ロングセラー絵本作家 Mem Fox

ロングセラー絵本作家 Mem Fox

以前 “ポッサムマジック” の絵本からデザインされた記念コインの記事を書いたのですが、色々調べて行くうちにすごく興味を持ちました。
とても感銘を受けたので、その絵本と著者についてもう少し詳しく書いてみようと思います。

その元となったポッサムマジック記念コインの記事はこちらです。
ポッサムマジックとオリンピックの記念コイン

オーストラリアが詰まったベストセラー絵本

ポッサムマジック(Possum Magic)、著者はメム・フォックス(Mem Fox)という人です。

この彼女の最初の作品は1983年に刊行されてから、国際的ベストセラーとして30年以上経った今でも子供たちに読み継がれている絵本なんです。
日本では「ポスおばあちゃんのまほう」という邦題で刊行されてます。

この絵本、オーストラリアの動物、オーストラリアの都市、オーストラリアの食べ物とオーストラリア三昧なんです。

動物 : ポッサム、ウォンバット、クカバラ、ディンゴ、エミュー、コアラ、カンガルー

食べ物 : アンザックビスケット、ミンティ、ステーキとサラダ、モルネー、パンプキンスコーン、ベジマイトサンドウィッチ、パブロヴァ、ラミントン

都市 : アデレード、メルボルン、シドニー、ブリスベン、ダーウィン、パース、タスマニア

これらが全部この絵本に出てきます。全部分かる人はオーストラリア通かも(^^)

著者の本に対する想い

ちょうどこの絵本を調べている時に、この絵本の著者メム ・フォックスさんのブログを見つけました。
そのブログに載っていた彼女のインタビュー動画がすごく良かったので、少しだけ紹介したいと思います。
動画は30分程度の英語で字幕もありませんが、彼女はアデレード大学で言語教育に携わっているだけあって、はっきりしゃべってくれる聞き取りやすい英語だと思います(^ ^)

http://memfox.com/whats-up/spring-magic-turns-book-into-coins/

動画前半はサウスオーストラリア州のPremier’s Reading Challengeについて話してます。
子供たちの読み書き能力促進の為に行われてるプログラムで、決まった期間に12冊以上の本を読むというチャレンジのようです。

印象的なのは、その中でメムが子供たちに向けて言ってる事。

「もし今読んでいる本が好きではなかったら、読むのをやめなさい。それはあなたにとって合ってない本だったのよ。合わない本を無理して読んでも本が嫌いになるだけ。もしあなたにぴったり本が見つかったら読む事が大好きになるはずよ。」

「私も息子も旦那も全く読むジャンルが違うけど、それで良いのよ。大切なのは、自分が何が好きなのかを見つける事。」

この考え方、ちょっとオージーっぽくて好きです。
これ意外と不得意な日本人が多いと思うんですよ。
日本人って、出来ない所にフォーカスする傾向があるでしょう?
面白くなくても頑張って全部読むのがえらい、みたい思ったりとか。

アジア人の傾向らしいんですが、基本的に不得意な事があればそれを克服する為に努力するべきという考え方をするじゃないですか。
逆にオーストラリアやアメリカ、ヨーロッパなどの国は不得意な事にこだわるよりも、どちらかと言うと得意な事を更に伸ばそうとする傾向があるようです。

良し悪しは別として、だからアジア人は全体的に平均点が高い代わりに飛び抜けて出来る人が出にくく、ヨーロピアンなどは得意な事はすごく出来るけど、不得意な事はすごく苦手で個人差も激しいようです。

私世代(昭和)の日本人は小さい頃から “努力・根性” と言われて来た人が多いんですよね。
だから多くの人が勉強や仕事は “嫌だけど頑張って乗り越えなければいけないもの、やらされるもの” というイメージがついてしまっているんです。
大人になった今だから分かるんですが、それってすごくもったいない事です。
だから、楽しいはずの読者が嫌いになってはもったいないというメムの言葉にすごく共感しました。

それから「自分は何が好きなのかを見つける」。

人間って嫌いな事を我慢してやり過ぎると、だんだん自分は何が好きで何が楽しいのかとか分からなくなってしまうものなんですよ。
みんなが読んでるから、読まないといけないから、という理由で読んでたら、きっと心からは楽しんでないかもしれないですよね。
意外とこれ、人によっては難しい事なのかもしれませんよ。

そして面白かったのがメムの生い立ちです。
彼女はメルボルン生まれですが、両親の都合で子供時代をアフリカで過ごしています。
アフリカでオーストラリアに触れながら育ちました。

父親は故郷を懐かしみガムツリーを育て、母親はオーストラリアの歌を歌い、オーストラリアのお菓子アンザッククッキーやラミントンを作ってくれ…。
自身もオーストラリアの本を読みながら、オーストラリアってどんなに素敵なところなんだろう…と憧れをつのらせながら育ちました。
そして22歳までオーストラリアの地を踏んだ事がなかったメム、実際来てみたら想像通り素晴らしかった!と感激したそうです。

「あなたもオーストラリアが好きかもしれないけど、誰も私の好きにはかなわないわよ!」
もう体全体からオーストラリア大好き!! というオーラが出てるんですよね。
ああ、だからあんな風に人の心をつかむような絵本を作れるんだな、とちょっと納得しました。

ちなみに彼女が少女時代よく読んでいたというお気に入りの本、Mary Grant Bruce著のBillabong book。
オーストラリアの子供向け小説として一番有名な本、とメムは言ってますね。
1920年代に刊行されたビクトリア州のビラボン駅を舞台にした “ビラボンシリーズ” は、海外でも人気だったようです。
日本語で書かれたサイトが全く出てこなかったので、日本ではあまり有名ではないのかもしれません。まあ古い本ですしね。
(彼女の本はオーストラリアのiTunesで数冊読む事が出来ます。)
http://www.marygrantbruce.com.au/

他の作品

動画後半では他の絵本の紹介などもしています。
“I’m Australian too”


「読む時はゆっくり読まずにヒップホップのラップみたいにノリよくね!」
動画の中でメム自身がこの絵本を読んでくれます。

オーストラリアは肌の色や宗教や文化の違う人たちが一緒に住む多文化な国。世界で一番幸せに住める国なのよ!という想いが込められていて、彼女の話に私ちょっと感動してしまいました。
(白豪主義や差別もまだ存在はしているみたいですけどね。)

「絵本の半分を作ったのは私。あと半分はイラストレーターが作ったの。この絵本のイラストレーターはインディアン系のオーストラリア人だけど、だから選ばれたんじゃなくて彼に素晴らしい才能があるから選ばれたの。それは喜ばしい事だわ。」

「私は今まで、ただの一度もイラストレーターにどうして欲しいか指示を出した事がないのよ。だって彼らはアーティストで才能があるんだから。私は絵を描けないから絵の事は彼らに任せて、指示は一切出さないの。」

他にも “Koala Lou” の絵本に制作にまつわる話、

一見単純なようでいて実は言葉を探すのに11ヶ月も費やした “Where is the Green Sheep” の話、などなど。

どれも面白い。
英語ですがYoutubeを検索すると色んな絵本の読み聞かせが出てきますので、興味があれば検索してみてください。

あと英語の勉強、特に初心者の人は絵本で勉強するのはすごくおすすめですよ。
字が少なくて絵が多い子供の本、これが意外と勉強になったりするんです。
何より楽しく身につくと思います。

メムは繰り返し「読む事は重要じゃない。しなければならないものではない。読書は楽しむもの、素晴らしいもの。」と言っています。
英語も勉強になると辛いけど、楽しい事の為なら苦にならないものですよ。

ちなみにこのメム・フォックスさんは大人向けにも何冊か本を書いています。

ひとつ紹介すると、高校生や大学生向けに書かれた正式な文章の書き方の本、“English Essential”。(オーストラリアのiTunesでも売ってます。)
冒頭のインストラクションでは「こういう本はだいたい退屈なものだけど、この本はそうではない事を願って」と始まります。
私もまだ全部読んでないんですけど、面白く読めそうです。
英語の学校に行くのも良いけれど、絵本やこういう本を読んでみるのも良いと思いますよ♪