オーストラリアで長く愛されている『ポッサムマジック(Possum Magic)』という絵本は、1983年に刊行されてから30年以上経った今でも国際的ベストセラーとして子供たちに読み継がれ、2017年8月には記念コインも作られました。
日本では『ポスおばあちゃんのまほう』という邦題がついているようですね。
この絵本には、様々なオーストラリアの動物、オーストラリアの都市、オーストラリアの食べ物とオーストラリアがぎっしり詰まっていて、とってもかわいいストーリーです。
ポッサムマジックってどんな絵本?
『ポッサムマジック』は、ポッサムのおばあちゃんと孫のハッシュの物語です。ポッサムというのは、オーストラリアに生息する動物ですね。
ポッサムのおばあちゃんは不思議な力を持っていて、ハッシュを森の危険から守ろうと透明になる魔法をかけます。ところが、おばあちゃんは元に戻す方法を忘れてしまい、ハッシュの姿はずっと透明のままです。が、ある時はっと「そうだ!何か人間の食べ物を食べると元に戻ったはずだ!」と思い出しました。でも、それが何の食べ物だったか思い出せず、2匹はオーストラリア中を回って色んな食べ物を試します。さて、ハッシュは無事に戻れるでしょうか?
オーストラリアがこれでもか!というほど詰まってる
この絵本にはオーストラリアの動物、食べ物、都市がたくさん出て来ます
食べ物: アンザックビスケット、ミンティ、ステーキとサラダ、パンプキンスコーン、ベジマイトサンドイッチ、パブロバ、ラミントン
都市: アデレード、メルボルン、シドニー、ブリスベン、ダーウィン、パース、タスマニア
全部分かりますか?
スイーツについては『これでばっちり!? オーストラリアのスイーツ辞典』にもちょっと書いています。
魅力的な著者 メム・フォックスさん
著者はメム・フォックス (Mem Fox) さんという女性で、ポッサムマジックは彼女の最初の作品です。
彼女はメルボルン生まれですが、両親の都合で子供時代をアフリカで過ごしました。
父親は故郷を懐かしむようにガムツリーを育て、母親はオーストラリアの歌を歌ったり、オーストラリアのお菓子アンザッククッキーやラミントンを作ってくれたり…。彼女自身もオーストラリアの本を読みながら、オーストラリアってどんなに素敵なところなんだろう…と憧れながら育ったそうです。
そして、22歳の時に初めて見たオーストラリアは、想像通り素晴らしかった!と感激したんだとか。
彼女のブログにインタビュー動画が載っていて、その事を話しているのでぜひ見てみてください。30分程度の英語で字幕もありませんが、子供向けにしゃべってますし、彼女はアデレード大学で言語教育に携わっているだけあって聞き取りやすいと思います。
「あなたもオーストラリアが好きかもしれないけど、誰も私の好きにはかなわないわよ!」
体全体からオーストラリア大好き‼︎というオーラが出ている彼女の話し方が、何とも魅力的です。
他の作品
彼女は他にもたくさんの人気絵本を世に出しています。
I’m Australian too
『I’m Australian too』
先に紹介した動画の中でメムさん自身がこの絵本を読んでくれていますが、読むコツは「ゆっくり読まずにヒップホップのラップみたいにノリ良く」だそうです。
絵本には色んなバックグラウンドを持つ子供たちが出て来て「オーストラリアは肌の色や宗教や文化の違う人たちが一緒に住む多文化な国で、差別も存在はしているものの、世界で一番幸せに住める国なのよ!」というメッセージが込められています。
この絵本のイラストレーターはインディアン系のオーストラリア人ですが、そのバックグラウンドから選ばれたのではなく、彼に素晴らしい才能があるから選ばれたのだ、絵本の半分を作ったのは彼だ、とメム さんは主張しています。
メムさんは、今まで一度もイラストレーターに細かい指示を出した事がないんだそうです。
「だって彼らはアーティストで才能があるんだから。私は絵を描けないから絵の事は彼らに任せて、指示は一切出さないの。」
なんだか、個人的にすごく良いなと思いました。
Koala Lou
『Koala Lou』
みんなに愛される丸くて柔らかいコアラのルウ。大好きなお母さんは1日に100回も「大好き」と言って来れていたのですが、他の兄弟たちが生まれてからお母さんは忙しくてそれを伝える暇がなくなってしまいます。ルウはもう一度「大好き」と言ってもらいたくて、ブッシュオリンピックで優勝しようと頑張りますが…。
こちらもオーストラリアの動物がたくさん出て来て、オーストラリアや母親の愛情、子供の健気さをたっぷりと感じるかわいい話。シンプルなストーリーなのに涙腺が緩みます。
Where is the Green Sheep?
『Where is the Green Sheep?』
色んな羊が出て来て、絵も話も面白いので絶対子供は好きだと思います。
一見単純なようでいて、言葉を探すのに実は11ヶ月も費やしたんだそうですよ。
これらの絵本は、Youtube でも色んな人が読み聞かせしてくれていますので、興味があればそちらも検索してみてください。絵本は英語初心者の勉強にもおすすめです。
心の残った言葉
最後に、私がメム・フォックスさんの印象に残った言葉を紹介します。
ちなみに彼女が少女時代よく読んでいたというオーストラリアの子供向け小説として一番有名な本らしい Mary Grant Bruce著の Billabong book は、1920年代に刊行されたビクトリア州のビラボン駅を舞台にした物語で、国外でも人気だったようです。
メム・フォックスさんは大人向けにも何冊か本を書いていて、高校生や大学生向けに書かれた正式な文章の書き方の本『English Essential』なども出しています。
冒頭では「こういう本はだいたい退屈なものだけど、この本はそうではない事を願って」と始まっていて、彼女らしい出だしだと思いました。
おわりに
何でしょうね、メム・フォックスさんの言葉や絵本はとても心に響きます。
大人になるにつれ忘れていっていた “楽しむ事“ をちょっと思い出したような気がしました。