基本的に、オーストラリアにはチップの習慣はありません。
いえ、正確に言うと「アメリカやカナダのようなチップの習慣がない」というだけで、全くないとは言えないのが実際のところ。
ただ、これは人によっても州によっても感覚が違い、オーストラリア人の間でもチップの問題は賛否両論のようなので、当然在豪日本人の間でも「ある」と「ない」で物議を醸し出しがちです。
オーストラリアには原則、チップの習慣はない。基本的に日本と同じようにしていて問題はない。ただし、一部例外もある。まずは高級レストランで食事をした場合。この場合は会計時に10%〜15%チップを置くのが普通だ。(中略) もちろんレストランでの食事が期待ほどおいしくなかったり、サービスに不満があったりした場合は、チップを支払う必要はない。
『地球の歩き方』2019〜20年版より
では、現状はどんな感じなのか、自分の経験や周りのオーストラリア人、ツイッターの意見などを参考にして検証していきます。
チップは何のためにあるのか
チップと言えば、アメリカのようなチップ必須の国を思い浮かべる人が多いと思います。
アメリカの場合、ウエイター・ウエイトレスの給料設定がもともとチップをもらえる前提で低く設置されているので、チップは必須でしょう。チップを払わないと追いかけてくるという話も聞きますが、それはそうでしょう。
それに対してオーストラリアのウエイター・ウエイトレスの給料はチップがないと困るほど低くはありません。(最低賃金を下回る違法レストランも実は多いですが、それは違法なのでまた別の話)
だから、別に払わなければ払わないで大丈夫ですし、文句は言われないはずです。
ただ、シドニーやメルボルン辺りでは少額でもチップを払うオーストラリア人が多い印象で、全てカード払いで済ませるのにチップのために小銭をわざわざ持ち歩いているという人もいます。
場所や層によってはチップを払うのがマナーという認識の人もいるのは、知っておいた方が良いかもしれません。
チップをあげたければあげれば良いし、あげたくなければあげなくても良いですが、ただし高級レストランではチップを置かないとヒンシュクを買うかもしれません。でも、サービスや料理が悪かったらチップをあげる必要はないです。そして、カジュアルでもちょっとした小銭を置いてあげると喜ばれるよ、という感じ。
よっぽどサービスが良かった時だけとか、ありがとうと思った時だけという人もいましたが、それで良いと思います。
ツイッターで分かった認識の違い
私自身は自分の飲食店勤務経験や、私の周りの人の対応からチップを渡すのはある程度はマナーであげるのが当たり前という認識でいたのですが、ツイッターを見ていたらそうでもない事を知りました。
きっかけはある日本人のツイート。
という趣旨だったのですが、確かに私もお客さんに聞こえるようにそんなことを言うのはどうかと思いますが、でもそもそもなぜ彼がチップを払わなかったのか不思議に思いました。
しかしながら、オーストラリア人はチップを置いていく人が多い中、日本人はそもそもチップという発想がない人が多いのも知っているので「口に出さないだけで思っている人は結構いるはずなので、少額でもチップを置いた方が良いですよ」とコメントしたんです。
そしたらプライドを傷つけてしまったのか、本人から即ブロックされてしまったのですが、そこからオーストラリア各地から色んな意見が来ました。
まあ、予想通りチップの習慣はないと思っている日本人は多く、「チップ文化はある」という人たちは、シドニーやメルボルンで飲食経験がある人やパートナーがオーストラリア人の人が多かったです。
とりあえず「初めて聞いた」「私はしない」「する必要はない」「したくない」という意見と「普通にある」「した方が良い」「マナーである」「ガイドブックは信じない方が良い」など、意見が分かれました。
※ 2020年にもう一度オーストラリアのチップについて調べたところ、払う人が増えているので払った方が良いという記事が複数上位に来ていたので、最近は「ある派」が多いのかも?
- チップの習慣はないと思っている日本人は多いし、「ある」という人を否定しがち
- 飲食業経験者はチップを日常的にもらう経験をしているので、自分がお客さんになった時もチップを払う人が多い傾向
- パートナーがオーストラリア人という人も、チップを置くのが普通という人が多い印象
- チップを払いたくないと渋るオーストラリア人もいるらしい
- チップを払うという認識自体を持ってないオーストラリア人も存在するらしい
- シドニーとメルボルンではほとんどのオージーがチップを置いていくという証言が多数
- チップというとアメリカのように大金を払わないといけないと思っている人もいる
- パースでオージー多めの飲食を掛け持ちしている人によると、チップを置くオージーは10人に1人くらい
- パースでチップを置いていくのは東から来た人が多い
- ブリスベンはチップはあまり浸透してないのかも?
- 日本人はチップを払わないという認識は、やっぱり私の周りだけではなかった
- チップ文化があると認めたくない人も多数いるみたいだった
興味深いのは、パースではあまりチップを払う文化がないという事。ブリスベンも、もしかしたら南側ほどチップを置く人が少ないのかもしれませんが、クイーンズランド州の飲食店経験者の意見はほぼ聞けなかったのでイマイチ不透明。でも、払う人は払うようですけど。
とりあえず地域差や層によってかなり個人の認識が違うようですね。
どうやらチップを払う習慣は、2000年のシドニーオリンピックを機にアメリカ人観光客から始まって、シドニーやメルボルン周辺で定着し始めたそうですから、主にシドニー・メルボルン周辺という事かもしれませんね。
常識は多数決
もうひとつ分かったのは、「は?チップはマナーに決まってるでしょ?何言ってるの?」という人も一定数いるという事です。実は私もそれまでそう思ってたひとりです。
というのも、シドニーで日系のカジュアルなレストランで働いていた時、オーストラリア人はチップをくれる人が多かったですし、うちのパートナーや親戚、同僚たちも「チップいくらにする?」とチップを払う事前提で話しているからです。だからてっきりそれが普通なのだと思ってましたが。(と言ってもいつもではないですし、お店の形態にもよりますけどね)
まあ常識というのは自分の周りの人から学ぶものであり多数決なので、ない人の中ではないし、ある人の中ではあるんでしょう。
こういう曖昧でややこしいところも、オーストラリアらしいといえばオーストラリアらしいと言えるかもしれませんね。
いくらぐらいが妥当?
あるシドニー在住の女性は20年前からずっと10%〜15%のチップを払っていると言ってましたが、私個人の感覚としてはちょっと多い気もします。
もちろんお店にもよるのですが、カジュアルなレストランなら気持ち程度の小銭で十分かと。
誰かが書いてましたが、$73.90 だったら $75 くらいか、すごく良かったら$80 くらい。そう、その程度ですよ。あと「お釣りは良いよ」と言ってそれをチップとする人もいます。
「ええ⁉︎ それは逆に失礼じゃないの?」とクイーンズランド州の人に言われましたが、そんな事ないです。チップがある派の「チップ」は、こういう少額のお金を差している人が圧倒的多数だと思いますよ。
チップの払い方
テーブルでお会計する場合は、お会計金額にプラスしてチップを置いて帰るか、カードの支払い場合はレシートに「Tip」と書いてる欄にチップの金額を書くか、店員さんに多めにチャージしてもらうように伝えます。
お釣りをチップとするなら、お釣りを渡された時に
お釣りはどうぞ。
と言えば良いです。
もしくは、カジュアルなお店ならレジ横などにチップの入れ物が置いてあるので、自分でチャリーンと入れるスタイルも。
その他のシーン
ホテルやタクシーの運転手にチップを払うのか?という問題ですが、うちのオーストラリア人パートナーは特に渡してませんね。でも、ポーターやハウスキーパーに$2〜$5程度渡す人もいるようです。
こちらもレストランと同じで、サービスが良かったら気持ち程度に置く程度で良いかと思います。美容院も特に払いません。
私はなぜチップをあげるのか?
オーストラリアのウエイター・ウエイトレスは違法飲食店でなければ基本給も高いし外食の値段自体が高いのに、なぜ更にあげる必要があるの?と言ってた人がいましたが、オーストラリアにおいてはそういう意味のチップではない気がします。
超高級店になるとチップがお給料の額を上回るという話も聞きますが、普通はそんなに大した金額にはならないでしょうし、別に店員さんはチップを期待して働いているわけではないです。
ただ相手も人間ですから、少額でもやっぱりもらうと嬉しいわけで、お客さん側の「ありがとう、ご苦労さま」気持ちかと。
オーストラリアは接客の当たり外れがわりと激しい気がするので、良いスタッフに当たると普通に嬉しいですし、私はただお互い気持ちよく利用したいからというのが大きいですかね。
たまに日本人の私がチップをあげると予想外みたいな顔をされる事もありますが、その後だいたい笑顔で「Thank you!」と言われて気持ち良いです。
ちなみに、私の環境がわりと裕福だからチップを置く余裕があるのではないか?と思う人がいるかもしれませんが、カツカツだった時代も同じようにしてました。
おわりに
今回ツイッターでチップ文化はあると言ったら賛同してくれる人もいた反面、知らない人から色々怒られましたが、まあ、チップの話題は絶対に反対意見が出てくるのは知ってました。
とりあえず「ない」とか「ある」とか言い切らない方が良さそうですね。
私が飲食店で働いていた時、たまにチップをくれる日本人に会うと「この人オーストラリアに慣れてるなあ」という印象を持っていたくらいなので、日本人は払う人はそんなに多くないですが、オーストラリア人は多い、それだけです。
なので、自分の匙加減で対応してください。