2023年11月から数ヶ月間、シドニーにあるふたつの主要美術館にて、世界的に有名なアーティストの展覧会『シドニー国際アートシリーズ (Sydney International Art Series)』 が開催されます。
この夏、シドニーのニューサウスウェルズ州立美術館とオーストラリア現代アート美術館 (MCA)に多くの人たちが訪れると予想されている、大規模な展覧会です。
3つの有料展覧会チケットをお得に購入出来るアートパスもありますし、年明けからは無料の日本語ガイドも行われます。
その詳細をこの記事でまとめました。
シドニー国際アートシリーズの展覧会一覧
シドニー国際アートシリーズの展覧会全てを見たい場合は、アートパスを購入すれば、お得です。
Kandinsky + Louise Bourgeois + Tacita Dean at the MCA | $80 adult $70 concession $30 youth (12–17 years) Free for children under 12 |
アートパスを購入したい人用に、こちら↓にリンクをつけておきますね。
もちろん、特定の展覧会だけ単体でも購入出来ます。
それぞれの展覧会の場所や日程、チケットの値段などは次に書きました。
ニューサウスウェルズ州立美術館
シドニーのサーキュラキーの近く、ロイヤルボタニックガーデンのドメインに位置するニューサウスウェルズ州美術館 (Art Gallery of New South Wales) で開催される展覧会です。南本館と北新館があるので、初めて来られる方はお気をつけくださいね。
Art Gallery Road, The Domain Sydney NSW 2000
https://www.artgallery.nsw.gov.au/
Kandinsky (カンディンスキー)
2023年11月4日〜2024年3月10日
南本館 Lower level 2
※ 11月4日 (土) のカンディンスキー展初日には キューレータートークも行われます。
Louise Bourgeois (ルイーズ・ブルジョア)
“Has the Day Invaded the Night or Has the Night Invaded the Day?”
2023年11月25日〜2024年4月28日
北新館 Lower level 2 & Lower level 4 (The Tank)
Georgiana Houghton (ジョージアナ・ホートン)
Invisible Friends
2023年11月4日~2024年3月10日
南本館 Lower level 2
※ こちらのみ無料の展示になります。
チケットの値段
「Kandinsky」もしくは 「Louise Bourgeois」 | $35 adult $32 concession $30 member $88 family (2 adults + up to 3 children) $18 youth (12–17 years) Free children under 12 |
Kandinsky + Louise Bourgeois のセット | $60 adult $55 concession $50 member $150 family (2 adults + up to 3 children) $30 youth (12–17 years) |
オーストラリア現代アート美術館 (MCA)
観光地で人気のロックスにある現代美術館は、オーストラリアで最も有名なアイコンであるオペラハウスの近く (対岸) にあります。
140 George Street, The Rocks Sydney NSW 2000
https://www.mca.com.au/
Tacita Dean (タシタ・ディーン)
2023年12月8日~2024年3月3日 (火曜日は定休日)
オーストラリア現代アート美術館 Level 3
Tacita Dean | $25 Adults $18 Concession Free Youth (13 -17) Free Children (12 & under) Free MCA Members |
アーティストについて
Kandinsky (カンディンスキー)
ちょっとした撮影スポットも出来てます
2023年11月4日〜2024年3月10日
ニューサウスウェルズ州立美術館 南本館 Lower level 2
ニューヨークのグッゲンハイム美術館の共同企画により実現したカンディンスキー展では、国内では過去最大規模、50点以上の作品が展示されます。
音楽や精神世界など目に見えない内面的な世界を円や三角、四角、直線、曲線などの形、色彩で表現した抽象絵画の父とも呼ばれるワシリー・カンディンスキー (Vasily Kandinsky 1866-1944) は、20世紀初めに抽象画の開拓者のひとりとして活躍した画家です。
美術理論家でもあり、第一次世界大戦やロシア革命、ナチスドイツの支配が横行する激動の時代を生きた彼は、時代に翻弄されながらも美術学校で教鞭をとったり抽象絵画についての理論書を出版したりしました。
ちょっと変わったカンディンスキーの経歴
ロシアの裕福な家庭で育ったカンディンスキーはモスクワ大学で法律や政治経済を専攻し将来を約束されていましたが、印象派画家モネ (Claude Monet 1840-1926) の「積み藁」というという作品で主題がわからなくても絵は人を感動させるということに衝撃を受け、30歳過ぎてからドイツのミュンヘンで絵を学び始めます。
第一次世界大戦 (1914-1918) 勃発でドイツとロシアは敵国となり、ロシア革命 (1917) も起こる中で帰国。しばらくロシアで働きましたが、1921年にバウハウス (美術学校) の講師として招かれ再びドイツへ行き、1933年にナチスドイツによって閉鎖されるまで教鞭をとりました。
その後に移り住んだフランスもナチスドイツに占領され、最後はパリで亡くなっています。
Louise Bourgeois (ルイーズ・ブルジョワ)
2023年11月25日〜2024年4月28日
ニューサウスウェールズ州立美術館 北新館 Lower level 2 & Lower level 4 (The Tank)
ルイーズ・ブルジョア (Louise Bourgeois 1911–2010) の作品は、日本でも六本木ヒルズに巨大な蜘蛛のアートがあるので、見たことがある人は多いのではないでしょうか。
パリで生まれ、ニューヨークで亡くなったフルジョアは、70年にわたって感情や心理状態を探求し、様々な形で表現しました。
シドニーの展覧会 “Has the Day Invaded the Night or Has the Night Invaded the Day?” は、過去オーストラリアで開催された彼女の展覧会の中でも最大規模のもので、120点以上の作品の中には『The Disaster of the Father (1974年)』『Crouching Spider (2003年)』などオーストラリア初公開のものも多くあります。
詳しくこちらにも書かせていただきました。
ニュー・サウス・ウェールズ州立美術館(以下、NSW州立美術館)の北新館で11月24日、ルイーズ・ブルジョア展「Has …
北新館の地下2階にある「昼」の白い部屋から地下4階タンクギャラリーの暗い「夜」の場所に移動し、昼と夜、愛と憎しみ、静けさと混沌、意識と無意識などを感じてみてください。
Georgiana Houghton (ジョージアナ・ホートン)
2023年11月4日~2024年3月10日
ニューサウスウェールズ州立美術館南本館 Lower level 2
カンディンスキー展と並行してジョージアナ・ホートン (Georgiana Houghton 1814–1884) の「見えない友達 (Invisible Friends)」の無料展示。
作品は1860年代〜1870年代にイギリス人女性霊媒師ジョージアナ・ホートンによって描かれた水彩画で、この絵が描かれた当時、彼女の作品に対する世間の評価は良いものではありませんでしたが、近年になって抽象画家の先駆者として再注目されています。
19世紀、ビクトリア朝時代のイギリスではスピリチュアリズムが盛んで、亡くなった人々と対話をする降霊会に有名な政治家や科学者、芸術家作家などが参加していたことは有名です。ジョージアナ・ホートンはその時代の著名な霊媒師であり、亡くなった人々との交流を通してスピリチュアルな絵を制作しました。
今回シドニーで展示される絵は、ビクトリア州メルボルンにあるビクトリアン・スピリチュアルユニオンのチャペル以外では滅多に見ることが出来ない、珍しい作品です。
タシタ・ディーン (Tacita Dean)
2023年12月8日~2024年3月3日 (火曜日は定休日)
オーストラリア現代アート美術館 Level 3
ベルリンやロサンジェルスを拠点として活動するイギリス出身の著名アーティストタシタ・ディーン (Tacita Dean 1965-) は、多くのフィルム、写真、音、インスタレーション、絵画、版画、コラージュなどを手掛けて来ました。
ハイライト作品
- Geography Biography (2023年)
ディーンの熟練したアナログフィルム製作技術により、過去の作品やアーティスト個人のアーカイブからの素材が組み込まれていまれている彼女の最も伝記的な作品で、オーストラリアでは初公開になります。 - The Wreck of Hope (2022年)
巨大な黒板にチョークで描かれた溶ける氷床は、気候の変化によって脅かされる様子を表現しています。タイトルは、ドイツのロマン派風景画家キャスパー・ダーヴィッド・フリーデリヒ (Casper David Friederich 1774 –1840) の作品から。 - Paradise (2021年)
ダンテの『神曲』にインスピレーションを受けて生まれた「ダンテプロジェクト」の中で、ディーンは舞台装置と衣装をデザインし、高い評価を受けました。フィルムは2021年10月にロンドンで公演された時のバレエ最終幕の一部です。 - One Hundred and Fifty Years of Painting (2021)
2020年にサンタモニカにあるアパートで、年齢を合わせると150になる女性アーティストの Luchita Hurtado と Julie Mehretu が、芸術活動や人生などについて話す会話を撮影したフィルム。
備考
シドニーの情報を発信する月刊誌「ジャパラリア」さんが、抽選で1組にカンディンスキーのペアチケットが当たる読者プレゼンント企画をやっているようです。
応募は11月10日 (金) までなので、気になる人は近くの日本食レストランやお店などで雑誌を入手してみてください。