オーストラリアでは定番の飲み物として知られているレモンライム & ビターズ (Lemon, lime and bitters、略して LLB) は、国内で年間1億杯以上提供されている人気のドリンクです。
独特な風味がおいしくて、思わずレストランでコーラやファンタなどのありきたりなメニューの中からレモンライム & ビターズを選んでしまう人は少なくないはず。
ABCニュースでは “あまりにも身近なので気付いていない人も多いが、レモンライム & ビターズはムスクスティックやドロップベアと同じく、旅行者を驚かせるオーストラリア独自の国民的ドリンクである。” と表現されています。
そんなレモンライム & ビターズは、一体いつどんな風に飲まれるようになったのでしょうか。実は自宅でも簡単に作れるので、それも含めて詳しく見ていきましょう。
オーストラリアにいて、もしまだ飲んだ事がない人がいたら、ぜひチェックしてみてください。
レモンライム & ビターズとは?
レモンライム & ビターズはその名の通り、ほんのり苦味のあるシトラス味のドリンクです。
本来は微量ですがアルコールが入っているので、お店によってはカクテル扱いになっている事もありますが、様々なメーカーから発売されているレモンライム & ビターはソフトドリンクとしてスーパーマーケットやコンビニなどで購入できます。
アンゴスチュラビターズが決め手
レモンライム & ビターズのアクセントとなる苦味は、アンゴスチュラ ビターズ (Angostura Bitters) という、アルコール度44.7% のリキュールの味です。ボトルショップで $20ちょっとで売っています。
ラムベースにハーブやスパイスなどが濃縮されている柑橘系の香りは、その風味の良さから様々なカクテルに使われ、地域によってはスープやサラダなどの料理に入れたりする場合もありますが、いずれも原液は濃くて苦いので使用するのは数滴だけです。
ラベルには、1873年のウィーン万国博覧会で獲得したオーストリアの皇帝フランツ・ジョセフ1世が描かれたメダルと、ジーゲルト医師のサインが付いています。
実はこのアンゴスチュラビターズ、1824年にベネズエラのアンゴスチュラ(現在のシウダードボリバル)にイギリス陸軍病院に医師として赴任したドイツ人、ヨハン・ゴッドリーブ・ベニヤミン・ジーゲルト (Johann Gottlieb Benjamin Siegert) が健胃強壮剤として考案したものでした。
船酔い治療にも広く使われていて、1840年代頃のイギリス海軍の船にも常備薬として積まれていたそうです。
船酔い治療から人気ドリンクへ
Photo by Abi Skipp
最初は船酔いの治療に使われていたアンゴスチュラビターズでしたが、そのうちイギリス海軍のセーラーたちによって “世界でいちばん最初に作られたカクテル” と言われるピンクジン (アンゴスチュラビターズをジンに混ぜたもの) として飲まれるようになりました。
それによってイギリス植民地の国々にもどんどんアンゴスチュラビターズが普及して行き、オーストラリアは1879年にシーゲルト医師の息子カルロスが直接訪問してプロモーション活動を行っています。
レモネードにアンゴスチュラビターズを入れた飲み物もロンドンで大流行し、その爽やかな味はオーストラリアの暑い気候とも合い、たちまち一躍トレンド的存在となりました。
地域独自にアンゴスチュラビターズを使った飲み物も生まれ、ナイジェリアではオレンジジュースやグレナデンシロップ、レモネードなどにアンゴスチュラビターを加えたチャップマン (Chapman) が、香港ではジンジャービアとジンジャーエールにライムコーディアルとアンゴスチュラビターを加えたガンナー (Gunner) が人気を博しています。
そんな流れの中、オーストラリアのレモンライム & ビターズは、いつの間にか自然と広がっていったもので、はっきりといつ誰が始めたかは定かではありません。ただ、20世期初期には一般的なドリンクとして既に定着していたのは確かなようです。
(参考: https://www.abc.net.au/ / https://en.m.wikipedia.org/)
レシピ – 材料はこれだけ!
レモンライム & ビターズの作り方はとても簡単で、レシピは色んなバリエーションがあるものの、基本的にはライムコーディアルとレモネード、それからアンゴスチュラビターズがあればOK。
- アンゴスチュラビターズ
- ライムコーディアル
- レモネード (スプライト)
- 生のレモンかライム (あれば)
アンゴスチュラビターズだけはアルコールなのでボトルショップで購入する必要がありますが、あとの材料は全てスーパーマーケットで調達できます。
コーディアル (Cordial) は水で薄めて飲む原液の事。メーカーは何でも大丈夫なので、ライム味を用意します。
(最近はレモンライム & ビターズ味というコーディアルも売られていますが)
つぎにレモネードですが、オーストラリアでレモネードというとスプライトや7-Upのような飲み物を指します。黄色いレモン味の炭酸飲料 (Solo や Lift など) はレモンスカッシュと呼ぶので、混乱し内容に注意してくださいね。
作り方
作り方は、
これで出来上がりです。
もしあれば、切った生のレモンかライムを入れると見栄えも良くなります。ライムを絞って入れたりソーダウォーターを使ったり、色々とアレンジしてみても良いですね。
おわりに
それにしても、アンゴスチュラビターズが強壮剤だったとは…、私自も今回調べていて初めて知りました。養命酒みたいな感じですかね。
レモンライム&ビターズは、アルコールはあまりだけどソフトドリンクではちょっと寂しい、という人にぴったりの飲み物だと思います。
アンゴスチュラビターズは、家に1本常備しておくと何かと重宝するかもしれませんね!
でもわざわざ作らなくても、オーストラリアではスーパーマーケットやレストランで気軽に飲めるので、ちょっと試してみたいという人もぜひ〜!