オーストラリアの正式名称はオーストラリア連邦 (Commonwealth of Australia) というのですが、“連邦” とは複数の強い政治的権限を持った州が集まって成り立つ国の事で、アメリカ合衆国のような国と似た意味を持っています。
また、オーストラリアは英連邦加盟国 (Commonwealth of Nations) でもあり、これはイギリスと特別な協定を結んでいる国という事です。つまり、行政のトップはその国の首相ですが、元首はイギリスのエリザベス女王二世という事なんです。
そう、イギリスのエリザベス女王二世は、オーストラリア女王でもあるんですね。ただしオーストラリアに女王は不在なので、女王代理という形で “総督 (Governer)” という立場の人がいます。
でも、そもそも英連邦とは何のためにあるのでしょうか?詳しく見ていきます。
イギリス=イングランドではない
その前にクリアにしておきたいのですが、イギリスは具体的にどこを指すのか分かりますか?
これ、以外に知らない日本人が多くて、イギリスをイングランドと思ってる人も多いようですが、違います。確かに “イギリス” という言葉はイングランドが訛った言葉なので混同しやすいですけどね。
イギリスと言う単語は日本にしか存在せず、ではそれにあたる英語は何かと言うと、グレートブリテンおよび北アイルランド連合王国 (United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland) ですね。
でも正式名称は長過ぎて大変なので最初の文字を取ってユナイテッド・キングダム (UK) と呼ぶのが一般的です。これなら聞いた事ありますよね?
「あれ?でもじゃあ、オーストラリアに来たらやたらよく聞く Britain (British) というのはどこの国?イギリスだと思ったけど??」と思った人はいますか?
その違いも見ていきましょう。
UKとBritainの違い
イギリス (UK) は、イングランド・スコットランド・ウェールズ + 北アイルランド入れた4つの国を指します。
つまりイギリスというのは単独の国を指す言葉ではなく、4つの国が集まった連合国です。
昔はこの4つの国にそれぞれ王様がいて国を治めていましたが、現在ではひとりの王 (今はエリザベス女王二世) が4つの国を治めています。
それに対してブリテンは、イングランド・スコットランド・ウェールズの総称。この3国はブリテン島にあるからです。
でも、ブリテンを北アイルランドも含んだ意味で使い、それに対してブリテン島の3カ国を Great Britain と呼んで区別する事もあり、曖昧な言葉ではあります。
とりあえず、ブリテンもUKと同じ意味で使われる事が多いので、イギリス (イギリス人) =ブリテン (ブリティッシュ) と思っておけば、だいたいは合っていると思えば良いかもしれませんね。
ちなみに、北以外のアイルランドは1937年にイギリスから独立してアイルランド共和国という、別の国です。
1707年 | グレートブリテン王国 | イングランド王国とスコットランド王国が合併 |
1801年 | グレートブリテン及びアイルランド連合王国 | アイルランドが合同法によりグレートブリテン王国と合同になる |
1921年 | グレートブリテン及び北アイルランド連合王国 | アイルランド独立戦争により共和国として北部を残して独立 |
イングランドはアングロ・サクソン人の樹立した国家ですが、スコットランドやウェールズ、アイルランドはもともとはケルト人からなる国家でした。
あそこら辺の歴史は色々とややこしいですよね。
オーストラリアと英連邦
つい百数年前までイギリスの植民地だったオーストラリアは、1901年にイギリスから独立してひとつの国となりましたが、王 (女王) はイギリスと同じ元首を持つ国で、そんな国を英連邦王国 (Commonwealth realm) と言います。
オーストラリアの元首はイギリスの王 (女王) が兼任しているという事で、“君臨すれども統治せず” という言葉の通り、形式上、王 (女王) がオーストラリア政府が推薦した人物を代理として任命するという形になっていますが、実質的なオーストラリアの政権はオーストラリアの首相や内閣が担っています。
オーストラリア国旗
イギリス国旗
オーストラリアの国旗を見ると、左上にしっかりとイギリスのユニオンジャックが付いてますよね。
それに、オーストラリアの$5紙幣やコインにも、イギリスのエリザベス二世が載ってます。
英連邦のメリットとは?
では、英連邦に加盟していると、どんなメリットがあるのでしょうか?
これには様々な意見があって、90年代にはオーストラリアを共和国化しようという議論が白熱したようですが、1999年に行われた国民投票では成立しませんでした。
今でこそ移民の国と言われていますが、もともとはイギリスをルーツとする人たちが多い国で、独立当時もイギリスを祖国だと思っていた人たちが多かったと言います。なので、そう言う影響もあったのかもしれませんね。
そこで、オーストラリア人である私のパートナーにオーストラリアが英連邦国である事について、どう思うか聞いてみました。
英連邦国な事に不満はないんだそう。
それに、英連邦に加盟したいと希望する途上国も複数あり、加盟すると恩恵にあずかれるので人気(?)はあるようです。
どの国が英連邦加盟国?
英連邦加盟国は世界で52カ国。
そのうちオーストラリアのようにエリザベス女王を元首とする国は英連邦王国(Commonwealth realm)と呼ばれ、2018年の現在16カ国の英連邦王国が存在します。
英連邦王国は元イギリス植民地だった国が多いですが、それ以外にも英連邦王国ではないけれど英連邦に加盟している国(Commonwealth of Nations) というのもあって、そうなると他に36カ国となります。これらの国々は、その国独自に君主や大統領がいる国です。
※ 加盟国は2018年時点です。
オーストラリアのように国旗にユニオンジャックが付いている国は結構あります。実は、カナダの昔の国旗にも付いていたんですよ。
ニュージーランド国旗
フィジー国旗
君主の存在しない国は共和国 (Republic)、君主のいる国は立憲君主国 (Constitutional monarchy) と区別され、天皇が置かれている日本はこれに当たります。
イギリスやオーストラリアなども君主はエリザベス女王二世なので立憲君主国です。
英連邦国だけのオリンピックも
2018年コモンウェルスゲームのイメージキャラクター
英連邦諸国では、1930年からオリンピックのように4年に1度コモンウェルスゲームという総合競技大会が開催されていています。
2018年は4月にオーストラリアのゴールドコーストで行われ、現地ゴールドコーストでは各地でキャラクターグッズ販売などが売られたり、大手スーパーマーケットの Woolworths では記念コインも配布されたりしました。
無関係の日本人にはなじみがありませんが、こう言う事も行われてるんです。
おわりに
イギリスのEU離脱が騒がれ3度延期された後、2020年1月31日、ついにイギリスは正式に離脱しました。
人口20億人を超える英連邦のネットワーク、もしかしたらこれから巨大経済圏となるのではないか?という密かな噂もありますが、どうなるんでしょうね。