国章にも描かれているオーストラリアの国花 ワトル

国章にも描かれているオーストラリアの国花 ワトル

日本の国花は菊と桜というのは知っている人が多いでしょうが、ではオーストラリアの国花 (National Flower) は何でしょう?

オーストラリアのナショナルカラーは緑と黄色 (ゴールド) という事で、ワールドカップのユニフォームもその色が使われていますが、その色はこの花から来ています。

そんなオーストラリアの国花は、ゴールデンワトル (Golden Wattle) という黄色い (金色) 花です。

国花は1988年に正式に発表され、国章にもちゃんとワトルが描かれています。

オーストラリア公式の春である9月1日に春の訪れを祝う象徴の花でもあり、多くのオーストラリア人にとって郷愁をかきたてられる花のようです。

木材としても優秀で、古くは先住民であるアボリジニのブーメランや槍、楽器や装飾などにも使用されており、一般的にも高品質の家具やベニヤ板となったり、よく燃える薪としても活用されています。

ある種の種子は食料や薬になる栄養価が高いブッシュフードとしても有名です。

 

Advertisement

ワトルについて

オーストラリアの国花となっているゴールデンワトルは、ネムノキ科 (Mimosaceae) アカシア属で学名は Acacia pycnanthaです。

主にオーストラリア南東部 (ACT周辺や南オーストラリア州のアデレードヒルズ、ビクトリア州の広域) に多く生息し、約4m〜8mの低木で、冬の終わる8月頃から早春にかけて開花します。

“ワトル” という名前はオーストラリアの呼び方で、ヨーロッパなどではミモザ (Mimosa) またはアカシア (Acacia) と呼ばれているので、その名前の方がピンと来る人も多いかもしれませんね。

ワトルの種類は山ほどある

ひとことでワトルと言っても、このアカシア属の花は世界中で1350種類以上も存在し、そのうちの約1000種類近くがオーストラリアで見る事が出来ます。

特に西オーストラリア州には約450〜500種のワトルが生息しているとの事。

似た姿形をしていても、よく見ると花や葉が違っていたり同じ名前が付いた違う花だったり混乱しやすいので、品種をはっきりと識別したいなら世界共通であるラテン語の学名を見ると良いですよ。

これも Prickly Moses (学名 Acacia ulicifolia) というワトルです。

ほとんどのワトルは10年〜20年くらいと短命ですが、200年から300年生きる長寿な品種もあり、オーストラリアを始めとして、アフリカやポリネシアなどの乾燥した地域に多く生息しますが、中には雪の下でも生き残れる品種もあるそうです。

種子はオーストラリアで頻繁に起こるブッシュファイヤー (山火事) の火により種が発芽し、その硬い種子の皮のお陰で荒漠​と​し​た​土地​で​も​生き​続け​られる​事が出来ます。

その硬さは、園芸として自分で育てる時には熱湯につけて発芽させなければいけないほど。

国章とカラー

イギリスの植民地だったオーストラリアは、1901年に連邦国家として独立しました。

1908年にイギリス国王エドワード7世に国章が贈られた最初の国章は、主に青とゴールドで描かれていていてワトルの姿はありません。(ちなみに、カンガルーとエミューは前進しかしない動物という事から、オーストラリアも常に前進するという意味が込められています。)

1912年9月19日にイギリス国王ジョージ5世によって贈られた新しい国章で、オーストラリアの6つの州の紋章とワトルの花が加えられ、色も黄色 (ゴールド) が主体となっています。

ナショナルカラーと国花

オーストラリアのナショナルカラーは緑とゴールドですが、これは1984年4月19日にオーストラリア総督がオーストラリアのナショナルカラーは緑とゴールドだと宣言した時から正式に決定されました。

それまでは青とゴールドなども使われる事があり、混乱を招いていたようです。(青色はワトルの背景の空の色として、今でも非公式には受け入れられてはいます。)

しかし、この頃はまだ国花としては定まっておらず、これは通称ワトルレディとして知られるマリア・ヒッチコック (Maria Hitchcock) が数年間に及ぶ全国キャンペーンを実施して、1988年9月1日にやっと正式なオーストラリアの国花はゴールデンワトルと認められました。

9月1日はワトルデー

1992年にはヒッチコックの呼びかけが各州の首相に認められ、正式にワトルの日が “National Wattle Day” として設立され、各州でバラバラに祝われていたワトルの日 (後で記載) が全州9月1日に統一されました。

ワトルの開花時期は州によって違うので、この日はどの種類のワトルを身に付けても良い事になっています。

そして、こんなゴールデンワトルをモチーフにしたワトルの旗があります。

これは、2015年にオーストラリアのアイデンティティを表す新しいシンボルとして作られた旗で、団結力とそれを結びつける自然と土地の美しさを表しています。人種、言語、信念、意見で区別する事なく、全ての人が平等に統一されているという意味が込められているそうです。

この旗が作られた背景には、オーストラリアのアイデンティティが大きく関わっています。

近年のオーストラリアは4人に1人が外国生まれという中、イギリス女王の誕生日を祝日にして祝うのはどうなのかとか、アンザック神話を語るアンザックデーに関わりのある子孫はどれくらいいるのかという問題も浮上しています。

特に1月26日のオーストラリアデーは白人がオーストラリア大陸を侵略した日という事で、長い間先住民アボリジニの人たちがデモ行進などの抗議をしている日でもあるのです。

そういう背景もあり、このイギリスの象徴であるユニオンジャックが国旗についているのはどうなのか?という事から、それならアボリジニにも深い関わりがあって白人系オーストラリア人にとって心のふるさとでもあるワトルの日をオーストラリアデーの代わりに国を讃える日にしたら良いのではないか、という意見も一部から出てはいるようです。

と言っても、ワトルの日が現在どれほど国民に浸透しているのか?と言えば、今のところはそんなに知られていないのではないかと思います。

ワトルという名前の由来

では、なぜこの植物が “ワトル” と呼ばれるようになったのでしょう?

それは、18世紀の初期開拓時代まで遡ります。

もともとワトル (Wattle) という言葉はアングロサクソンの言葉 (つまりイングランド) で “しなやかな枝”“その枝で編んだ木枠” という意味で使われていました。

オーストラリア入植初期のポートジャクソン開拓地 (現在のシドニーのロックス) では、そのワトルと呼ばれる木枠に泥を塗って“Wattle-and-daub huts (木の枝と土壁の小屋)” という家が建てられていたのですが、その時にシドニー周辺に多く生息していたアカシアの木をワトルとして使っていたのです。

そのアカシアの木をワトルと呼んでいるうちに木の名前として定着し、そのうちアカシア属全般を指す言葉として使われるようになったようです。

The old wattle and daub by MrPanyGoff

ただし、この時シドニーで使われたワトルは国花になっているゴールデンワトルではなく、シドニーゴールデンワトル (またはイエローワトル) という種類のワトルです。

Yellow Wattle / Sydney Golden Wattle (学名: Acacia longifolia)

国花になっているゴールデンワトルとは花の形が全然違いますよね。

このワトルは主にニューサウスウェールズ州やビクトリア州が生息地で、開花時期は冬から春にかけてちょうど8月頃です。

ワトルが国花になるまで

オーストラリアでワトルが春のシンボルとして認識されるようになった最初のきっかけに、鳥類学者で博物学者であるアーチボルド・ジェームズ・キャンベル (Archibald James Campbell 1853 – 1929) の存在があります。

キャンベルはビクトリア州を拠点に長年オーストラリアの鳥の研究をした人で、野鳥雑誌の編集に関わったり論文を書いたり30種程の鳥の名前を命名したりしました。

そんな彼は、ワトル愛好家でもあり、1899年にワトルを鑑賞する散策イベントワトルクラブ を創設して、数年にわたって開催していたのです。

そして1908年、キャンベルは “ワトルの日” を作る事を提案し、1910年9月1日に第1回目のシドニー、メルボルン、アデレードでの春の遠足イベントが企画されました。(当時メルボルンは大雨で大変だったそうですが。)

ワトルは入植初期から親しまれていた

キャンベル以前にも、ワトルは入植者たちの間で親しまれていました。

いちばん古い記録は1838年12月1日から始まったタスマニアの州都ホバートの中でも最も古い Regatta という地域で行われていたお祭りです。

これは、17世紀にタスマニアを発見したオランダ人のアベル・タスマン (Abel Tasman) を記念したお祝いで、この日はワトルを身に付けるのが習慣とされ、1883年までの45年間続けられていました。

他には1890年に、南オーストラリア州でジャーナリストの W. J. Sowden によって “Wattle Blossom Day” が開催された事もあります。

それくらいワトルは入植者にとって、親しみのある植物だったのです。

Advertisement

オーストラリア各州花

ちなみに各州にも州花があるんですよ。
下が一覧です。(写真はないです、ごめんなさい。撮ったら載せます。)

クイーンズランド州 (QLD)
Cooktown Orchid
(学名: Vappodes phalaenopsis)
Official in 1959.

ニューサウスウェールズ州 (NSW)
Waratah
(学名: Telopea speciosissima)
Official in 1962 by Governor Sir Eric Woodward.

オーストラリア首都特別地域 (ACT)
Royal Bluebell
(学名: Wahlenbergia gloriosa)

ビクトリア州 (VIC)
Pink Common Heath
(学名: Epacris impressa)

南オーストラリア州 (SA)
Sturt’s Desert Pea
(学名: Swainsona formosa)
Official in 1961.

タスマニア州 (TAS)
Tasmanian Blue Gum
(学名: Eucalyptus globulus)
Official in 1962.

西オーストラリア州 (WA)
Red and Green Kangaroo Paw
(学名: Anigozanthos manglesii)
Official in 1960 by David Brand.

ノーザンテリトリー (NT)
Sturt’s Desert Rose
(学名: Gossypium sturtianum)

まとめ

オーストラリアで親しまれているワトル、調べてみるとその関わりは想像以上に深いものでした。

何気なく外を歩く時、ちょっと周りの草花を意識してみると楽しいかもしれませんね。