近年、 “ブッシュタッカー (Bush tucker)” と呼ばれるオーストラリア原産の食べ物が注目を浴びています。
これらは栄養価が高く健康的でグルメな食材として、世界中の一流レストランでも使われるようになっているほど。
ブッシュタッカーはオーストラリアの動物・魚・虫・果物・野菜など食材全般を指すのですが、ではどんなものがあるのか見ていきましょう。
ブッシュタッカーについて
ブッシュタッカーはブッシュフードとも呼ばれる事もあり、オーストラリア大陸におよそ5万年前からオーストラリア原住民の人たちの間で伝統的に食べられて来た食材です。
伝統的な調理方法は色々ありますが、焚き火の上で焼いたり何時間もかけて蒸したりする事が多かったようで、ペーパーバーグ (Paperbark) というメルラーカ種 (いわゆるティーツリー) の樹皮は、食べ物を包むのに便利な木として知られています。
種子などを粉にしてパンを作る事もあり、これは後にスワッグマンと呼ばれる季節労働者たちの作るダンパーと呼ばれるパンの原型になりました。
注目を集め始めたのは70年代から
そんなブッシュタッカーですが、脚光を浴び始めたのは1970年代に入ってからでした。
西洋人がオーストラリア大陸に来た1788年、入植初期は深刻な食料不足もあり仕方なく食してはいたものの、故郷イギリスの味が好まれました。
19世紀の植物学者 J.D. Hooker はタスマニアの植物について書いた自身の著書で、ブッシュタッカーについて「食べられはするが、食べるに適していない」と述べていますし、同じく植物学者 Joseph Maiden も「この大陸には果物くらいしか食べられそうなものはない」とコメントしています。
しかし、70年代に植物学者によって書かれたブッシュフードに関する本が人気を博し、オーストラリア原産の食材は次々と商業化。80年代に入るとマカダミアナッツの小規模な商業用プランテーションが始まったり、南オーストラリア州では初めて食用にカンガルー肉が販売されたりしています。
テレビでは、アウトバックで生き残るサバイバルテレビシリーズやクッキングショーなどブッシュフードに関する人気番組が登場し、ブームに一躍買いました。
動画は当時の人気大テレビシリーズ『Bush Tucker Man』です。(長いです)
では次に具体的な食材を挙げていきます。
オーストラリアの動物
カンガルー (Kangaroo)
カンガルー肉はルーミートとも呼ばれ、スーパーマーケットでも簡単に手に入る人気食材。ビーフのような赤身肉の味には少しクセがあり、脂肪が少なくたんぱく質やミネラルなどの含有量が高いので、健康志向の人たちにも好まれています。
エミュー (Emu)
オーストラリア固有動物 飛べない巨大な鳥 エミューは、アボリジニの人たちの大切な食糧源であると同時に儀式や薬としても使われました。脂肪が少ない赤身で濃厚な味わい肉は、高温で素早く焼くのがポイント。
クロコダイル (Crocodile)
獰猛で危険なクロコダイルの肉は、白身のさっぱりした鶏肉のような味です。食用の肉は養殖で、通常ワシントン条約で捕獲が制限されています。
ワラビー (Wallaby)
カンガルーよりもひとまわり小さいワラビーは、カンガルー肉と同様脂肪が少なくヘルシーですが、味にクセがないので食べやすいかもしれません。
ポッサム (Possum)
オーストラリア各地で見掛けるポッサムは、食材としてはそんなに一般的ではないものの、タスマニアに行くとよく食べられているようです。
ゴアナ (Goanna)
ゴアナは全長1.6mにもなるオオトカゲ。白身肉は鶏肉のようで、ウワサではヘビよりもおいしいらしいですが、レストランでは流通していません。鋭い爪を持ち噛まれるとかなり痛いようなので注意。
オーストラリアの魚介類
オーストラリアに来たらシーフードというくらい人気の魚介類。
バラマンディ (Barramundi)
スズキの仲間で大きいものは全長2m に達するというバラマンディは、オーストラリアではよく食べられている魚。基本的に暖かい地域に生息しています。
モートンベイバグ (Morton Bay Bug)
赤褐色の甲殻を持つバグは別名ベイロブスターと呼ばれ、その名の通りロブスターにそっくりな食感で人気。主にQLD や NT に生息していて、120〜380gほど。
バルメインバグ (Balmain Bug)
味も見た目もモートンベイバグと似ていますが、比べると80〜200g と小ぶりで、オーストラリア全域で採れます。
マッドクラブ (Mud Crab)
Muddie とも呼ばれ、マングローブの生い茂る泥地に生息する重さ約500g〜1kg ほどのカニ。高級食材として知られています。
ヤビー (Yabby)
主に QLD の淡水に生息するエビですが、現在はほとんど養殖です。ヤビーという名前は原住民 Wemba族の言葉が由来しています。
オーストラリアの昆虫類
ウィチェッティの幼虫 (Witchetty Grub)
ウィチェッティの白い幼虫は、つまりイモムシ。カルシウムや鉄分など栄養価が非常に高く、生でも良し焼いても良しで、甘くてナッツのような味がするらしいです。
オーストラリアの果物・野菜
ここから先は写真がないものもあります。気になる方は、ブッシュフードショップのウェブサイトに写真が載ってますので、下記のリンクから確認してみてください。
クワンダン (Quandong)
乾燥した地域に生息するビタミンCが豊富なクワンダンの赤い実は先住民の重要な食糧で、これは入植者たちにも好んで食べられました。
ブッシュトマト (Bush Tomato)
別名 Kutjera、 Kampurarpa、Akatjurra、Desert Raisins と様々な呼び名があるトマトは長期保存にも適していて、何千年もの間、砂漠地帯に住む人々にとって重要な食材でした。
イラワラプラム (Illawarra Plum)
別名 Daalgaal、Gidneywallum。濃い赤い実は石のような殻に覆われた変わった果物で、中は鮮やかな紫色。粘着性のある甘い実は、胃腸にとても良い効果を発揮します。
カカドゥプラム (Kakadu Plum)
別名 Gubinge、Billygoat Plum、Murunga。独特の風味を持つ緑色の果実は世界で一番ビタミンC含有量があると言われ、ジャムやジュース、化粧品など幅広く使用され、防腐剤効果もあります。
ワリガルグリーン (Warrigal Greens)
別名 Warrigal Spinach、New Zealand Spinach 、Botany Bay greens。ヨーロッパに広まった最初のオーストラリア原産野菜のひとつ。キャプテン・クック が壊血病予防の為に船員たちに食べさせたと言われ、植物学者 ジョセフ・バンクス によって国外に紹介されました。
オーストラリアのナッツ
マカダミアナッツ (Macadamia Nuts)
今日マカダミアナッツはハワイのイメージがありますが、実はもともとオーストラリア原産。古来よりアボリジニの人々の食材や儀式に用いられていました。
ワトルシード (Wattle Seed)
オーストラリアの国花にもなっている ワトル。頑丈な殻に覆われた種子は、今も昔もオーストラリアに住む人たちにとって貴重な食材です。
ブンヤナッツ (Bunya Nut)
大きな澱粉質のナッツは、NSW や QLD に生息する堅い外皮に覆われたブンヤパイン (Bunya pine) という木から収穫されます。
オーストラリアのスパイス
レモンマートル (Lemon Myrtle)
精油でも知られるレモンマートルは爽やかなレモンのような香りのするハーブで、チキンや魚の香り付けからシャーベットのようなスイーツまで幅広く活用されています。
フィンガーライム (Finger Lime)
熱帯雨林の果物フィンガーライムは、サラダ・シーフード・パスタ・カレー・刺身・デザート・カクテルなどなど、使い方は色々です。
→ 近年、注目を浴びるブッシュフード『フィンガーライム』とは
ブッシュタッカーのプロダクト
メルボルンの会社 Original Juice Co. から100%オーストラリア産のブッシュタッカージュースも発売されています。味は2種類です。
- DAVIDSON PLUM & RIBERRY
- DESERT LIME, CINNAMON MYRTLE & RIVER MINT
※ この商品は限定品だったようで、現在は販売されていません。
最近はワトルの種やブッシュトマト入りのダンパーミックスをオンラインで買いました。
ブッシュタッカーが買えるお店
オーストラリア国内でブッシュタッカーがオンラインでも買えるお店をいくつか紹介します。
Creative Native
植物系だと Creative Native というところが商品豊富で良いなあと思いました。
レストラン業界でオーストラリアのネイティブフードを広めた先駆者的存在のシェフ Andrew氏によって2001年に設立されたそうで、南オーストラリア州にお店もあるみたいです。
75A Orsmond St, Hindmarsh SA 5007
https://creativenativefoods.com.au/
月〜金 9am-4pm
彼は『Australia’s Creative Native Cuisine』という本で、いかにオーストラリアネイティブの食材をおいしく調理するか130以上のレシピを紹介しているそうなので、それを参考にしても良いかもしれませんね。
DREAMTIME KULLILLA ART
DREAMTIME KULLILLA ART は、アボリジナルの方々が運営しているそうで、ブッシュタッカーもオンラインで注文できます。クイーンズランド州にはギャラリーを兼ねたお店もあるそうですよ。ブリスベンからそう遠くはなさそうです。
Tast Australia
Tast Australia のブッシュフードショップというサイトも良さそうです。こちらも会社はクイーンズランド州。
アマゾンなどでも
肉に関しては、オーストラリアにいるならカンガルーの肉はスーパーマーケットで普通に売っていますし、クロコダイルやエミューの肉を提供するレストランもあります。
最近は日本でもカンガルーの肉が食べられるレストランがあると聞きましたが、アマゾンなどでも売っているようです。
おわりに
ブッシュタッカー、調べていくと奥が深そうです。私ももっと勉強しないとなーと思ってます。
(主な参考記事: https://www.alldownunder.com)