ニューサウスウェールズ州のサウスコーストには、海辺の町がいくつも並んでいます。Culburra Beach(カルバーラ・ビーチ)がその中でも少し変わっているのは、町の周囲にある水辺がひとつではないことです。
東にはタスマン海、北にはCrookhaven River(クルックヘイブン川)の河口、南にはLake Wollumboola(レイク・ウォランブーラ)。さらに海側には、Penguin Head(ペンギン・ヘッド)を挟んで性格の異なる二つの長いビーチが延びています。
有名観光地というよりも、静かで自然豊かな場所です。サーフビーチを歩き、湖の鳥を眺め、古い灯台の残る岬へ向かってみると、海・川・湖が隣り合う土地の面白さが少しずつ見えて来るでしょう。
Culburra Beachはどんな町?
Culburra Beachは、Shoalhaven(ショールヘイブン)地域にある海辺の町です。Nowra(ナウラ)から南東へ約22km、Sydneyからは車でおよそ2時間半の位置にあります。
町があるのは、Jerrinja(ジェリンジャ)の人々が長くつながりを保ってきたCountryです。現在も近隣のOrient PointにはJerrinja Aboriginal Communityがあり、Lake Wollumboolaをはじめとする周辺の土地と水辺は、Jerrinjaの人々にとって文化的に重要な場所であり続けています。
「Culburra」という地名は、Tharawalの言葉で「砂」を意味すると広く受け止められています。かつては、初期の土地所有者George WheelerにちなみWheeler’s Pointと呼ばれていましたが、1916年に土地開発業者Henry HalloranがCulburraと改称しました。
Halloranは、この一帯を大きな計画都市「St Vincent City」の一部にし、将来はCanberraと鉄道で結ぶという壮大な構想を持っていました。計画は実現しませんでしたが、Canberraの都市計画に影響を受けた半円形の道路配置は、現在のCulburra Beachにも残っています。
Penguin Headを挟んで延びる二つのビーチ
Culburra Beachの海岸を見る時は、まずPenguin Headの位置を知っておくと分かりやすくなります。この岬の北側にCulburra Beach、南側にWarrain Beach(ウォレイン・ビーチ)が延びています。どちらも約3.7kmの長さがありますが、向きが異なるため、風や波の条件も同じではありません。
Culburra Beach
町と同じ名前を持つCulburra Beachは、北のCrookhaven HeadsからPenguin Head方向へ続く長い砂浜です。Beachsafeによると、海岸の大部分には平均約1.5mの波が入り、沖へ流れるリップカレントも発生します。
砂浜をのんびり歩いたり、海岸の広がりを眺めたりするには気持ちのよい場所ですが、泳ぐ場合は見た目の穏やかさだけで判断せず、その日の遊泳区域と赤・黄の旗を確認しましょう。パトロールの場所や期間は季節によって変わります。
Warrain Beach
Penguin Headの南側からLake Wollumboolaの入口を越え、Kinghorn Pointまで延びるのがWarrain Beachです。Nowra-Culburra Surf Life Saving Clubがある、Culburraを代表するサーフビーチでもあります。
こちらも波とリップカレントのある外洋海岸です。サーフクラブ付近では沖の岩礁によって波がやや弱まることがありますが、「どこでも安心して泳げる浜」という意味ではありません。海へ入る前にはBeachsafeで当日の情報を確認し、旗が出ている時は必ず旗の間を利用してください。
Tilbury Cove
二つの長いビーチとは少し違う雰囲気を持つのが、Penguin Headの付け根にある小さなTilbury Cove(ティルベリー・コーブ)です。
周辺の外洋海岸より穏やかなことが多く、背後のTilbury Cove Reserveには芝生、遊具、BBQ設備、ピクニックシェルター、駐車場、トイレがあります。風を避けやすい場所でもあり、海を眺めながら休憩するのに向いています。ただし、入り江にも波が入る日はあるため、泳ぐ前の安全確認は必要です。
湖なのに、時々海とつながるLake Wollumboola
Culburra Beachの南側に広がるLake Wollumboolaは、この町を特徴づけるもう一つの水辺です。
この湖は、ICOLL(Intermittently Closed and Open Lakes and Lagoons)と呼ばれるタイプの沿岸湖です。ふだんは砂州によって海と隔てられていますが、集水域に大雨が降って湖の水位が上がると、水が砂州を破って海へ流れ出すことがあります。開口している間は海水も出入りし、その後は波や風が運ぶ砂によって再び閉じていきます。
つまり、湖岸の形、水位、砂州、見える鳥の数や位置は、いつ訪れても同じとは限りません。この変化そのものが、Lake Wollumboolaを見る面白さです。
湖とその周辺の一部はJervis Bay National Parkに含まれ、水鳥や渡り鳥の重要な生息地になっています。コアジサシ、オーストラリアミヤコドリ、オオソリハシシギ、アカガシラソリハシセイタカシギなど、季節や水位に応じてさまざまな鳥が利用します。Culburra Beach側には鳥を描いた壁画や解説表示、観察用の設備も整えられています。
ただし、ここは単なる「鳥がたくさん見られる観光地」ではありません。営巣区域は年や季節によって変わり、特に絶滅危惧種のコアジサシなどが繁殖する時期には立入規制が設けられます。現地の柵や標識に従い、双眼鏡や望遠レンズを使って十分な距離から観察しましょう。
Jerrinjaの人々と湖
Lake Wollumboolaを語る時、自然環境だけに注目すると、この場所の半分しか見えません。
Jerrinja Local Aboriginal Land Councilによると、湖は何万年ものあいだ、季節ごとに食べ物や資源をもたらし、人々の暮らしを支えてきました。Jerrinjaの言葉でGoonyenと呼ばれるBlack Swan(コクチョウ)は、文化的にも重要な存在です。湖が閉じている時には、文化的に重要な場所を行き来する経路としても使われていました。
鳥や湖の景色を眺めながら、その背後に現在まで続く人とCountryの関係があることも心に留めておきたい場所です。
河口を見守ってきたCrookhaven Heads Lighthouse
町の北端、Crookhaven Riverと海が出会う岬には、Crookhaven Heads Lighthouse(クルックヘイブン・ヘッズ灯台)が残っています。
この場所で最初の灯台が建てられたのは1882年。当初は木造で、Shoalhaven Signal Stationの一部として現在地より西側にありました。現在残るレンガ造りの灯台は1904年に運用を開始した二代目です。
灯台は2007年に役目を終え、長年の風雨や破壊行為によって傷んできました。かつて灯台上部にあったランタンは2011年に取り外され、修復後、HuskissonのJervis Bay Maritime Museumに建てられたレプリカ塔で保存・展示されています。
現在の灯台は中へ入る観光施設ではありません。Prince Edward Avenue側からブッシュの小道を歩いて外観を見に行く場所です。岬からは河口と海岸を望めますが、道の状態は天候や整備状況で変わるため、雨の後や足元の悪い日は無理をしない方がよいでしょう。
華やかに復元された灯台ではなく、海辺に残された傷んだ建物だからこそ、この土地の航海史と保存の難しさを伝えているとも言えます。
オーストラリアを代表する写真《Sunbaker》が生まれた海岸
Culburra Beachには、オーストラリアの写真史に残る意外なつながりもあります。
写真家Max Dupain(マックス・デュペイン)の代表作《Sunbaker》は、1937年末から1938年初め頃、仲間たちとCulburra Beachでキャンプをしていた時に撮影されました。海から上がって砂浜に横たわった友人Harold Salvageを、砂すれすれの低い位置から写した白黒写真です。
強い日差し、濡れた背中、わずかな水平線。極端なほど単純な構図は、のちにオーストラリアの海辺の生活を象徴する一枚として知られるようになりました。
現在のCulburra Beachを歩いても、撮影地点を示す大きな舞台装置があるわけではありません。けれど、広い砂浜とまっすぐな光のなかに立つと、なぜこの場所からあの写真が生まれたのか、少し想像しやすくなるかもしれません。
海辺の町で食べる
Culburra Beachは小さな町ですが、カフェ、ベーカリー、テイクアウェイ、レストランがあり、日用品は町のWoolworthsでも購入できます。
食事の候補には、地元の魚介と創作料理を扱うThe Little Snapper、タコスとカクテルのLoco Lane、海辺に近いカフェFishwicksなどがあります。First Nations-ownedのMirritya Mundyaは、ネイティブ食材と物語を通じてCountryにつながる食体験を提供しています。
営業日が限られる店や予約中心の店もあり、季節による変更もあります。特定の店を目的に訪れる場合は、公式サイトや公式SNSで直前に営業状況を確認してください。
行く前に知っておきたいこと
アクセス
車ではNowraからCulburra Road方面へ向かいます。Sydneyからは交通状況により、およそ2時間半が目安です。
公共交通では、South Coast LineのBomaderry Stationまで列車で行き(Kiamaで乗り換え有り)、NowraとCulburra Beachを経由する路線バス111へ乗り継げます。ただし運行本数と接続は日によって異なるため、出発前にTransport for NSWのTrip Plannerで確認してください。シドニーから4~7時間かかります。
町の海岸、湖、灯台は一か所にまとまっておらず、徒歩だけですべてを巡ろうとすると距離があります。
海と湖の安全
●海へ入る日はBeachsafeで波、パトロール、危険情報を確認する
●赤と黄色の旗がある時は、必ず旗の間で泳ぐ
●大雨の最中と直後は水質が悪化することがある
●湖や河口では大雨後、少なくとも数日は遊泳を避けるというCouncilの一般助言に従う
●岩場での釣りは、波と潮位を確認し救命胴衣を着用する
野鳥と犬を連れての利用
Lake Wollumboolaの国立公園区域では、補助犬を除きペットを連れて入ることはできません。一方、Culburra Beach側には時間制の犬利用区域もあります。境界や時間は変更される可能性があるため、Shoalhaven City Councilの最新マップと現地看板を確認してください。
Culburra Beachは、水辺の違いを見つける町
Culburra Beachの魅力は、「有名な何か」が一つだけ立っていることではありません。
外洋に面した二つの長い砂浜、岬の小さな入り江、開いたり閉じたりする湖、川の出口を見てきた古い灯台。そして、その砂浜から生まれた一枚の写真。近い場所にある水辺がそれぞれ違う時間を持ち、自然史、文化、町の歴史を重ねています。
海を見て終わるのではなく、少しだけ町の奥へ入り、湖と河口まで足を延ばす。そうするとCulburra Beachは、静かな海辺の町から、いくつもの物語が交差する場所へ変わって見えてきます。
主な参考資料
●Shoalhaven Tourism:Culburra Beach
●Shoalhaven City Council:Tilbury Cove Reserve
●Jerrinja Local Aboriginal Land Council:Lake Wollumboola
●NSW National Parks:Jervis Bay National Park
●Shoalhaven City Council:Entrance management
●Visit NSW:Crookhaven Heads Lighthouse
●Jervis Bay Maritime Museum:Crookhaven Heads Lighthouseで使われたランタン
●National Gallery of Australia:Max DupainとOlive Cotton
●South Coast History Society:Culburra Beach
情報確認:2026年8月8日。営業時間、交通、パトロール、国立公園の警報などは訪問前に最新情報をご確認ください。
