映画 Rabbit Proof Fence (裸足の1500マイル) のあらすじ・感想

  • 2019年3月13日
  • 2020年8月1日
  • 映画

今回は実話に基づいて2002年に制作された『Rabbit Proof Fence (裸足の1500マイル) 』を紹介します。

この作品は、20世紀初頭にオーストラリア政府が先住民アボリジニに対して行った同化政策「盗まれた世代」が題材となっています。

(出典: https://en.m.wikipedia)

ストーリーの原作は、ドリス・ピルキントン (Doris Pilkington Garimara) の実体験を描いた『Rabbit Proof Fence』で、映画は国内外で数々の賞を受賞しました。

公開と同時に多くのオーストラリア国民に支持されたこの作品は、同化政策に対して39億ドルの賠償金を支払ったものの謝罪は否認していたオーストラリア政府に対し、大きな疑問を投げかける役割も果たしました。(謝罪したのは2008年)

 

 

タイトルRabbit Proof Fence (裸足の1500マイル)
監督Phillip Noyce
脚本Christine Olsen
製作Phillip Noyce
Christine Olsen
John Winter
公開2002年
上映時間93分

 

出演:
Molly Craig 役:
エバリーン・サンピ (Everlyn Sampi) 🇦🇺
Moodoo (Tracker) 役:
デビッド・ガルピリル (David Gulpilil) 🇦🇺
A. O. Neville 役:
ケネス・ブラナー (Kenneth Branagh) 🇮🇪

 

 

私の総合的感想:

歴史的背景は少し複雑ですが、内容自体はシンプルです。
辛さがじわじわ来るので私は予告を観るだけでもうしんどいのですが、それでも何度も観てしまう映画です。

 

 

鑑賞の前の予備知識

同化政策
1788年に白人が入植して来て以来、原住民アボリジニの生活は脅かされ続けていましたが、1880年代に入ると政府は “アボリジニの保護・救済” を名目に同化政策を導入しました。これは原住民と白人との混血児を親から引き離し、白人の教育や宗教などを施す事によって白人社会に同化させようという計画で、それと同時に混血児が白人の混血児を産み続け世代を重ねていくうちに原住民の血は薄くなり消滅するだろう、というもくろみもありました。
この世代の人々は盗まれた世代 (Stolen Generation) と呼ばれ、1997年にその実態が世間の明るみに出た時には、大きな議論になりました。
ラビットプルーフフェンス (ウサギよけのフェンス) 
1859年、トーマス・オースティン (Thomas Austin) がイングランドから24匹のウサギを持ち帰り、狩猟目的で自分の領地であるビクトリア州の Winchelsea 近くに放し飼いにしたのですが、予想を遥かに超える凄まじい繁殖力は、作物に多大な損害を与えるほどでした。そこで政府は、対策としてウサギよけのフェンスを作る事にしたのです。
1907年に1833km (1139マイル) のフェンスが完成した時、世界一長いフェンスと言われました。

Rabbit proof fence, 1926-1927

 

⚠️ ここから先はネタバレあります。

 

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あらすじ

時は1931年。西オーストラリア州 ジグロング (Jigalong) に住んでいた当時14歳だったアボリジニと白人の血を引くモリー (Molly)、8歳の妹デイジー (Daisy)、モリーの従姉妹で10歳だったグレイス (Grace) は、親元から無理矢理引き離され故郷から遠く離れたムーア川開拓地 (Moore River Native Settlement) に連れて行かれました。そして、そこで多くの子供達と一緒に白人社会のルールを強要されたのです。

しかしモリーはそれに耐えられそうになく、デイジーとグレイスに歩いて故郷まで帰ろうと声を掛けます。デイジーはその無謀な提案に「遠すぎる」と信じられない顔をするものの、結局モリーたちと一緒に逃げました。

途中、色んな人たちに食べ物を恵んでもらったり道を教えてもらったり、時には方向を間違えながらもウサギよけのフェンスをつたって死にものぐるいで2400 km (1,500 miles) の距離を歩きました。

そしてついに、故郷に戻って肉親に会うことが出来たのです。全員が無事にといはいきませんでしたが…。

“Rabbit proof fence map showing route”
by Roke~commonswiki is licensed under CC BY-SA 3.0

最後のエピローグによると、モリーはその後2人の娘を産みますが、彼女の子供もまた同じムーア川開拓地に取られています。そして、再びモリーは子供のひとりを連れて同じルートを歩いて故郷に戻ったそうですが、その子供が3歳の頃にまた連れていかれてしまい、その子は二度と帰ってくる事はなかったのだそうです。

感想

まず、子供の足でオーストラリアのアウトバックを2400 km 歩くというのは途方もない話です。どれくらいの距離かピンと来ないかもしれませんが、日本列島は北から南で約2700kmですよ?

大自然が広がるアウトバックは、大人でも取り残されると命の危険を感じるほど周りに何もないような所なのに、それを子供が9週間も歩き続けたなんて、にわかには信じられません。

砂漠地帯は昼間は灼熱で夜は凍えるような場所ですし、熱中症にもならずによく生きて帰って来れたなあ、と。しかもモリーは時に歩けなくなったデイジーやグレイスをおぶって歩いているのです。

それに、よく必死の捜索から逃げ切ったものだと感心もします。追跡していたアボリジニのムードゥという男性も、白人の下で自分の娘も収容所に取られて辛い立場だったに違いありません。心の中では “逃げ切って欲しい” と思っていたのではないだろうかと、多くを語らない彼の表情から想像してしまいます。

途中で子供たちに食べ物を恵んでくれたり助けてくれた人たちはたくさんいたようで、そういうシーンがちょこちょこ出て来ます。

白人女性は態度こそ優しくなかったですが、彼らに食事とジャケットを渡し、故郷の方向を教えてくれました。同じ年頃の子供がいる女性の立場から、逃げて無謀にも故郷に帰ろうとしている子供たちの姿をどう感じたのでしょうね。

とにかく当時の政府や白人入植者たちは、後から謝罪したくらいでは到底許されないような残酷なあやまちを犯しました。「だからオーストラリアは人種差別の国」と言い切る人もいます。

仮に、白人社会に同化する事が良い事だと本気で信じていたとしても、それは自分たちの価値観を勝手に押し付けた偽善でしかありませんよね。

しかし、オーストラリア人監督によってこの映画は制作されました。それを支持する多くのオーストラリア人たちも存在します。

実は私、オーストラリアに来て2週間目やそこらでこの映画を観たのですが、それはケアンズで1カ月だけ通った語学学校の選択授業で、私は「Australian Study」という科目を選んだからです。

(他の日本人の友人たちは「簡単だから」とか「サボりやすいから」という理由で選択を決めてた子が多かった中、私はあの頃からオーストラリアの文化に興味があったようですね。)

当時この映画を観た時は英語でストーリーを追う事で必死でしたが、今改めて観直すと胸がつまって辛いです。この子たちは何とか逃げたけれど、文化も言葉も家族も全部失ってしまった人たちが大勢いるのだと思うと。

でもよく考えてみると、授業の中で私たちのような外国人にこういった映画を進んで観せるというのは、勇気のいる事ではないかと思うのです。

観光やアクティビティなど楽しいイメージだったオーストラリアの、裏の部分を観せられた瞬間でもありました。

あの頃、昼間からケアンズのバーでたむろして外国人に危害を加える事もあるという彼らの姿を、私はいつも複雑な思いで眺めてました。

おわりに

ストーリーが終わるとイギリスのシンガー、ピーター・ガブリエル (Peter Gabriel) のNgankarrparni – Sky Blue (Long Walk Home) の曲が流れるのですが、その頃には体に脱力感を覚えます。

ちなみに、この映画の原作となった『Rabbit Proof Fence』というの後には、モリーが故郷に帰って結婚・出産する所から始まる『Under the Wintamarra』という続編も出ています。

 

Acknowledgement to Country

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