビックオイスター (The Big Oyster) も、その時に考案されたシリーズです。
1989年に完成されて以来、小さな町のアイコン的存在として地元の人たちや観光客に親しまれて来た巨大なエビ。
しかし、20年ほど経ってだんだんと老朽化が進んでいたその建物は、報告を受けた地方議会によって2009年に解体が決定されてしまいます。
オーストラリアを観光する人の中には、こういった巨大な建物は安っぽくてバカバカしいと考える人もいるようですが、オーストラリア人にとっては文化を象徴するランドスケープであり、歴史の浅いオーストラリアにとってある意味歴史的建造物のひとつと言っても良いのではないかという意見もあります。
そんな想いもあり、国内にはこうして解体が決まった巨大な建物が住民の大反対により存続される事になったという話がたくさんありますが、このエビも例外ではなく多くの人たちを巻き込んで解体反対の署名が集められました。
最終的に大型チェーン店であるバーニングス ウェアハウスがこのエビを買い取る事になり、2013年7月に無事現在の駐車場の位置に移動さたのですが、その際に40万ドルをかけて重さが2トンある16メートルの尾を追加、色もきれいに塗り直して現在のような姿になったのです。
画像:https://www.northernstar.com.auより
バリナについて
バリナという地名は、アボリジニーのBundjalung 族の言葉で「牡蠣が豊富な場所」を意味する “Bullenah” という言葉から来ているのではないか、と言われています。
バリナを流れるリッチモンド川 (Richmond River) は泳いだり釣りをしたりするのに最適な場所であり、この地は豊富な魚介類が採れる事で知られている他、19世紀の建物が数多く存在している土地でもあります。
歴史的建造物などの見所を簡単にまとめると以下の通りです。
バリナ 海軍・海洋博物館
Ballina Naval and Maritime Museum
Regatta Avenue (Visitor Information Centreの裏手)
http://www.ballinamaritimemuseum.org.au
この博物館では、バリナ港の歴史やリッチモンド川に使われた船、カヌーからディーゼルエンジンに変わるまでの海上輸送の歴史など、多くの展示を見る事が出来ます。
そしてこの博物館の目玉展示品とも言える、長さ12m、幅6mの有名な木製のイカダ “Las Balsas” もここにあります。
このイカダは1973年11月21日に南米エクアドルから太平洋を横切ってオーストラリアに到着したイカダで、潮の流れの関係で当初予定していたクイーンズランド州のMooloolaba よりも南の町バリナに到着。
1760海里を178日かけて航海したイカダとしてギネスブックにも登録されました。
バリナ 裁判所と郵便局
裁判所 (Court House) は1867年、郵便局 (Post Office) は1856年に建設された重要な歴史的建物で、町の中心部にある River St にあります。
バリナ邸
Ballina Manor
25 Norton Street, Ballina NSW
http://www.ballinamanor.com.au
1924 に建てられたこの建物は、もとはノースコースト・ガールズカレッジとして牧師 Rev. F. McGowan の構想により建てられて施設で、1920年代におけるキリスト教 (プロテスタント) 女性に最高の教育を施す目的で建てられました。
現在は宿泊出来るブティックホテルになっていて、30分のツアーが開催されています。
Norman Sharpe Rotary Lookout
バリナやリッチモンド川、ビーチなどを360度見渡せる展望台。
展望台までは、East Ballina の Sulva St に大きな標識が出ているようです。
バリナ灯台
バリナの灯台 (Ballina Lighthouse) はリッチモンド川灯台 (Richmond River lighthouse) としても知られており、1866年に建てられて1878年にデザインを変えて再建されています。
ガソリンスタンドのパイナップル
これはちょっとおまけですが、パイナップルがあるガソリンスタンドです。中にも入れますよ(笑)
(Photo Taken: 17 January 2018)
Big Big Pineapple
BP Fuel Station 484 River Street West Ballina
イベント
毎年11月には Prawn Festival (エビ祭り)が開催されています。
ウェブサイトを見た限りでは子供向けのイベントが多く、キッズアニマルショーやボートレース、ボートパレード、エビの殻剥き競争などがあって、移動遊園も来るみたいです。
https://www.ballinaprawnfestival.com.au
おわりに
オーストラリアには、日本のガイドブックに載ってない隠れた名所が数多く存在します。
日本人の発想で派手な場所を想像してしまうとがっかりしてしまうような田舎も多いですが、Big Things と呼ばれている大きな建造物は、楽しいしその土地の事を知る道しるべとしてもとても役に立つので私は大好きです。ちょうどこのバリナのように。
まだまだ時間がかかりそうですが、少しずつ Big Things の情報も書いていきますね。
NSW州の Big Things リストはこちらからです。
→ http://downunderaustralia.net/nsw-big-things/