食事やワイン、上質な羊毛、アウトドアなどで親しまれているヤスバレーの町ヤス (Yass) は、オーストラリアの首都キャンベラから1時間もかからない距離にある町です。
植民地初期の農業に関する博物館や歴史的著名人に由来する場所であり、魅力的なブティックやお店などもあります。
日帰り旅行や短期休暇などに訪れてみてはいかがでしょうか。
ヤスについて
オーストラリアの首都キャンベラに隣接するヤスバレーはアクセスがしやすく、田舎に住みながら首都で仕事や学校に通うのにも便利な場所です。
シドニーから車で Hume Highway (M31) を南西に約3時間 (290km)、車がない場合はシドニーから電車が1日1本出ているので、日帰りでも行けないこともありません。その場合はこちらも参考にしてみてください。
その土壌の良さや気候から、羊を飼うのに適した場所として高品質のウールやメリノ種のブリーディング、そしてここ30年くらいでワイナリーや農産物でも知られるようになりました。
19世期に活躍した探検家ハミルトンヒュームが定年後過ごした場所としても有名で、他にも歴史的に有名な人物ゆかりのある観光場所が複数あります。
ヤスの歴史
ヤスバレーの名前の由来は、アボリジナルの言葉で「流れる水」を意味する「yarrh」に由来すると考えられています。
この土地はもともと Ngunnawal と Wirarjuri の人々が暮らしていました。
1821年に探検家ハミルトン・ヒューム (Hamilton Hume) 率いる遠征軍がヨーロッパ人として初めてこの地に訪れ、それから入植者が羊の群れを連れてこの場所に住むようになり、羊の放牧が始まりました。
1830年代にヤス川の南岸にヤスの村が設立され、シドニーからメルボルンを繋ぐ道路が建設されたこともあり、ヤスは道中の通過町として商業だけではなくカトリック教会や英国国教会 (アングリカン・コミュニオン) にとっても重要な場所になりました。
当時の旅行者はこの町で食料や宿を探すために足を止め、他の地域に住む人たちも物資を調達するためにヤスにやって来たと言います。
こうして徐々に成長して行った町は、1876年には鉄道開通し、19世紀後半になると更に大きく発展しています。
1901年にオーストラリアが連邦国としてイギリスの植民地から独立した時、ヤスは首都候補として挙げられた町のひとつでした。
そして、1956年にニューサウスウェルズ州でいちばん最初にフッ素を水道水に導入した町でもあります。
イベント
3月 Yass Show
https://www.yassshow.org.au/
9月 Turning Wave Festival
https://www.australias.guide/
など。
町の観光
町の中心部は自然に囲まれた1830年代後半の建物を見る事ができます。だいたい2時間ほどあれば全部回れるそうで、リクエストに応じてボランティアの人によるツアーも開催できるようです。
ヤスバレーインフォメーションセンター
259 Comur St, Yass NSW 2582
https://www.yassvalley.com.au/
月〜金 9.30am – 4.30pm / 土・日 10am – 3pm / 休み グッドフライデー・クリスマス
まずは最初に Coronation Park の中にあるヤスバレーインフォメーションセンターに寄って、情報収集すると良いと思います。ワイナリーやレストラン、アウトドアアドベンチャーなど、より詳しい現地情報をもらえる可能性大です。
ちなみにインフォメーションセンターの前にある詩は、サザンテーブルランドエリアのアーティストの詩を集めたパブリックアートプロジェクトのひとつで、24カ所に設置されているそうです。
タウンウォーク
町を歩く時の主要観光場所をいくつか紹介します。
ヤス & ディストリクト博物館
247A Comur Street Yass NSW 2582
https://yasshistory.org.au/
週末のみ 10am – 4pm (日程は要確認)
ヤスバレーインフォメーションセンターからすぐの博物館は、もともとガレージだっだ場所を5年かけて改装して1988年12月に正式にオープンしました。ここでは、植民地時代以前から現代までのヤスの歴史に関する資料が展示されています。
ヤス鉄道博物館
Lead Street Yass NSW 2582
日曜日 10am – 4pm
鉄道博物館のある場所は昔の鉄道があった場所で、1892年にトラムが開通したときに建設されましたが、1988年に閉鎖されました。プラットホームはオーストラリアで最も短いそうです。
バンジョー・パターソン公園
「ワルチングマチルダ」の作詞者でもあるオーストラリアの有名な詩人、バンジョー・パターソン (Banjo Paterson 1864−1941) は、1871年の7歳の頃にこの地へ引っ越して来て、ここで子供時代を過ごしました。後に彼の子供たちのために田舎暮らしの経験ができるように Wee Jasper の家を購入しています。
それを記念して町の中心部、Meehan Street には、彼の胸像が飾られた1956年にバンジョー・パターソン公園 (Banjo Paterson Park) がつくられ、ピクニックエリアとしてもにも良い場所です。
ヤス裁判所
現在も現役のヤス裁判所は建築家 James Barnet が1万5千ポンドかけて1880年に建設したもので、最初の裁判所は1847年に建てられた後、ここに移されました。
クーマコテージ
756 Yass Valley Way, Yass 2582 NSW
https://www.nationaltrust.org.au/
金〜日 10am – 4pm (冬季は閉鎖される可能性あり)
大人 $10 / コンセッション・シニア $8 / ファミリー $25
このクーマコテージは植民地時代の建築にしては珍しいパラディオ風の建物で、この辺りで現存する最古の農村部の家屋のひとつです。
もともとは、1835年に牧畜を営んでいた Henry・Cornelius O’Brien 兄弟が建てたバンガローでしたが、オーストラリアの有名な探検家のひとりとして知られるハミルトン・ヒューム (Hamilton Hume 1797-1873) が1839年に100エーカーの土地と一緒に購入し、建て増しされています。ヒュームは定年後に過ごす土地としてヤスを選び、残りの人生を妻と一緒にここで過ごしました。
ハミルトン・ヒューム (Hamilton Hume 1797-1873)
1797年にニューサウスウェルズ州のパラマッタで自由移民として生まれた、オーストラリアの探検家です。家族で Appin に移り住んだ頃、ヒュームのブッシュ探索が始まり、そこでアボリジナルの人たちの言葉や習慣などを学びました。そして1821年にヤスを見付け、実質この地に初めて来たヨーロッパ人としても知られています。
ヒューム & ホベルウォーキングトラック
彼の最も有名な探索は、1824年に英国の船長ウイリアム・ホベル (William Hovell) と一緒にメルボルンのポートフィリップベイ (Port Phillip Bay) に行った時で、ヤスから南西のオーバリー (Albuny) までの440km 以上の足取りは『Hume and Hovell Walking Track』と呼ばれ、クーマコテージが公式の出発地点となっています。
Yass から Lake Burrinjuck を経由して Wee Jasper → Blowering Dam → Tumbarumba → Albury と続き、日帰りのウォーキングコースから21日かけて歩く長距離コースなどがあり、6〜30km間隔でキャンピングサイトが18カ所設置されています。
ヤスに関係のある歴史上の人物
ヤスは19世期に活躍した探検家ハミルトンヒュームや詩人のバンジョー・パターソンの他にも有名な人物がいます。
パトリック・ハーティガン
パトリック・ハーティガン (Patrick Hartigan 1878-1952 ペンネーム: John O’Brien) は教会の司祭であり詩人で、ヤスで生まれました。
ウォルター・メリマン
ウォルター・メリマン (Sir Walter Merriman 1882–1972) は、1903年にこの国で最も有名な羊のブリーディングを行う Merryville を確立した人物です。
もう少し足を伸ばして…
ヤス周辺の見所も色々あります。
ボウニング
Hume Highway を北西に13km 行くと、ボウニング (Bowning) という町に着きます。この地域では古い町のひとつで、ヒュームとホベルも当時ポートフィリップに行く途中に立ち寄りました。
19世期の建物を再利用した『Rollonin Cafe』も人気があります。
144 Bowning Road, Bowning NSW 2582
http://www.rollonincafe.net/
バリンジャックダム
ヤスから南西56kmに位置するバンジャックダム (Burrinjuck Dam) は、ニューサウスウェルズ州で最初に建設された灌漑用のダムで、現在ではキャンピングやウォーターアクティビティで人気の場所です。湖では釣りや水上スキー、ボートなども楽しめます。
ウィージャスパー
ウィージャスパー (Wee Jasper) は、ヤスから南へ63kmほど行った小さな村で、位置的にはブリンダベラ山脈 (Brindabella Ranges) のふもと、バリンジャックダムの端になります。
この地域周辺は多くのキャンプ場がありますが、主な見所は何といっても村の北西6kmにあるキャリーズケイブという洞窟です。
キャリーズケイブ
キャリーズケイブ (Carey’s Cave) は、1875年にジョン・ キャリー (John Carey) によって発見された洞窟で、約4億年前の珊瑚から形成されたカラフルなライムストーン (石灰岩) が特徴的です。1957年には古代に生息していたと言われる巨大ウォンバット (megafauna wombat) の背骨が発見され、注目を浴びました。この洞窟を見学するにはツアーに参加する必要があります。
Goulburn は東へ87km
Gundagai は西へ100km
Wagga Wagga は西へ180km
Junee は西へ160km です。
→ オーストラリアの町・サバーブ A 〜 Z
(参考: Yass Valley NSW / Visit NSW / Aussie Towns / Yass, New South Wales (Wikipedia))