オーストラリアは9月から公式の春になり、だんだんと暖かくなって来ます。
ワトルやジャカランダが咲き始め気分も何となく浮き立ちますが、同時にマグパイという鳥による “マグパイアタック” という、人間に対しての攻撃被害報告も出始めます。
経験した人なら分かると思いますが、鋭いくちばしで何度も何度も襲ってくるので、本当に怖いし危ないんですよね。
襲われた当時はまさか自分が狙われるとは思っていませんでしたし、どう対処して良いのか全く分かりませんでした。
そんな私と同じような経験をした人もたくさんいると思うので、今回はマグパイアタックについて具体的に詳しくまとめてみました。
マグパイアタックについて
マグパイ (Magpie 学名: Gymnorhina tibicen) は白と黒の羽を持つ鳥です。オーストラリアでは特に珍しくないので、名前は知らなくても見た事がある人が大半なのではないでしょうか。
この鳥が、春になるとしばしば人間を襲って来るのです。
※ ヨーロッパのマグパイはカラス科 (Corvidae family) なのに対して、オーストラリアのマグパイはモリツバメ科 (Artamidae)
私も昔、クイーンズランド州のブリスベン郊外に住んでいた頃に、何度かマグパイに襲われた経験があります。
いつも住宅街の外れの同じ道。ひとりでそこを歩いていると必ず後ろから急降下で飛んで来て、何度も何度も私の頭スレスレをピュッとかすめていくので、ゾッとしました。
ある一定の距離を離れたらもう襲って来なくなるのですが、それ以来マグパイを見ると構えてしまいます。
でも、いつでも襲って来るわけではありませんし、襲って来るマグパイはわずか10%満たないくらいだそうです。
マグパイアタックの時期はいつ?
マグパイアタックが起きるのはマグパイの繁殖期のみで、州によって気温が違うので若干の期間は異なるものの、通常は7月下旬から11月下旬頃までです。
なぜアタックをするの?
マグパイは限られたテリトリー (巣から50メートル以内) で子育てをするのですが、子供が生まれたらオスのマグパイはテストステロン (testosterone) が膨大に増加し、大切な卵やヒナを過剰なほど守ろうとします。良いお父さんなんですよね…。
ちなみに、オスとメスは似ていますが、オスの後頭部は真っ白で、白にグレーの羽が混じっているのがメスだそうです。
なので、全てのマグパイが攻撃的なわけではありません。
実は実際に襲ってくる確率はそんなに高くなく、わずかなつがい、それも巣に卵やヒナがいる場合のみなので、20匹のマグパイのうち1匹程度だそうです。それに、テリトリー内に人間が入っても10人中8人は何もされないとの事。
あと、マグパイが攻撃的になる理由のひとつに、過去に人間から嫌な思いをさせられた可能性もあると言われています。なので、石を投げたり追いかけたりはしないでください。
私も昔、知人に「石を投げると撃退できるよ」と教えられ、恐怖のあまり実行した事があるので反省。
(参考: Don’t fear the swooper: How to dodge magpie attacks this spring / ng with Magpies (PDF))
マグパイアタックの被害状況
マグパイは通常後ろから飛んで来てあなたの頭をかすめて行きます。
たかが鳥だと甘く見てはいけません。突然鋭いくちばしや爪で襲って来るので怪我をする人もいますし、危うく失明しそうになったり、避けようとしてフェンスにぶつかり亡くなった人もいるのです。
Magpie Alert というウェブサイトによると、2019年は4000件を超えるマグパイアタックが報告されています。
ACT | 668人 | VIC | 980人 | TAS | なし |
---|---|---|---|---|---|
NSW | 824人 | SA | 160人 | NT | なし |
QLD | 1145人 | WA | 291人 | 合計 | 4068人 |
※ 攻撃された人のうち負傷者は14%
※ 自転車に乗っていて襲われる人が全体の68% で、歩行者は 23.8%
こうして見ると、結構アタック経験者がたくさんいますよね。この数字も報告があった分だけでしょうから、もっといるかもしれませんね。
具体的な数字を含むマグパイアタックの情報は、Magpie Alert に詳しく書かれているので、心配ならそちらをチェックすると良いと思います。Facebook や Twitter などでも随時情報提供をしています。
アタックは出来れば避けたいものですが、何か方法はあるのでしょうか…。
マグパイアタックの対策は…?
マグパイは都会に住む鳥でもあるので、人間の住む領域がマグパイのテリトリーになる場合もあり、場所によっては注意喚起の看板が出ている事もあります。
万が一襲撃されたら落ち着いて、自分の顔を保護しながら素早く立ち去ってください。走ってはいけません。
そして、襲撃されたら他の人にもその事を伝えて情報を共有し、そのエリアのカウンシル (council) にも知らせてください。
他に出来る対策は以下の通りです。
他のルートを探す
あらかじめ巣がある場所が分かっているなら、出来るだけそこを通らない方が良いので、他のルートを探してみてください。
複数で行動する
単独で行動している人は狙われやすいので、グループ行動など複数で行動すると良いです。
ヘルメットにケーブルタイを付ける
自転車のヘルメットにケーブルを束ねるケーブルタイ (結束バンド) 、もしくはモールのようなものをたくさんツンツンとなるように取り付けておくと、マグパイが近づきにくくなります。(カッコ悪いですけど)
仲良くなる
理想はマグパイと仲良くなる事です。マグパイは良い場所を見つけたら20年くらい住み続けるらしいので、近所なら餌付けして友達になれれば良いですよね。
自転車は狙われやすい
マグパイは大きくて動きの速いものに反応するので、テリトリー内では自転車は乗らない方が安全です。もし急に襲われたら、自転車から降りると襲撃が止まる可能性があります。
マグパイを目で追う
アタックしてきたら、飛んでくるマグパイの様子を目で追い凝視しながら歩くと攻撃が止む可能性があります。ただ、目を合わせないようにという記述も見掛けたので、自己責任で…。
手を挙げる
手を挙げると、マグパイのアタックが止まる場合があります。
目や頭を保護する
アタックされたら、目を狙われたり頭や耳などを怪我するケースもあるので、ツバの広い帽子やヘルメット、メガネやサングラスを身に付ける、傘をさすなどをして守ると良いです。
どうやってターゲットを決めてるのか?
ところで、マグパイアタックはターゲットになる人とならない人がいるようです。
一節には着ている服の色 (オレンジ・黄色・紫) や出す音、歩くスピードなどがきっかけになっているのではないかと言われていますが、実際ははっきりとした理由は分かっていません。
ただ、あるマグパイは自転車に乗っている人だけを、あるマグパイは歩いている人だけなど、特定のタイプをターゲットにする傾向があります。
しかもマグパイの記憶力はとても優れていて、最大5年間もターゲットにした人を覚えている可能性があり、次の年も前年と同じ人だけを攻撃したりするそうです。
なので、以前攻撃された経験があればなるべくその場所は避けて別のルートを考えた方が良さそうですね。
おわりに
自然豊かなオーストラリアでは、都市部のカフェに座っていても鳥が寄って来て気分を和ませてくれる事がよくある反面、こういった事も起こります。
でもマグパイはオーストラリアのスポーツチームの名前にもなっていて、本来は愛されている鳥です。上手く共存出来るのが理想ですけどね。
とりあえず、お気を付けて。