シドニー中心部から南西へ約55km、電車で約1時間ほどのところにあるキャンベルタウン (Campbelltown) には、とても興味深い町です。
埼玉県越谷市の姉妹都市であるため、日本庭園やコシガヤパークがあるにも関わらず、日本人がほとんどいない不思議な地域。
それも面白いですが、キャンベルタウンは幽霊の目撃情報が多いことでも知られていて、毎年11月には19世紀に実在した人物の幽霊に由来するお祭りもあります。
昔は治安が悪いとされていたようですが現在はそれほどでもなく、町自体は明るく飲食店も多いですし、19世紀の古い建物と近代的な建物が共存する「そこそこ栄えた田舎町」という感じです。
※ キャンベルタウンはシドニーと同じく、キャンベルタウン CBD を指す場合と、キャンベルタウン市 (City of Campbelltown) 全体 を指す場合があります。この記事は キャンベルタウン CBD、つまり中心部の観光記事です。
キャンベルタウンについて
シドニー中心部から電車で約1時間ほどのキャンベルタウンは、ダラワル国立公園 (Dharawal National Park) やオーストラリアン・ボタニックガーデン (Australian Botanic Garden) にも近く、マッカーサー地域に位置するキャンベルタウンを含むキャンベル市 (City of Campbelltown) は、コアラの保護が積極的に行われている多くのコアラが生息する場所でもあり、ます。
でもキャンベルタウンでいちばん有名なのは、19世紀に殺された農夫のフィッシャーの幽霊の伝説です!11月にはそれにちなんだ『フィッシャーズゴーストフェスティバル (Fisher’s Ghost Festival)』が開催されています。
お祭りについてはこのブログでも2018年に記事にしていますが、ここ10年くらいでもキャンベルタウンは変化してきていて、最近は以前よりも観光にも力を入れ始めているようです。
歴史
もともと Tharawal の人々が暮らしていたこの土地に「キャンベルタウン」という町として正式に設立されたのは、1820年12月1日のことでした。
シドニーのインフラを整えたことでも知られている5代目ニューサウスウェールズ植民地総督ラクラン・マッコーリ (Lachlan Macquarie 1762–1824) は、先住民と入植者の間のいざこざを見て、町にした方が秩序が保たれると考えたからです。
キャンベルタウンの「キャンベル」は、彼の2番目の妻であるエリザベス・マッコーリ夫人の旧姓から名付けました。
Mawson Park にあるマッコーリ夫人像
しかし、マッコーリ総督は町を完成させられないままイギリスへの帰国しなければならず、彼が去った後の町の発展はとてもゆっくりしたものでした。
そして毎年11月に開催されている『フィッシャーズ・ゴーストフェスティバル』の起源とされるフレッド・フィッシャーの殺人事件が起こったのは、1826年のことです。
事件についてはこちら
キャンベルタウンの人口は少しずつ増えていき、1858年に鉄道が開通。1882年にキャンベルタウンカウンシルが設立されたことにより、更に開発が進みました。
1960年代頃からは、シドニーのサウスウエスト地域の中心地となっています。
そして、キャンベルタウンが埼玉県の越谷市と姉妹都市提携したのは、1984年です。
キャンベルタウンと越谷市の姉妹都市提携
キャンベルタウンと越谷市が姉妹都市提携を締結したのは、1984年 (昭和59年) 4月11日でした。シドニーが名古屋市と姉妹都市提携したのが1980年なので、そのちょっと後ですね。
キャンベルタウンと越谷市は地理的条件や市の特色が似ていて、お互いの青年使節団の派遣や2000年のシドニーオリンピックの時に応援グッズが送られるなど、さまざまな交流をしています。
後でも紹介しますが、キャンベルタウンには1984年に開園したコシガヤパーク (Koshigaya Park) があり、1988年にはオーストラリア建国200周年を記念して日本の茶室「越谷亭」が Campbelltown Arts Centre に建設され、1994年には桜180本がコシガヤパークに樹林されています。
一方、越谷市には1986年にキャンベルタウン公園が開園 (正式には鷺高第五公園というらしいです)、1995年には姉妹提携10周年を記念してオーストラリアの野鳥73羽を寄贈、1998年にはワラビー4頭、1999年にエミュー4羽も寄贈され、キャンベルタウン野鳥の森公園で一般公開されています。
詳しくは越谷市のウェブサイトを読んでみてください。キャンベルタウン公園とキャンベルタウン野鳥の森公園のリンクも貼っておきます。キャンベルタウン公園にはオーストラリアのエアーズロックをイメージした遊具があるらしいですよ。
キャンベルタウンを観光しよう!
キャンベルタウン駅
キャンベルタウンには、キャンベルタウン (Campbelltown) 駅と、その先のマッカーサー (Macarthur) 駅の2駅あり、マッカーサー駅で終点になります。
マッカーサー駅周辺にはウエスタンシドニー大学や、Macarthur Square というシドニー南西部最大のショッピングセンターもあり、映画館やボウリングなども楽しめますが、観光で行くならキャンベルタウン駅で降りる人が圧倒的に多いでしょう。
イベント
詳しいイベントはキャンベルタウンのウェブサイトを見て欲しいのですが、最も有名なのが冒頭でも説明した『フィッシャーズゴーストフェスティバル (Fisher’s Ghost Festival) 』です。
2018年に記事にしていますので、こちらで様子が分かるかと思います。
毎年11月になると、シドニーから電車で1時間ほど行ったキャンベルタウン (Campbelltown) で『フィッシャーズ・ゴースト・フェスティバル (Fisher’s Ghost Festival) 』が開催されます。このフェスティ[…]
私がキャンベルタウンを訪問した2024年1月には、町のあちこちにストリートアートが施されていました。
見どころ
キャンベルタウンの Queen Street 周辺はショッピング街で、飲食店も多くあります。
たくさんのカフェやレストランが並んでいて、キャンベルタウン駅から10分ほど歩いたところには Kmart や Coles スーパーマーケットなどが入っている Campbelltown Mall もあり、その周辺にはマクドナルドや KFC、レッドルースターなどのファーストフード店も。
ですが、せっかくわざわざこの町に来るのなら、見どころはやはり歴史やゴースト、それに日本に関することです!
詳しいことを知らずにこの町に立ち寄る日本人の中には、名前から Koshigaya Park だけ寄って帰る人もいるようですが、そこまで来たらぜひ、キャンベルタウン・アーツセンターの日本庭園も見て帰ってください。
歴史的建造物でもあるキャンベルタウンのビジターインフォメーションセンターで情報収集したりお土産を買ったりするのも良いですし、その近くにある Rydges ホテル内にあるマイクロブリュワリーでゴーストラガーを飲むのもおすすめです!
ちなみに、諸説あるフィッシャーの幽霊が出た場所ですが、現在は Queen Street と Dumaresq Street の交差点がいちばん有力と言われているようで、自分の遺体が埋まっているところを指差すフィッシャーの看板が建てられています。
こちらもお見逃しなく!
Campbelltown Visitor Information Centre
まず最初に寄りたいのがビジターインフォメーションセンター (観光案内所) です。
この建物はオーストラリア初のカトリックスクールとして、1840年に建てられたもので、当初は「セント・パトリックス (St Patrick’s)」と呼ばれていたのですが、その後にこの建物購入者が、この敷地にオーストラリア固有植物クオンドンの木があったことから (実際は違う木だった)、「クオンドン・コテージ (Quandong)」と名付けられています。
ここでキャンベルタウンを含むマッカーサ地域の情報収集が出来ますし、ローカルなお土産も豊富です。当時の学校を再現した部屋や、コアラについて学べるコアラルームも必見!
15 Old Menangle Road, Campbelltown 2560
https://www.campbelltown.nsw.gov.au/
水〜金 10am-4pm / 土・日 10am-2pm / 月・火 休館日
Campbelltown Arts Centre
ビジターインフォメーションセンターの向かい側にあるキャンベルタウン・アーツセンターでは、無料のアートギャラリーやカフェ、日本庭園、スカルプチャーガーデンなどがあります。
手前にはおしゃれで個性的なショップもあるので、お土産探しにも良いかもしれません。
毎年11月のフィッシャーズゴーストフェスティバルの時には、60年以上続くフィッシャーズゴースト・アートアワード (Fisher’s Ghost Art Award) の作品展も開催されます。
日本庭園
アーツセンターカフェの近くにある茶室がある日本庭園は、1988年に姉妹都市である越谷市から寄贈されたものです。池には鯉も泳いでいます。
スカルプチャーパーク
アーツセンターの敷地内には、有名アーティストの彫刻作品が並ぶスカルプチャーパークもあります。もちろん入場無料です。
Koshigaya Park
姉妹都市の越谷市にちなんだコシガヤパークですが、期待し過ぎるとプレイグラウンドやバーベキュー台、トイレなどがある普通の公園です。
ですが、よく見ると越谷市との姉妹都市関係についてや文化、歴史などが説明された看板が建っています。
2020年には Yarning Circle というアボリジナルサイトも作られ、2024年には越谷市と姉妹都市提携40周年を記念して日本人アーティストのデザインしたモニュメントが建てられる予定です!
Mawson Park
モーソンパークは、オーストラリアの南極探検家ダグラス・モーソンにちなんで名付けられた公園で、プレイグラウンドの他に、戦争に関する記念碑などが飾られています。
117 Queen Street, Campbelltown NSW 2560
https://www.nsw.gov.au/visiting-and-exploring-nsw/locations-and-attractions/
歴史的建造物
キャンベルタウンには歴史的建造物がたくさんありますが、キャンベルタウン中心部にある主要なものを紹介します。
Town Hall Theatre
ビジターインフォメーションセンターやアーツセンターの近くにあるタウンホールシアターは、1862年に建てられたもので、かつてフィッシャーを殺害したジョージ・ウォラルの所有していた家がありました。
そのため、1926年にウォラルの家に滞在して殺害されたフィッシャーの霊が出るという噂があり、謎の足音や音楽が聞こえたりするという話もあります。
無声映画を上映していた時代もあったこの建物は、現在でも使用されているマッカーサ地域では最大のコミュニティシアターのひとつです。
Emily Cottage
廃墟のようになっているエミリーコテージと呼ばれている小さく古い建物は、1823年から1827年の間に建てられたと推測されています。
コテージの名前の由来にはいくつかの説がありますが、いちばん知られているのが1883年に Emily Denmead という少女が2階のベッドルームで雷に打たれて亡くなったという話だそう。しかし、実際に打たれて亡くなったのは妹の Mary Ann で、彼女のベットの鉄枠に窓から雷が落ちたと。
このことから彼女たちの幽霊が出ると主張する人もいますが、その後も肉屋やバーなど、様々な用途で使用されていたとのことです。
(参考: The stories behind Campbelltown’s Emily Cottage are detailed in a new journal | Daily Telegraph / Emily Cottage | Campbelltown Council)
1 Old Menangle Rd, Campbelltown NSW 2560
Glenalvon House
グレナルボンハウスは、アイルランドのウィックロー反乱軍 (Irish Wicklow rebels) のひとりだった Hugh “Vesty” Byrne の息子、Michael Byrne が1840年に建てたジョージアン様式のタウンハウスです。
応接室、図書室、子供部屋、子供部屋など12室が公開されている2階建ての植民地時代の家は、19世紀初頭のキャンベルタウンの生活を垣間見ることができます。
オープンデイにしか開放されていないので、日程は要チェックです!
おわりに
キャンベルタウンは州都シドニーからちょっと離れてますし、ガイドブックにもほとんど載っていない場所なので知らない人も多いと思います。
ですが、とても興味深いことがたくさんあるので、機会があればぜひ行ってみて欲しいです!