ニュージーランドの赤い花を咲かせるポフツカワ (Pohutukawa) という木は、ちょうどクリスマス時期に満開になるので通称 “クリスマスの木” とも言われます。
この花のモチーフはよくお土産品やカードなどになっているほど、ニュージーランドでは人気があり有名です。
ポフツカワのシャツを着たサンタクロース
…え? オーストラリアのブログなのに、なぜニュージーランドの話をしてるのかって?
それは、ポフツカワをオーストラリアで見つけたからです!(多分)
昔、ニュージーランドへワーホリに行っていた時に知って大好きになった花だったので、オーストラリアで見つけた時は嬉しくなってしまいました。
しかも、色々調べてみるとオーストラリアと意外な関わりがあるらしく、興味深い事が分ったんです。
ビクトリア州にて
オーストラリアでポフツワカを見つけたのは2018年の12月、メルボルン側からグレートオーシャンロードに入る最初の町、トーキー (Torquay) の海岸沿いを歩いていた時です。
真っ赤な花を咲かせた木は遠くから見ても目立っていて、とても立派。
近付いてみると、それはどうもニュージーランドで有名なポフツカワじゃないかな?と思いました。オーストラリアにも生息してるなんて知らなかったのでびっくり。
本当にみとれてしまうほど見事に花が咲いていて、しかもこの日は23日だったので、ちょっと早いクリスマスプレゼントをもらったような思わぬサプライズでした。
その時の話
ポフツカワとは
ポフツカワ (フトモモ科・学名: Metrosideros excelsa)
赤い花を咲かせる木で、主にニュージーランド北島の海岸沿いに生息。ちょうど夏のクリスマス時期に咲くので “クリスマスの木” と言われ、詩や歌にもなっています。
…といっても、クリスマスのシンボルとして親しまれるようになったのは、白人が入植し始めた19世紀頃。
それよりもはるか以前から、この地に住んでいたマオリの人々の間では伝説の中でポフツカワが語られてきました。
マオリの伝説にも出てくる花
ポフツカワとはマオリの言葉で「スプレーによる水しぶき」というような意味で、海と潮風に晒されながらも生き残る海岸の樹木を表しているのだそうです。
マオリの伝説のストーリーにはいくつかのバージョンがありますが、共通するのは花が真っ赤なのは天国に行こうとして地に落ちていった Tawhaki という戦士の血なんだという事。
ケープレインガ
そして、ニュージーランド最北端ケープレインガ (Cape Reinga) にある樹齢800年のポフツカワの木も重要な言い伝えがあります。
マオリの魂は亡くなるとケープレインガの絶壁まで行き、この木の根を伝ってポリネシア人の祖先の故郷ハワイキ (Hawaiki) に帰っていくそうなのです。
(参考: https://meaningoftrees.com/)
ポリネシアの人々は、大昔にカヌーで海を渡り各地に散らばっていったと言われているので、ハワイやタヒチの言語や文化は酷似していますが、ニュージーランドもそのひとつ。
ちなみに “ニュージーランド” はマオリ語で “長く白い雲の土地” を意味する “アオテロア (Aotearoa)” と呼ばれています。きれいな響きですよね。
マオリの言葉は日本語と似ていて、世界でも珍しく母音を多く使う言語としても知られてるんですよ。
ニュージーランドのオークランドにて
…と、ちょっと横道に逸れてしまいましたが、ともかくポフツカワはニュージーランドに住む人々にとって、重要な意味を持つ植物なんです。
オーストラリアの花にそっくり
それにしても、ポフツカワって見れば見るほどオーストラリアのワイルドフラワーに似てるんですよね。特にボトルブラシなんて同じフトモモ科ですし。
こちらがボトルブラシの花。形は違うものの、何となく似てませんか?
ボトルブラシ
ボトルブラシはニュージーランドにも咲いていますが、オーストラリアのワイルドフラワーとして位置づけされています。
多くのオーストラリアのワイルドフラワーを観察してると気付くのですが、様々な種類の花があれど、同じグループの植物はどれも少しずつ形などの特徴が似てるものが多いんです。
でも、ポフツカワはほぼニュージーランドでしか聞いた事がないのに、オーストラリアの花に似てるのはなぜなんだろう?となんだか不思議でした。絶対にオーストラリアの植物の仲間だと思うのですが…。
似てる花をあげたらキリがないです
そう思って調べてみて驚きました!
オーストラリアが起源だった⁉︎
なんと、最近になって “ポフツワカはもともとオーストラリア原産だったのではないか?” という研究成果が出たそうなんです。
2017年の American Journal of Botanyに掲載されたアデレード大学の研究レポートによると、タスマニアの東海岸セントへレンズ (St Helens) 近郊から約2500万年前のポフツカワの化石が発見され、これよりポフツカワはオーストラリアが起源ではないかという説が有力になったとの事。
そしてゴンドワナ時代、オーストラリアはパプアニューギニア、フィリピン、ニューカレドニア、ニュージーランドなどと陸続きだったと仮定されていますが、現在の位置になった頃にはオーストラリアのポフツワカは絶滅していたのではないか、と。
実際にポフツカワが生息するのはニュージーランドだけなものの、似たような植物は南太平洋一帯やその他の地域で見られるようです。
ただ、今日オーストラリアにはポフツカワは生息しておらず、なぜ絶滅したのかはまだ解明されていないのだそう。
(参考: https://www.nzherald.co.nz/)
えー不思議!でも私の読みは合ってたみたいですね。
あれ?でもじゃあ、私がオーストラリアで見たポフツカワと思った木は何だったんでしょう?あれは誰か植えたのか、それともポフツカワじゃなかったのか?
それに、もし大陸が地続きだったとして、オーストラリアにもニュージーランドにも固有の動植物が存在する事を考えれば、それらは大陸が今の位置に移動した後に独自の進化を遂げたという事になるんですかね?
うーん、話が壮大になって来ました。
その他の活用
さてせっかくなので、最後にポフツカワが他にどんな事に活用されているのかを紹介します。
ポフツカワの花からはハチミツも採れるのですが、かつてマオリの人々は喉の痛みをそのハチミツで治療していたようです。
そして、独特の味がするハチミツはエリザベス女王2世も注目して毎年ランギトト島に注文していた事もあるのだとか。
なんか、そう聞くと気になってきますね(笑)
更に樹木は密度が高くしっかりしているので、木材として古くからマオリの人々、及びヨーロッパ入植者に珍重されていました。小物から船まで、実に多くの用途で幅広く使用されて来たようです。
ポフツカワってきれいなだけではなく、色んな方面で活躍しているんですね。
おわりに
まさかポフツカワからマオリやゴンドワナ時代にまで発展するとは…。
でも、オーストラリアはタヒチとなじみが深い事もあり、マオリの人々の起源には興味があります。
時々マオリの人々とオーストラリアの先住民アボリジニの人々が引き合いに出されますが、基本的に全く文化や歴史の違う性質を持つ民族ではないかと感じますね。
まあとりあえず、ハチミツが気になってきたので探してみようかな…?