地元の人でなければ見付けられないようなひっそりとした場所にある『フィーチャー・ブリューイング (Future Brewing)』は、アメリカ西海岸でビールについて学んだオーナーが、2023年9月にシドニー郊外のセントピーターズ (St Peters) にオープンしたマイクロブリュワリーです。
基本的にブリュワリーはひっそりした場所にあることが多いので驚きはしませんが、あまりにも飾りっ気がないのには初めは驚きました。
でも今となって思うのは、それがこのブリュワリーの良さなんです。
シンプルな環境なゆえに個性豊かなビールの味にじっくりと集中出来ますし、知る人ぞ知る隠れ家的な雰囲気で居心地の良さを感じます。
ここには数種類が少しずつ飲めるパドルはありません。ですが、今までビールの味に特にこだわりがなく、強いて言えばあっさり系のラガーを好んでいた私が、初めて苦味のある DIPA やヘイジー系ホップを積極的に飲みたいと思わせてくれたブリュワリーでした。
地元人たちの隠れ家的ブリュワリー
こちらがコロナ禍を経てセントピーターズにオープンした『フューチャー・ブリューイング』は、セントピーターズ駅から歩いて10分かからないくらいの距離にあります。
ただ、オフィスや商業施設の建物の中にポンっと紛れているので、ちょっと分かりにくいかもしれません。
82 May St, St Peters NSW 2044
https://futurebrewing.com.au/
木 4am-9pm / 金・土 12am-9pm / 日 12pm-8pm
週末ともなるとローカルの人たちで賑わいますが、金曜日の午後は意外とひとりの人も多くて、のんびりとのどかな雰囲気です。
大きなカウンター席に座って、スタッフとビールについて熱心に話している人もいます。
このブリュワリーのオーナーである元環境科学者のブレディは、2014年にテキサス出身のパートナーであるローラと、彼女の家族に会うためにアメリカへ旅行した時、当時のオーストラリアよりもはるかに進んでいたアメリカ西海岸の醸造技術や多様性に魅了されました。
この技術やアイディアをオーストラリアに持ち帰ろうと決意し、2018年にアメリカのカリフォルニア大学で醸造について猛勉強。その後、アメリカの醸造所でも働いています。
オーストラリアでオープンしたブリュワリーは、アメリカで「オーストラリアにブリュワリーをオープンする!」と将来を考えていたので、フューチャー (将来) と名付けました。
そんなフューチャー・ブリューイングですが、セントピーターズ駅からどんな場所をどれだけ歩くのか、ちょっとシュミレーションしてみます。
フューチャー・ブリューイングへ行こう!
フューチャー・ブリューイングへ行くには、セントピーターズ駅を出て May Lane に曲がるか、シドニーパークを左に見ながら Princes Highway を歩きます。
シドニーパークは、元レンガ工場とゴミ捨て場だった煙突が目印です。
週末になるとブリュワリーでもちょっとした食事も出来ますが、この周辺にはカフェもあるので、どこかでランチなどを済ませて行っても良いかもしれません。ちなみに、上の写真右側はパレスチナのカフェ『Khamsa Eatery』があります。
Princes Highway を歩いて、 May Street が見えたら右折。ここ、本当に何の変哲もない静かな大通りという感じなんです。
このストリートには、シドニーパークにある煙突を象徴にした『Brickworks Brewing』というブリュワリーもありますが、今回のお目当てのブリュワリーはまだまだ先。
余裕があるなら、両方行っても良いかもしれませんね!
まだまだずーっと歩きます。
「本当にこんなところにブリュワリーなんてある?」と、まあまあ遠く感じる距離です。
そして到着!
なんでまたこんな場所に?と思うかもしれませんが、実はこのブリュワリー、本当は2020年にニュータウンにオープンする予定だったそうです。でも、建物の構造に問題があり断念し、その後にもっと広い物件をセントピーターズに見つけて、ここに落ち着いたそうです。
賑やかなニュータウンと静かなセントピーターズ、全然違うので考えると不思議な感じがしますが、個人的にはセントピーターズで良かったなあと思います。
こんな場所ですが、週末の夕方ともなると外にも結構人がいて賑やかです。
というか、見ての通り、とっても簡易的な外席なのが分かりますか?
シンプルだけど落ち着くブリュワリー
向かい側は Camdenville Park
3月に初めて友たちとここに来た時、申し訳程度の外席と、テーブルとイスが置かれたともすれば殺風景にも見えるタップルームに驚きました。おそらく私が知っている限り、いちばん飾りっ気のないブリュワリーです。
入口はこちら。
上の写真はちょっとピンボケしていますが、食べ物を販売している時はこんな感じで入り口で何か作ってます。
コンクリート打ちっぱなしの空間に、無造作に置かれたようなテーブルやイス。
日曜日の夕方ということもあり、まあまあ混んでます。ですが、座れないほどでもなく、席は十分にあります。
ここのブリュワリーには、大きくて広いカウンターがあります。
カウンター席でスタッフの人におすすめを聞きながら、ゆっくりビールの味を楽しむのもおすすめです。
ビールを注文したいなーと思ったらさっと来てくれて、お会計も席から立たずに出来るので楽ちんでした。
このカウンターでこの雰囲気とビールを楽しんでいるうちに、どうやら私はこのブリュワリーのファンになってしまったようです。
そう、では肝心のビールを紹介しましょう。
私がハマったビールたち
ここのビール、種類はそんなに多くはありませんが、ピルスナーやヘイジーペールエールが中心なんです。
特に注目すべきが、DDH HAZY DIPA。
DDH というのはダブルドライホッピング、つまりホップが2回投入されているので華やかな香りが際立つビールになります。そしてDIPA はダブル IPA のことで、IPA (インディアンペールエール) はホップを大量に使用したビールのこと。
大量のホップをさらに2倍、それも2回投入ということで、かなりのホップが使われているということになります。
実は、この間インスタを見ていたら、ここの「ソーセージシズル」というビールが出て来たので、気になって来たんです。それが DDH HAZY DIPA。でも、他にもネーミングを含めて気になるビールがたくさんあります。
ただここ、ちょっとずつ飲めるパドルがないんですよね。だから、飲み比べは難しいので、小さいサイズのビールで何倍か注文して飲みました。
最初に頼んだのは、もちろんソーセージシズルです!
Sausage Sizzle (DDH Hazy DIPA 8.5% ABV / ホップ: Nelson、Riwaka、Rakau)
このビール、実はオーナーのブレディがカリフォルニアで働いていた時のブリュワリー『Alvarado Street Brewery』とのコラボビールなんだそう。
ニュージーランドでホップ選びをしていた時に再会して、コラボすることになったとのこと。
さて、その味は??
表現が難しいのですが、落ち着いている苦味があるビールなのに、ごくごく飲めてしまうフルーティさもあるというか。アルコール度がとても高いのに、水のように爽やかな軽さがあるビールでした。
これは純粋においしい!
他にも飲んでみたいビールがたくさんあって迷いましたが、2杯目は下の写真左の Eazy Breezy (DDH Hazy Pale Ale 5.5% ABV / ホップ: Riwaka、Motueka、Motueka SubZero Hop Kief) にしてみました。
こちらはダブルホッピングのヘイジーペールエールで、ソーセージシズルとちょっと似てはいますが、
これはさっきよりもさらに飲みやすくて、ゴクゴク飲めそうなので危険かも!何しろ最初のビールのアルコール度が高かったので、ゆっくりゆっくり、時々スマホをいじりながら飲みました。
3杯とも同じ系統のビールだったので、どれも濁ってます (笑)
そして、これで最後。あともう一杯だけ!と思って選んだのは、上の写真右の Scooby Juice (DDH Hazy DIPA 8.5% ABV / ホップ: Mosaic、Motueka) を。
名前がかわいいと思ったら、このビールはオーナー夫婦の愛犬でブリュワリーの非公式キャラクターであるディオンに捧げるビールなんですって。なんてかわいらしい。
「ジュース」というだけあって、甘味がありました。…と言ってもサイダーみたいな甘さではなく、苦味はしっかりありますよ。
さっきのソーセージシズルと同じ DDH Hazy DIPA ですが、ホップが変わるとこうも味が違うのが面白いですね。
結論、どれもすごくおいしくて、これでここのビールにハマりました (笑)
でもゴクゴク飲めるけど、危険。
3杯が限界だったので、他の気になるビールは缶を買って帰ることにしました。
余裕があれば2軒目に先ほどのブリュワリーにも寄ろうと思ってたんですけど、ちょっと無理でした (笑) というか、今回はここだけで十分満足です。
Moments Matter DDH Hazy Pale Ale 5.5% ABV / ホップ: Citra, Mosaic, Motueka SubZero Hop Kief) は缶のデザインも好みだったので。(440ml$13とまあまあ良い値段)
こちらも2番目と同じダブルドライホッピングのヘイジーペールエールですが、ホップが違います。
(これもとても飲みやすかったんですが、数日後に飲んだので、違いを比べることは出来ませんでした。出来ればその場で飲み比べしたかったです)
缶のデザインも魅力的!
このブリュワリーで作っている缶ビール、デザインもすごくかわいいんです!
ボトルショップで見掛けたら、思わずジャケ買いしたくなりそう。
今までホップなんてほぼ気にしたことなかったのに、飲み比べが面白いのとビールがおいしかったのとで、目覚めてしまったかもしれません。
ということで、2週続けて行きました (笑)
新商品の Downside Up (DDH Hazy DIPA 8.7% ABV / ホップ: Citra、Galaxy、Motueka、Nelson)。
これ、イギリスの Beak Brewery とのダウンサイズアップ・コラボレーションシリーズの一環として醸造されたんだそうです。
このビールを飲んだ感想は、普通にガッツリ苦くて標準的な味だと思いました。
それと比べると Sausage Sizzle はびっくりするほど水のようにすっきり爽やかだし、Scooby Juice は不思議な甘さがあるし、とても面白いです。
先週と微妙に違うメニューボード
この二つは気に入ったので、買ってしまいました。
これらのビールはいつまで飲める?
ところで、これらのビールはいつまで飲めるのか気になったので、期間限定なのかとスタッフさんんい聞いてみました。
ニュアンスとしては、しばらくは販売していると思うけど、緩やかに期間限定という感じでしょうか。
ちなみに今は7月終わりですが、3月に来た時のビールはこちら↓
当たり前ですが、今売っているのとは全然違いますね!そりゃそうか。
しかもこの時は友達と来てて、ただ「来たことなかったブリュワリーを開拓したい!」という感じで2杯ほど飲んだだけだったので何も考えてませんでした。
たまにはひとりで来て、じっくりビールを味わうのも良いかもですね。
前はこんな紙のメニューもありました。
行く途中にあるお店
そう言えば、セントピータズ駅側から歩いてブリュワリーに行く途中に、小さなアンティークショップがありました。余裕があれば寄ってみても良いかも。
こちらはブリュワリーを通り過ぎたところにあったハンドメイドのお店。
こちらも知らないと絶対来ないと思うような住宅街にひっそりとオープンしてました。
おわりに
たまたまソーセージシズルというビールに釣られて5カ月ぶりに訪れたブリュワリーでしたが、こんなに楽しい気持ちになった自分に驚いてます。
正直、雰囲気を味わったら満足なところがあるので、インスタでキャッチーな名前のビールを見掛けなかったらリピートはなかったかもしれません。
でももしかしたら、パドルを頼んでちょっとずつつまみ飲みが出来ないので、ガッツリじっくり飲むしかないのも良かったのかもしれません。
ビールのおいしさと、味の違いの驚きと、隠れ家的雰囲気と、スタッフさんの心地良い気遣いと、全部が重なってとても良かったです。
ひとりでも、複数でワイワイ来ても楽しめるブリュワリーです。
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