シドニー郊外にあるボタニー (Botany) には、知られざるオーストラリアの歴史が詰まっています。
1770年4月にキャプテン・クックと航海した植物学者ジョセフ・バンクスの由来の地というのもあるのですが、実は19世紀のボタニーは人気のレジャー施設として人気で、オーストラリア最初の動物園まであった場所ということを、知っている人は多くないでしょう。
その面影を感じられるのが『Sir ジョセフ・バンクスパーク (Sir Joseph Banks Park)』という、ヨーロッパ人入植200周年の1887年にボタニーベイカウンシル (現在はベイサイドカウンシルに合併) と地元の企業の寄付により作られた公園です。
広い敷地には大きな池があり、歴史的モニュメントや子供が遊べるプレイグラウンド、フェンス付きのドッグパーク、バーベキューエリアなどがあります。
シドニー空港も近いので、タイミングによっては飛行機が至近距離で見れるかもしれませんよ!
ここに驚いた!
- ジョセフ・バンクス由来の地 (1770年)
- オーストラリア初の動物園があった場所 (1850年周辺)
- 人気のレジャー施設があった (19世紀)
- オーストラリア初のラグビーリーグがあった場所 (1908年)
- セント・パトリックスデーのイベントもここで開催されていた (1880年代)
Sir ジョセフ・バンクスパークの入り口と見どころ
『Sir ジョセフ・バンクスパーク (Sir Joseph Banks Park)』は、細長い公園なので、入り口が複数あります。
その中でもおすすめなのが、ちょっとボタニー中心部から離れていますが Fremlin Street か Waratah Road、もしくは Tupia Street から入るのがおすすめです。
309のバスで行った場合、Botany Road at Tupia St で降りてください。
ちなみに公園内には売店などはないので、飲み物や食べ物を買うならボタニー中心部かこの周辺で買ってくださいね。テイクアウェイして公園内でピクニックするのも良いですね。
Fremlin Street から
いちばん西側の Fremlin Street から入ると、公園の西側、プレジャーガーデンのコンクリートで出来た動物がある場所に着きます。
プレジャーガーデン (Pleasure Gardens) の動物園は、1940年〜1950年代にここにあったオーストラリア最初の動物園を再現したものです。
プレジャーガーデンの動物園
1846年に Sir ジョセフ・バンクスホテルと周辺の土地を借りたウイリアム・バーモント (William Beaumont) は、この場所に動物園や美しく整備された公園などを作りました。
そして、1850年までには人気のレジャー施設として知られるようになっていたそうです。
当時、この場所にはインドソウやベンガルタイガー、ツキノワグマ、グリズリー、アカシカなど、エキゾチックな動物がたくさんいたとのこと。
ボタニーは昔も交通の便がよくなかったそうですが、それでも珍しい動物がいるなら、確かに見に行きたいと思ってしまいますよね。
お手洗いもここに
そして、この近くには大きな池やプレイグラウンド、バーベキューエリアなどもあります。
魚や水鳥が生息する池
公園には魚や水鳥、カメなどが生息している大きな池がいくつかあります。
ウナギもいるらしいですよ
向こうの方にアイビスが集まっても待っているのが分かりますか?
近くで見るとこんな感じ。
水鳥たちが歩いている姿はかわいくて、思わずほっこりしてしまいますね。
ここに生息する水鳥
犬は特定の場所以外はリード必須
標識も
バーベキュー台のある休憩所を過ぎると、プレイグラウンドです。
プレイグラウンド
丘の斜面を利用したプレイグラウンドはまあまあの大きさ。いつも子供たちが楽しそうに遊んでいます。
色んな遊具がありますよ!
こういうロープを伝って移動するスライダー (?) のようなものも。
2023年春には新しいプレイグラウンドも出来るとのことだったので、おそらくもう解禁になっているのではないかと思います。
これ、椅子にしてる人がいましたが、アートですよ (汗)
Warata Road から
そして私のおすすめは、Fremlin Street の一本手前、Warata Road から公園に入るルート。
この道はボタニーロード沿いにある Sir ジョセフ・バンクスホテルから脇に入れば良いので分かりやすいですし、奥には現在はアパートになっているオリジナルの古い Sir ジョセフ・バンクスホテルも見ることが出来ます。
なので、もし歴史に興味がある人なら、このルートがいちばんスムーズです。
『Sir ジョセフ・バンクスホテル (Sir Joseph Banks Hotel)』は、シドニー郊外のボタニーの大通りにあるホテルです。1920年代にオリジナルのホテルから現在の位置にライセンスが移されて以来、ビストロ、ビアガーデ[…]
Sir ジョセフ・バンクスホテル
Waratah Road を入っていくと、23 Anniversary Street に昔『Sir ジョセフ・バンクスホテル』だった建物が現れます。
1840年代に建てられたこのホテルはボタニーで最も古い建物で、1999年にニューサウスウェールズ州の遺産に登録されている歴史ある建物です。新しい『Sir ジョセフ・バンクスホテル』が出来てからは長年空き家になっていましたが、2000年にアパート改装されています。
1844年のオープン当時は『Banks Inn』という名前で営業されていて、先ほどの動物園もこのホテルの敷地内にありましたし、このホテルを中心に大きなスポーツイベントなどが開催されていました。
その歴史については後でも説明しますが、詳しく別記事にもまとめています。
そして、更にまっすぐ進んでいくと、Sir ジョセフ・バンクスパークの入り口に辿り着きます。
フラッグテラス
この入り口付近にある場所は、フラッグテラス (Flag Terrace) という、19世紀ごろの様子を再現した場所です。
ここから向かって左側に行くと、動物園の面影を残すプレジャーガーデンやプレイグラウンド、右側はバンクスに由来するモザイクなどがあります。
ちょっと汚れていて見にくいですが、上の写真がそのことを書いた説明の看板と地図はこちら。順番に説明しますね。
ランニングトラック
かつてのランニングトラックを再現したこの場所は、1884年に Sir Joseph Banks Handicap というランニングレースが開催されたことを皮切りに、その後数年間一流アスリートたちが集う場所でした。また、この場ほは1908年3月21日にオーストラリア初のラグビーリーグが開催された場所でもあります。
この公園が完成した1988年には、1930年代で止まってしまっていた Botany Bay Gift というランニングレースを再開し、2001年まで続けられました。
そして、そんなランニングトラックの傍に建っているのが、ジョセフ・バンクス像です。
ジョセフ・バンクス像
オーストラリア固有植物バンクシアの名前の由来となったジョセフ・バンクスの像は、バンクシアの木の下に建っています。
©️ Victor Cusack
ジョセフ・バンクス (1743年〜1820年) は、1770年にジェームス・クックの最初の航海に同行し、当時未知の大陸とされていたオーストラリアの植物を採取してイギリスに紹介した植物学者です。
1768年にイギリス王から天体観測のためにタヒチへの遠征を依頼されたジェームス・クックの船エンデバー号は、オーストラリア大陸だけではなく、南米やタヒチ、ニュージーランドにも寄っています。
ボタニー湾には4月28日〜5月5日、クイーンズランド州のクックタウンには6月17日〜8月3日まで滞在しました。
また、ジョセフ・バンクスは政治家でもあり、「オーストラリアを流刑地に!」と強く勧めた人物でもあるため、植民地の父とも呼ばれています。…が、現在ではあまり知られていないような気がします。
バンクシアを調べているところ
足元にはアボリジナルの彫刻と、顔はバンクスがイギリス王立協会の会長 (President of the Royal Society)) だった頃ものだそう。
(参考: Joseph Banks | Victor Cusack)
作者 Victor Cusack氏のサイン
モザイク
そして、モザイク画。
ジョセフ・バンクスがジェームス・クックと航海し訪れた場所や、バンクスに同行した画家シドニー・パーキンソンがスケッチした植物の絵などが描かれています。
こんなものも。
Tupia Street から
Waratah Road のもう一本手前、Tupia Street から行くことも出来ます。ここには大きな駐車場があるので、車で行く人には便利かもしれませんね。
公園のルール
バーベキュー台のある休憩所、フェンスのあるドッグパークも近いです。
バーベキュー台
バスケットのゴールも
犬のオフリードエリア、ドッグパーク
このフェンス内は、犬のリードを外して走り回れるエリアです。公園内でよく犬を連れている人を見掛けますが、ここでも犬が走り回る姿をよく目にします。
ドッグパークのインフォメーション
さて、最後にもう一ヶ所だけおすすめの入り口を紹介して終わりますね。
Booralee Street から
最初に書いたように Sir ジョセフ・バンクスパークは細長いので、ボタニーの中心部からも行けなくはありません。
ちょっと静かな工業地帯を抜ける形になるので怖いと感じる人もいるかもしれませんが、行く前に中心部のカフェやレストランに寄れますし、公園東側は飛行機が間近で見れる確率が高いんです!
しばらく大きな Hale Street を歩き、ラウンドアバウトまで来たら Leland Street を左に曲がって、Booralee Street で右折します。
地図で見ると曲がらずにまっすぐ公園入り口に向かった方が良さそうに見えますが、実は途中で歩道がなくなるので、危なくて通れません。なので、一本手前の Booralee Street から入ります。
この階段を越えれば公園の東側です。
階段を上がって反対側を見たら、こんな感じ。
タイミングにもよりますが、公園から道路を挟んで反対側はポートボタニー・フォーショアとシドニー空港があるので、至近距離で飛行機が見れる可能性もあります。
プレジャーガーデンやプレイグラウンドがあるところからは少し遠いですが、のんびり散歩したり探検したりするには良いスタート地点かもしれませんね。
帰る時にこちら側を通るのもありですが、工業地帯は真っ暗になるので、明るいうちに通るのをお勧めします。(ここは One Drop や Slow Lane のブリュワリーも近いので、帰りに寄るのもありですねw)
公園東側は本当に飛行機が近くに見えます
朽た橋がありました
こんなのも
もしポートボタニー・フォーショアに行きたいなら、プレイグラウンドを超えたところに歩道橋があるので、そこから渡ります。
遠くに見えるのは、ポートボタニーにある大きな輸送会社です
ポートボタニー・フォーショアへ行く歩道橋
Forshore Road に架かる歩道橋 (Foreshore Road Pedestrian Bridge)。そこを渡ると、海沿いの公園ポートボタニー・フォーショア (Port Botany Foreshore) に着きます。
フォオーショアはプレジャーガーデン側とは全然雰囲気が違い、シドニー空港の真横にある海岸公園なので、飛行機の発着が間近で見れて圧巻ですよ!
今回は長くなってしまったので、フォーショアについては別記事へどうぞ。とても素敵なところですよ。
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おわりに
もともとジョセフ・バンクスの足跡を追ってリサーチしていて見つけた公園だったのですが、あまりにもたくさんの歴史があったので驚きました。
そして改めて、あまり多くの人に知られていないだけの名所があることを実感。地味といえば地味かもしれませんが、オーストラリアの本当の観光というのは、こんなものだと思うんです。
ボタニーはシドニー中心部からだと乗り換えが必要で、ちょっと面倒な場所にはありますが、歴史が好きな人は機会があればぜひ訪れてみてください。