シドニーのロックス (The Rocks) は、19世紀の建物が多く残っている人気観光地。
そんな歴史を感じるお店が並ぶジョージストリートには、1882年に建設された昔の警察署が残っていて、現在はサージェントロック (Sergeant Lok) というアジアンレストランとして使用されています。
このレストラン、まだオープンして1年くらいだそうですが、ユニークなのはかつて囚人が入れられていた独房がそのまま個室の食事スペースになっているという事!
私、ロックスが大好きで数え切れないほど行っているのですが、この建物の存在自体つい最近まで全然気付いてませんでした。
昔の様子が色濃く残るレストラン
その元警察署の建物は、この時代の建造物によく使われているサンドストーンのせいか、古い町並みのロックスによくなじんでいてあまり目立ちません。
私がこの建物の存在に気付いたのは、パートナーのお義母さんとロックスを一緒に歩いていた時、彼女が教えてくれたからです。
そして、それがその建物です。
なるほど、確かによく見ると、建物の上の方にポリスステーション (警察署) と書かれています。
「へー、今はチャイニーズレストランになってるんだねー」と2人で看板のメニューを見ていたら、中からお店の人が出て来て声を掛けられたので、お義母さんが「昔は奥に独房があって…」と説明。
そうしたら今もあるとの事で、しかも「中に入って見ても良いよ」と言われました。
え、ラッキー!
という事で、お言葉に甘えて中を見せてもらいました。
独房だった場所が個室の食事スペースに
お店の奥は、本当に独房がそのままレストランになっていました!
思わずお店に人に写真を撮っても良いか聞いたら快諾してくれ、「一緒に写真を撮りましょうか?」なんてすごく親切にしていただきました。(それは丁重にお断りしたのですが)
独房は個別の食事スペースになっていて、とてもインパクトがあります。これは面白いですね。
こっちの部屋はもう少し広くて2テーブルあったでしょうか。
お店自体がそんなに広くはないのですが2階もあって、部屋からはジョージストリートや現代美術館 (MCA) が見えるようです。
重いドアには囚人が食事を受け取るドアまで残っていて、それもわざわざ開けて見せてくれました。
私たちはすでにランチを済ませたばかりだったので食事は出来ませんでしたが、お義母さんは私のパートナー (つまり彼女の息子) がメルボルンの同僚やお客さんを連れて来れば喜ぶから教えなきゃ!と。(お店の人への宣伝しておきますアッピールもあったのだと思います)
パートナーがお客さんを元独房に連れて来る様子を想像するとちょっと微妙な感じもしなくはないですが、私も1度は絶対に来たいし、ぜひツイッターやブログで紹介したいと思いました。
でも本当に、ちょっと変わっててここ良くないですか?
手前はこぎれいなスペースになっていて、こちらも素敵です。
個室が狭苦しいなら、この外席も良いかも。
全然関係ないですが、ふと見ると外席に昔の日本のコントに出て来そうなヤカンが置いてあって、微妙に気になりました (笑)
ちょっと変わったモダンアジアンレストラン
植民地時代ごく初期の様子が色濃く残されている建物なので、やっぱりメニューはヨーロッパ風なのかと思いきや、このレストランはモダンアジアンバー & ダイニングのお店です。
そして、この店の名前 Sergeant Lok (ロック軍曹) は、かつてここに駐屯していた警官の名前でもあり、60年代から70年代に汚職が蔓延していた香港で裏社会と繋がっていたルイ・ロック (Lui Lok) にも由来するとも。
実はほとんど知られてませんが、このエリアはオーストラリアで初めてのチャイナタウンが出来た場所でもあったそうで、中国人はこの警察署とも関わりがあり、中華料理は植民地の開拓者に大きな影響を与えています。
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という事で、この店ではかつて彼らがシドニーに新しい味をもたらしたように、従来のアジア料理の型を破ったユニークなメニューが色々と提供されています。
例えば Spicy Miso Rice Cake なんて結構なお値段ですが、一体どんなものが出て来るのでしょうか。
ここのオリジナルカクテルも面白くて、この建物を設計したジェームズ・バーネッドにちなんだバーボンベースの Barnet 1882 や、酔っぱらいを収容するために使用された独房の1つにちなんで名付けられたラムベースの Electoral Room、この警察署の呼び名だった The New No. 4、囚人にちなんだ The 12 Convicts など色々気になるものがたくさんです!
とは言えカクテルは決して安くはないですが、オーストラリアやヨーロッパのワインなども色々揃っているようですよ。
そして実はこの建物、オーストラリアでいちばん最初の病院があった場所でもあります。
そして、シドニー最初の病院跡地だった
この場所にあった最初の病院は、病院といっても、“Sick Tent” と呼ばれたテントでした。
1788年にイギリスの第一艦隊がシドニーコーブに着いた時 (つまり現在のオーストラリアデイの日)、過酷な長い船旅で病気になった人たちを治療するために設置されたものです。
1790年には第二艦隊が運んできた機材のお陰でテントよりは少しマシな建物にはなったものの、プレバブの簡素なものでした。
その状況を見たニューサウスウェルズ植民地総督に就任したばかりだったラクラン・マッコーリ (Lachlan Macquarie) は、新しくつくったマッコーリストリートに病院を建設。1816年、そこへ移動させました。
なので、この場所に病院があったのは、1788年から1816年までです。
ちなみに移動されたマッコーリストリートの病院は、現在 “旧造幣局 (The Mint)” として今も使用されているので、興味がある人はそちらも行ってみると良いかもしれませんね。
旧造幣局のインフォメーションは、他では読めないほど詳しく別記事に書いていますので、知りたい人はそちらで。
とにかく、Sergeant Lok はそんな場所にあるレストランです。
おわりに
今では考えられませんが、この警察署が建てられた頃のロックスは労働者階級が住む地域であり治安が悪く、貧困、アルコール依存症、暴力などが多発していたそうで、当時の警察官は大変だったようですよ。
ロックスでは、そんな歴史を感じる建物やツアーはたくさんありますが、このレストランもそのひとつとして楽しむのに最適な場所ではないでしょうか。
植民地時代最初の町ロックスで、最初の病院跡地の古い警察署にある独房跡で食事なんて、面白い体験だと思います!
レストランのまとめはこちらから
→ シドニーとニューサウスウェールズ州のカフェ・レストラン・パブ一覧