ブッシュタッカーとは?オーストラリアのネイティブ食材と味わえる場所

 

レモンのように香る葉、コーヒーやナッツを思わせる種、キャビアのような粒が詰まった小さなライム。オーストラリアには、この土地ならではの食材がたくさんあります。

それらを紹介するときによく登場するのが、ブッシュタッカー(Bush tucker)やブッシュフード(Bush food)という言葉です。

ブッシュタッカーは単なる「珍しいオーストラリア食材」ではなく、アボリジナルおよびトレス海峡諸島民の人々が、それぞれの土地や海で受け継いできた知識と深く結び付いています。

この記事では、ブッシュタッカーの意味、よく使われるネイティブ食材、オーストラリアで実際に味わう方法を紹介します。

 

ブッシュタッカーとは何か

Bush tuckerオーストラリアの在来植物には、食用にされてきた実や種もあります

Bush tuckerの「tucker」とは、オーストラリア英語で食べ物という意味です。一般には、オーストラリアに自生する植物や、この土地に生息する動物・魚介などのうち、アボリジナルの人々が食べてきたものを指します。

現在は、商業栽培されたレモンマートルやワトルシードなどを使う料理や商品まで、広い意味でブッシュフードと呼ぶこともあり、レストランのメニューや商品説明では、native ingredients、native foods、Australian native ingredientsという表現もよく見掛けるようになりました。

ただ、ファースト・ネーションズ(先住民)の食文化全体を「ブッシュタッカー」というひとつの言葉だけで説明することは難しいです。

オーストラリアには、文化、言語、信仰、慣習の異なる多くのアボリジナルおよびトレス海峡諸島民の集団があります。海辺、熱帯雨林、砂漠、川沿いなど、暮らす環境によって得られる食材も、季節の捉え方も、採取・調理の知識も違うからです。

英語では、こうした土地・水域・文化・人とのつながりを含む考え方を、大文字でCountryと表すことがあります。単なる場所や所有地という意味ではありません。

AIATSIS(オーストラリア先住民・トレス海峡諸島民研究所)も、オーストラリアのファースト・ネーションズは、それぞれ独自の文化や言語、慣習を持つ多様な人々だと説明しています。現在の研究では、この大陸とのつながりは6万年以上に及ぶとされています。

ブッシュタッカーは「昔、サバイバルのために食べていたもの」だけではありません。知識は途切れず受け継がれていて、現在の家庭、文化体験、飲食店、商品にもつながっています。

「ネイティブ食材」「オーストラリア産」とはどう違う?

食材の記事を読んでいると、いくつかの言葉が混ざって使われることがあります。ここを分けて考えると分かりやすくなるでしょう。

言葉この記事での考え方例
ブッシュタッカー/ブッシュフードファースト・ネーションズの人々が食べ、知識を受け継いできた、この土地の食べ物。現在の商品や料理まで広く指す場合もあります。ワトルシード、クワンダン、カンガルーなど
ネイティブ食材オーストラリアに自生・生息する在来種を使った食材。商業的な料理や商品でよく使われる表現です。フィンガーライム、レモンマートルなど
オーストラリア産オーストラリアで生産・養殖・水揚げされたもの。在来種とは限りません。オーストラリア産牛肉、タスマニア産サーモンなど

たとえば、オージービーフは代表的なオーストラリア産食材ですが、牛はこの大陸の在来動物ではありません。反対に、フィンガーライムはオーストラリア原産の植物です。

また、在来種であれば何でも、すべての地域で伝統的に食べられてきたわけでもありません。どの土地で、誰が、どのように利用してきたのかまで含めると、食材の背景がより正確に見えてきます。

最近「発見された」食材ではない

ネイティブ食材は、近年になって突然生まれたものではありません。新しいのは、主に非先住民社会のレストラン、食品メーカー、小売店などで広く紹介・販売されるようになったことです。

AgriFutures Australiaの2012年の調査でも、野生採取だけに頼らない商業栽培や収穫後の管理が進み、一般の食品メーカーや小売業者の関心が高まっていると報告されています。

つまり、「最近注目され始めた食材」と「何万年も受け継がれてきた食文化」は、同じ時間軸の話ではありません。商業市場で知られるようになった時期だけを、ブッシュタッカーの始まりとして扱わないようにしたいですね。

代表的なオーストラリアのネイティブ食材

ここでは、現在のレストランやカフェ、専門店の商品などで比較的名前を見掛けやすい植物性食材を紹介します。

レモンマートルのお茶やお菓子、ワトルシード入りのチョコレート、クワンダンのジャムなどが試しやすいかもしれません。動物の肉に抵抗がある人でも、植物性のネイティブ食材から楽しめます。

レモンマートル (Lemon Myrtle)もともとはクイーンズランド州の亜熱帯雨林などに生息している植物です。レモンを思わせる強い香りが特徴で、お茶、スパイスミックス、チョコレート、ビスケット、魚や鶏肉の風味付けなどに使われます。匂いがいいので、精油やクリームなどの商品を見かけることも。

ワトルシード (Wattleseed)
ワトルと呼ばれるアカシア属(Acasia)の種子です。ワトルには非常に多くの種類があり、食用に利用される種子も複数あります。オーストラリアの国花にもなっている ゴールデンワトルもそのひとつです。種類や焙煎によって、ナッツ、コーヒー、チョコレートのような香ばしさがあり、パン、ケーキ、アイスクリーム、飲み物、肉料理の風味付けなどに使われます。

フィンガーライム (Finger Lime)
Finger limeフィンガーライムは、クイーンズランド州南東部からニューサウスウェールズ州北部の亜熱帯雨林などに自生するオーストラリア原産の柑橘類です。現在では品種改良・選抜されたものも含め、商業的に栽培されています。皮の中に、酸味のある小さな粒が詰まった果物。「ライムキャビア」と呼ばれることも。オイスター、魚料理、サラダ、デザート、カクテルなど、幅広く使われます。

カカドゥプラム (Kakadu Plum)オーストラリア北部原産の酸味や渋みを持つ緑色の果実。西オーストラリア州北部からノーザンテリトリー、クイーンズランド州北西部などに自生してます。地域によってGubinge、Billygoat Plum、Murungaなど別の名前も。非常に高いビタミンC含有量が有名で、パウダー、ソース、ジャム、飲み物、スキンケア商品などに使用されています。

クワンダン (Quandong)
ネイティブピーチとも呼ばれる赤い実は、乾燥・半乾燥地域に自生し、先住民の人々も古くから食用に利用してきました。酸味のある桃やアプリコットを思わせる風味で、ジャム、チャツネ、ソース、パイ、デザートなどに使用されます。

ブッシュトマト/クチェラ
(Bush tomato / Kutjera)

中央オーストラリア原産、ナス科の植物で、千住民の重要なブッシュフードのひとつです。現在食材として広く流通しているのは主に Solanum centraleで、他にも食用になる種はありますが、近縁種には有毒な実をつけるものもあるので注意。熟して乾燥した果実はレーズンやキャラメルを思わせる独特の風味があり、粉末のスパイス、ソース、チャツネ、肉料理などに使われます。

ソルトブッシュ(Saltbush)
乾燥地や塩分を含む土地などに育つ植物で、食材としてはOld Man Saltbush (Atriplex nummularia) などが利用されています。葉には自然な塩気があり、生葉や乾燥させた葉、粉末が調味料、揚げ物、ロースト料理などの味付けに使われています。

ネイティブペッパー/ペッパーベリー (Native pepper / Pepperberry)
南東オーストラリアの冷涼な地域に自生する植物で、代表的なのがTasmania lanceolataです。実は「ペッパーベリー」、葉は「ペッパーリーフ」として利用され、爽やかな香りと、普通の塩コショウとは異なる、あとから広がるような独自の辛みが特徴。スパイスミックス、ソース、肉料理、チーズなどに使われます。

ワリガルグリーン (Warrigal Greens)ほうれん草のように料理に使われる葉野菜です。海岸沿いなどに自生し、Botany Bay greenとも呼ばれ、初期のヨーロッパ入植者が食べたオーストラリア原産植物のひとつでもあります。キャプテン・クック が壊血病予防の為に船員たちに食べさせたことでも知られ、植物学者のジョセフ・バンクスによってイギリスにも紹介されました。後にはNew Zealand spinachとして欧米にも普及した時期がありましたが、現在はオーストラリアでも一般野菜というよりもネイティブ食材寄りです。炒め物、パイ、パスタ、付け合わせなどに使用されます。

マカダミアナッツ (Macadamia Nuts)
ハワイの名産というイメージも強いマカダミアナッツですが、もともとはオーストラリア東部の亜熱帯雨林に自生する植物です。先住民の人々にも古くから利用され、後にハワイに導入されて商業栽培が発展しました。ご存知のように、まろやかでバターのような風味は、そのまま食べるほか、菓子、ペースト、オイル、料理などに使われます。

 

 

オーストラリアの動物

カンガルー (Kangaroo)
カンガルー肉はルーミートとも呼ばれ、スーパーマーケットでも簡単に手に入る人気食材。ビーフのような赤身肉の味には少しクセがあり、脂肪が少なくたんぱく質やミネラルなどの含有量が高いので、健康志向の人たちにも好まれています。

エミュー (Emu)
オーストラリア固有動物 飛べない巨大な鳥 エミューは、アボリジニの人たちの大切な食糧源であると同時に儀式や薬としても使われました。脂肪が少ない赤身で濃厚な味わい肉は、高温で素早く焼くのがポイント。

クロコダイル (Crocodile)
獰猛で危険なクロコダイルの肉は、白身のさっぱりした鶏肉のような味です。食用の肉は養殖で、通常ワシントン条約で捕獲が制限されています。

ワラビー (Wallaby)
カンガルーよりもひとまわり小さいワラビーは、カンガルー肉と同様脂肪が少なくヘルシーですが、味にクセがないので食べやすいかもしれません。

ポッサム (Possum)
オーストラリア各地で見掛けるポッサムは、食材としてはそんなに一般的ではないものの、タスマニアに行くとよく食べられているようです。

ゴアナ (Goanna)
ゴアナは全長1.6mにもなるオオトカゲ。白身肉は鶏肉のようで、ウワサではヘビよりもおいしいらしいですが、レストランでは流通していません。鋭い爪を持ち噛まれるとかなり痛いようなので注意。

オーストラリアの魚介類

オーストラリアに来たらシーフードというくらい人気の魚介類。

バラマンディ (Barramundi)
スズキの仲間で大きいものは全長2m に達するというバラマンディは、オーストラリアではよく食べられている魚。基本的に暖かい地域に生息しています。

モートンベイバグ (Morton Bay Bug)
赤褐色の甲殻を持つバグは別名ベイロブスターと呼ばれ、その名の通りロブスターにそっくりな食感で人気。主にQLD や NT に生息していて、120〜380gほど。

バルメインバグ (Balmain Bug)
味も見た目もモートンベイバグと似ていますが、比べると80〜200g と小ぶりで、オーストラリア全域で採れます。

マッドクラブ (Mud Crab)
Muddie とも呼ばれ、マングローブの生い茂る泥地に生息する重さ約500g〜1kg ほどのカニ。高級食材として知られています。

ヤビー (Yabby)
主に QLD の淡水に生息するエビですが、現在はほとんど養殖です。ヤビーという名前は原住民 Wemba族の言葉が由来しています。

オーストラリアの昆虫類

ウィチェッティの幼虫 (Witchetty Grub)
ウィチェッティの白い幼虫は、つまりイモムシ。カルシウムや鉄分など栄養価が非常に高く、生でも良し焼いても良しで、甘くてナッツのような味がするらしいです。

オーストラリアの果物・野菜

ここから先は写真がないものもあります。気になる方は、ブッシュフードショップのウェブサイトに写真が載ってますので、下記のリンクから確認してみてください。

イラワラプラム (Illawarra Plum)
別名 Daalgaal、Gidneywallum。濃い赤い実は石のような殻に覆われた変わった果物で、中は鮮やかな紫色。粘着性のある甘い実は、胃腸にとても良い効果を発揮します。

ブンヤナッツ (Bunya Nut)
大きな澱粉質のナッツは、NSW や QLD に生息する堅い外皮に覆われたブンヤパイン (Bunya pine) という木から収穫されます。

オーストラリアのスパイス

ブッシュタッカーのプロダクト

Bush tucker

メルボルンの会社 Original Juice Co. から100%オーストラリア産のブッシュタッカージュースも発売されています。味は2種類です。

  • DAVIDSON PLUM & RIBERRY
  • DESERT LIME, CINNAMON MYRTLE & RIVER MINT

※ この商品は限定品だったようで、現在は販売されていません。

Damper

最近はワトルの種やブッシュトマト入りのダンパーミックスをオンラインで買いました。

ブッシュタッカーが買えるお店

オーストラリア国内でブッシュタッカーがオンラインでも買えるお店をいくつか紹介します。

Creative Native

植物系だと Creative Native というところが商品豊富で良いなあと思いました。

レストラン業界でオーストラリアのネイティブフードを広めた先駆者的存在のシェフ Andrew氏によって2001年に設立されたそうで、南オーストラリア州にお店もあるみたいです。

Creative Native Foods
75A Orsmond St, Hindmarsh SA 5007
https://creativenativefoods.com.au/
月〜金 9am-4pm

彼は『Australia’s Creative Native Cuisine』という本で、いかにオーストラリアネイティブの食材をおいしく調理するか130以上のレシピを紹介しているそうなので、それを参考にしても良いかもしれませんね。

DREAMTIME KULLILLA ART

DREAMTIME KULLILLA ART は、アボリジナルの方々が運営しているそうで、ブッシュタッカーもオンラインで注文できます。クイーンズランド州にはギャラリーを兼ねたお店もあるそうですよ。ブリスベンからそう遠くはなさそうです。

DREAMTIME KULLILLA ART
Unit 1/349 MacDonnell Road, Clontarf QLD 4019
https://www.kullillaart.com.au/

Tast Australia

Tast Australia のブッシュフードショップというサイトも良さそうです。こちらも会社はクイーンズランド州。

アマゾンなどでも

肉に関しては、オーストラリアにいるならカンガルーの肉はスーパーマーケットで普通に売っていますし、クロコダイルやエミューの肉を提供するレストランもあります。

最近は日本でもカンガルーの肉が食べられるレストランがあると聞きましたが、アマゾンなどでも売っているようです。

 

おわりに

ブッシュタッカー、調べていくと奥が深そうです。私ももっと勉強しないとなーと思ってます。

 

(主な参考記事: https://www.alldownunder.com)

>Acknowledgement to Country

Acknowledgement to Country

This website would like to acknowledge Aboriginal and Torres Strait Islander people, the traditional custodians of this land and pay our respects to Elders both past and present.このウェブサイトは伝統的な土地の所有者であるアボリジナルおよびトレス海峡諸島の人々、そして過去と現在の長老に敬意を表します。