数年前からマッサージはワーキングホリデーの人に人気の仕事としてランクインするようになりました。
でも、マッサージを謳いながら陰で性的サービスを提供しているような怪しいお店も多々あり、面接に行って見たら実はそういうお店だったという話はよく聞くので、特に女性は気を付けないといけません。
私はシドニーで5年くらい複数の場所でセラピストとして働いた経験があり、資格を取るために専門学校にも通っていました。その関係で実際にマッサージの仕事に携わる多くのワーキングホリデーの人や現地に住む有資格者の人たちの話を聞いています。
…と言っても政府の方針はコロコロ変わりますし、私が仕事を辞めてから既に1年が経過しているので情報が多少古くはなって来てはいるでしょう。ですが基本は同じだと思うので、これからオーストラリアの資格なしでマッサージの仕事をしたい人に、私が言えることをシェアしたいと思います。
お店選びが大切
最近「オーストラリアのマッサージ店は、ほとんどがいががわしいお店だ」とツイッターで言っている人がいて、とても悲しいことだと思いました。
オーストラリアのマッサージはリメディアルマッサージという保険も効く医療マッサージが主流であり、セラピストとして活躍するために日々勉強している人たちもたくさんいますから。
ワーキングホリデーでも真っ当なマッサージ店で働いている人も当然いますし、そういうあやしいお店が横行していることに迷惑している人もたくさんいるんですよね。
オーストラリアのマッサージ事情は、システムや施術内容など日本とはちょっと違うので戸惑う人もいるのではないでしょうか?私は以前、一生の仕事としてオーストラリアでマッサージセラピストを目指していた時代があったので、ある程度は説明出来ます[…]
ただ、確かにあやしいマッサージ店は数多く存在しています。
実際、アジア人のマッサージ店というといかがわしい仕事を連想してしまうオーストラリア人も少なくなく、私のオーストラリア人パートナーでさえ、私が働き始めた頃は「人に仕事を聞かれたら、“マッサージ” じゃなくて “アロマセラピー” とか “レメディアルマッサージ” とか言ってくれ」とお願いされました。
プロフェッショナルとしてプライドを持って働いている人もたくさんいるのにものすごく残念な話ですが、そういうこともあるのだと頭に入れておいた方が良いと思います。
まずは募集の書き方で見極める
仕事はインターネットの日本語のサイトから探す人も多いようですが、マッサージセラピスト募集と書かれているだけではどんなお店か分からないことが多く、日本の感覚でただのマッサージの仕事かと思って面接に行ったらちょっと怪しい店だったということはよく聞きます。
お店の外観は普通そうに思えたのに入ってみたら実は…ということもありますし、その逆もあるので実際に面接してみないと判断が難しい場合もあるかもしれません。
大概は面接で気がついて断れば何もないはずですが、稀にトレーニングと言って触られたり、普通のお店だと騙されてしばらく働いていたという人もいます。これは実際にそういう目にあった女の子たちから直接聞いた話です。
募集だけでは見極めが難しい場合もあるものの、「経験がなくてもすぐ働けます」とか「30歳以下の女性のみ」とか「短時間で高収入」などと書いていたら、まず怪しいと思ってください。
経験も資格もない若い女性がすぐに稼げるのはなぜなのか、そんなおいしい話があればみんなやっていますよね。
ということで、資格や経験がないときちんとしたマッサージの仕事を探すのは結構大変ですが、じゃあ資格がないと働けないのか?と言えば、そんなことはないです。
中国系、タイ系、日本人系のお店で資格なしで働いている人はたくさんいますし、運が良ければ保険のいらないビューティ系のリラクゼーションマッサージで働けるかもしれません。
ショッピングセンターに入っているようなマッサージ店なら安心で、それほど高い技術を求められることは少ないですが、お給料は低めです。
どの仕事でも言えることですが、面接では経験がなくてもしっかりと熱意ややる気を示しましょう。
お店によって雰囲気も客層も違うので一概には言えませんが、下記のような人が喜ばれる傾向はあります。
- 日本でマッサージかリラクゼーションのお店で働いた経験がある。
- 理学療法士、作業療法士、看護師などの資格を持っている。(解剖学の知識がある)
- 現在マッサージを学校で勉強中。
- 明るくて人と話す事が好き。気が利く
- 将来マッサージで生計を立てていきたい。(日・豪問わず)
- 人の身体 (筋肉など) に興味がある。
- 資格や経験はなくてもやる気があって勉強熱心。
- 半年は働いてくれそう、少なくともすぐ辞めなさそう。
契約書は…、杜撰なところだとないこともあるので後々のトラブルは気を付けてください。
Wifi完備なところも多く、お客さんがいない時は自由時間なので、その合間に学校の勉強をする人や昼寝する人もいます。ただ、拘束時間は長めな可能性が高いです。
稼げるの?
稼げるか稼げないかは、はっきり言ってピンキリです。
通常マッサージの仕事は時給ではなく、施術した回数によって給料が決まる歩合制なので、指名があるかないかで違いますし、技術があっても指名が取れるかどうかはまた別の話。極端な場合はひとりのスタッフがじゃんじゃん稼いでいる横で、もうひとりは家賃を払うのがやっとという状況もあり得ます。
お店によりますが、マッサージ代の20〜30%くらいが取り分のところが多いでしょうか。プラス、経験や働き具合で取り分を上げてくれる場合もありますし、チップをくれるお客さんもいます。
給料の受け取り方もお店によって色々で、手渡しだったり (良いか悪いかは置いておいて)、振り込みだったり、日給だったり2週間に1回だったり。まあ、大きい声では言えませんが、ちょっとずるいことをしているお店もなくはないですね。(タックスはある一定の額を超えなければ引かれません)
あと、お客さんがゼロでも最低補償金が支給されるかどうか、されるならいくらもらえるのかも確認しておいた方が良いですね。お客さんが来なくて施術をしなかった日は売り上げゼロなので給料はなしという所もありますから。
ただ、単価が低いので数をこなさないと稼げないかと思えば、チップをたくさんくれるお客さんもいたりもするので、どれくらい稼げるかは本当に差が激しいかと思います。
トレーニング
さて、面接に受かったら普通はトレーニングがあると思います。
たまに、全く経験なしの素人にトレーニングなしでいきなりデビューさせるお店もあるようですが、もし自分がそのお店のお客さんだとしたらと考えてみてください。きっと客層もお給料もそれなりだと思います。(やるかやらないかは自分自身の判断です)
人の体に触れる仕事ですし、真っ当なお店ならそれなりの技術が必要なので、きちんとトレーニングをしてくれるはずです。(私が見て来た範囲ではそうでした)
どのくらいの期間トレーニングが必要かは、その人の資質ややる気、お店がどのレベルまで求めるかによって違いますが、私の感覚では未経験だと平均2〜3週間くらいでしょうか。(2~3日というところもあるようですが)
私の見て来た感じだと、日本人が経営しているお店は治療を謳うところも多いので、レベルチェックは厳しめです。
でも、全くの素人を短期間でお金がもらえるレベルまで育てるのは結構大変で、中にはトレーニングするだけして辞めていく人もいます。だからオーストラリアの資格がなくても、日本で経験がある人や理学療法士の資格を持っている人、現在オーストラリアの学校でマッサージを勉強中の人は圧倒的に有利で優遇されるのは言うまでもありません。
トレーニング中にはお給料は発生しないお店がほとんどで、むしろデポジットを要求されることもあります。(最初にお金をオーナーに払い、6カ月働いたらお金を返金するなど)
これはおかしいという人もいて賛否両論ですが、散々トレーニングした挙句に「やっぱり辞めます」という人やお金を稼ぎたいだけでそんなに覚える気がない人に多々遭遇して困ったオーナー側の苦肉の策なので、仕方ないのかなあという感じで私は見ています。
お金を払って学校で学んだ身としては、無料でマッサージのトレーニングをしてもらえるなんてすごいなあと思ってしまうのですが、どうなんでしょう。(法律的には微妙なところ)
でも、トレーニング中もお給料がもらえるという話も聞いたことがあるので、そこは確認してみてください。
では正規の資格を持ったマッサージセラピストはどうなのかというと、基本的に雇われではなく個人事業主という扱いになるので即戦力ということになり、トレーニングはないです。(が、資格があってもマッサージが上手いとは限らないので、雇われ形態だとトレーニングで指導されたりとかはあります)
一定レベルの技術を提供するお店で経験のない人を雇うのはリスクも高く、未経験者をトレーニングするのはものすごい労力が必要な上にデビュー出来るまで育つかどうかさえ分からないので、どれくらい真剣に働きたいのか見極めるために、面接でわざと少し厳しいことを言って反応を見るオーナーもいました。(これはジャパレスでもあります)
最低6カ月と言っているのもそのためで、オーナーも出来るだけ無駄な時間を費やしたくないのは分からなくないです。
ただ、これは日本人が経営者の場合で、中国系などのお店は考え方やマッサージ手技も全然違うので、もっとゆるいのではないかと思います。
実際、中国系のお店でバリバリやっていた人も、日系のお店ではスタイルが違うからとトレーニングし直されていました。施術にタイマッサージを組み合わせるセラピストもいますが、それは技術がしっかりしていれば喜ばれます。
(余談ですが、私も中国系の人がよくやるような慌ただしい感じの早く手を動かす手技よりも、ゆっくり深く圧を入れてもらう方が好きです)
お店によって客層も全然違う!
私が色々見てきてすごく思ったのは、お店の立地や経営者の方針で客層が全く違います。
もちろんセラピストとお客さんの相性もあるので人によって客層が分かれることもありますが、リラクゼーションやおしゃべりが目的の人が多いお店、ガッツリ強めな圧を求める人ばかり来る店、治療を目的にアドバイスを欲しがる人が来るようなお店など、客層の傾向です。
私は両極端にリラクゼーションが多いお店と強い圧や治療を求めらるお店の両方を掛け持ちしていたことがあるので、お店によってちょっとマッサージや接客の仕方を変えていました。それぞれ基本的に求められる技術やサービスが違うからです。
それに、安いお店なら技術がイマイチでも許してくれても、それなりの値段ならクレームも入ります。なので、どんなお店が自分に合っているのか、相性も大切ですね。
日系のお店について
私の見た感じですが、日本人系列のお店はいつもスタッフを募集している反面、中国系やタイ系はスタッフには困らないほど溢れているような雰囲気があります。
理由としては、日本人のお店だとそれなりにレベル高いのサービスを提供することを目指すので、サービスはしっかりしているものの、人の確保が難しいからではないかと私は分析してます。
それに、特に日本で仕事をしていた人がオーストラリアに来た場合、日本人同士がいちばん信用できて一緒に働きやすいというのを感じる人も多いみたいです。ただ、中にはオーストラリアなのに日本的ルールが存在するお店もあって (始業30分前には通勤とか)、しんどい人はしんどいかもしれません。
とは言え、10時オープンなのに10時ちょっと過ぎに出勤するような緩いところもあったので、そこはオーナーさんの方針によります。
あと、「日本人」を謳うとお客さんからある程度信用してもらえるというメリットもあるようです。
資格を取りたいなら
ここからは、オーストラリアの代替医療であるリメディアルマッサージ (Remedial Massage) の資格を取りたいと思っている人に向けて書くので、興味がない人は飛ばしてください。
オーストラリアで資格を取ればアソシエーションに入会する資格がもらえて、そうすれば特定の保険に入っているクライアントさんに自分のした施術で保険を適応させることができます。この保険が発行できないと嫌がるお客さんは多いので、オーストラリアでマッサージの仕事を続けるなら長く続ける予定なら絶対にあった方が良いです。
アソシエーションは、年会費に加えてプロフェッショナルとして常に勉強しながら更新していかないといけないので、施術に対する向上心や興味があまりない人はきついかもしれませんが。
インターナショナルの生徒でもオーストラリアの技術を日本に持って帰るのが目的で学ぶ人もいますし、数年前までマッサージで永住権に繋がる可能性があったので、学校に生徒が溢れかえっていた時期もあります。(現在は変更されています)
基本的にいわゆるローカルのお店の募集では、オーストラリアのディプロマ保持者で、ABNを取得しアソシエーションに入っているというのが最低条件のところがほとんどです。(ビューティは別)
※ ABN (Australian Business Number) は、個人事業をするなら必ず取得しないといけないビジネス番号。
つまり、オーストラリアのマッサージセラピストは、お店で働いていても場所を借りているだけで、個人経営者ということになります。
どの学校が良い?
マッサージの資格は Certificate IV から始まって、Diploma まで1年半〜2年 (現在はもっと長くなったかもしれません)、みっちり実技もやります。
私はTAFE (政府が運営する職業訓練専門学校) に行きましたが、ちょうど同じ職場の子数人が私立の有名マッサージ校に通っていたので比較する事が出来ました。
結論から言えば、TAFEの方が厳しいですね。とても。
これは私立だと試験にパス出来なかったり挫折したりする人が出ると評判が落ちてしまうので、生徒はわりとお客さん扱いだからです。
公立のTAFEはやる気のない生徒はバンバン試験に落とされていて、私が通っていた2014年当時、何度も試験に落ちてこれは2度目、3度目の受講というクラスメイトが数人いました。あの頃のニューサウスウェルズ州は、市民や永住者はとても安く通えたというのもあるのでしょうが。
だからと言って私立が簡単かと言えばそうではないですけど、TAFEに比べたら海外から来た留学生にものすごく優しいと思います。
今は変わっているかもしれませんが、筋肉の名前や機能などは半年以内で宙で言えるのは当たり前 (じゃないと試験に受からない)、オンラインテストは一発合格が基本。勉強する内容も病理学などめちゃくちゃ細かくやるし、教えてもらってない所がテストに出る、などなど。
セラピスト必須のファーストエイドの授業も私立は業者が学校に来てくれるそうですが、TAFEは自分で最寄りのクラスを予約して個別に行きした。
食いついて来ない生徒は放置、生徒側から聞かないと当たり前に知っていると思われて説明してくれないなど、最初はびっくりしましたが、とりあえず私はTAFEで泣きながら勉強して良かったです。お陰で解剖学が好きになりました。
入学当初は大勢いた中国人も半年経ったら2人になってましたけどね。そして2度目、3度目の受講と言ってた人たちは、また落ちましたけどね…。
あと、ズルして資格が取れるみたいなビジネスやってるところもあるみたいですが、私は全くおすすめしません。せっかく資格を取るならちゃんと勉強しておいた方が絶対に良いですし。
日本で理学療法士やあん摩マッサージ指圧師などの仕事に関わってた人たちがオーストラリアでマッサージ職に就いたり、リメディアルマッサージの資格等を取得しようと学校に行く人は多いです。でも、解剖学の知識はしっかりあるのに英語では筋肉や骨の[…]
おわりに
私が数年かけて色々見て来たオーストラリアのマッサージ業界について、ワーキングホリデーの人たちの視点から書いてみました。
あくまでも私が見て感じて来たことなので、かなり細かくは書きましたが時期や場所でも全く違うかもしれないので「参考程度になれば良いな」くらいの気持ちで書いています。
良い仕事が見つかって良い縁に恵まれると良いですね。