ひと昔前は「オーストラリアの料理はおいしくない」と言われていた時代もあったようですが、最近はそうでもないのではないでしょうか。
確かに、今でも田舎へ行くと時々残念な食べ物に遭遇する事はありますし、大きな都市でも「この値段でこの味…」とハズレを引くこともあります。が、その反面で世界トップクラスと言われるレストランも数多くあります。
そもそも、オーストラリア大陸に西洋人が住むようになったのは1788年から。イギリス文化が引き継がれたのに加え、移民によって発展して来た国なので独自の食べ物は生まれにくかったと言われています。
でも逆に言えば、それは多国籍なおいしい料理を食べれるという事。それに、探せば意外とオーストラリア独自の料理もありました。
という事で、今回はオーストラリアで発展して来た食べ物を歴史を含めて見ていきたいと思います。
みなさん、パッと何が思い付きますか?
オーストラリアの食材を使った料理
まずはオーストラリア原産の食材を楽しむ食事を挙げていきます。
オージービーフ
とりあえずオージービーフですよね。オーストラリアにはステーキ専門店がたくさんあります。
オージービーフとはオーストラリア産の牛肉という意味なので、人気のあるオーストラリア育ちのアンガスや和牛 (Wagyu) などもオージービーフに入ります。
ちなみに、和牛と神戸牛は同じものと思っているオーストラリアの人もいて、和牛をコービー (Kobe) と呼ぶ人もいるようですよ。
あとステーキと言えば、ラム肉もよく食べられてますね。
シーフード
そして、オーストラリアで採れるシーフードも外せません。
シーフードレストランも数多くあり、バラマンディ、マレーリバーコッド、シドニーロックオイスター、モートンベイバグ、クレイフィッシュ、マッドクラブ、ヤビー、サーモンなど種類も豊富です。
ブッシュタッカー
ブッシュタッカー (Bush tucker) というのは、オーストラリア原住民たちが古くから食べて来たオーストラリア原産の食材です。先に紹介したシーフードもそうですし、カンガルー、エミュー、クロコダイルなどの肉類から、ワトルなどの種子や果物など広範囲の食べ物を指します。
近年は健康的な食材として、世界中で注目を浴びるようになった食材でもあります。
では次に、イギリスから引き継いでいる食事を見ていきましょう。
イギリス由来の料理
1788年に西洋人がオーストラリア大陸に来た時、オーストラリアには大昔から食べられて来たオーストラリア由来の食材があるにも関わらず、彼らは故郷イギリスの料理を好みました。
その食文化は現在のオーストラリアにも色濃く残っています。
ミートパイ
現在オーストラリアの国民食と言われる事もあるミートパイ (Meat Pie)は、入植初期にはすでに食べられていたようで、限られた食材で作れる食べ物として重宝していたようです。
オーストラリアではミートパイ専門店もよく見掛けますし、ベーカリーでも売ってます。
スーパーマーケットの冷凍食品コーナーに行くと様々なメーカーのミートパイがあり、2019年にはフォーントゥエンティ (FOUR’N TWENTY) が日本に進出しました。
ちなみに、タスマニアではホタテパイ (Scallop Pie) も有名です。
あと、ソーセージロールは?という意見をもらったので調べてみたら、こちらもやっぱりヨーロッパ発祥の食べ物。ミートパイに並んでよく食べられてます。
オーブン料理
それから、オープンを使った料理もイギリスから受け継いだ文化と言えます。
オーストラリアに来てからオーブンを使う回数が増えたという話もよく聞きますが、鳥の丸焼きや肉のブロックを買って来て、塩コショウしてオーブンに入れるだけなので楽ちんです。
あと、オーブン料理ではないのですが、CHIKOさん (@wayaco4) にシルバーサイドというコーンビーフの塊を使ったオーストラリア料理を教えてもらいました。
こういう系の料理は探したらたくさんありそうですね!
フィッシュアンドチップス
フィッシュ & チップス (Fish & Chips) は、19世紀イギリスで食べられるようになったもので、オーストラリア各地でたくさんのお店を見掛けます。
オーストラリアで最初にフィッシュ & チップスが売られたのは1879年、シドニーのオックスフォードストリートにあったお店だそう。
フィッシュアンド チップス自体はイギリス発祥ですが、オーストラリアの魚が使われているなら、一応オーストラリア料理 (?) ではないでしょうか。
私は油っこくてあまり得意ではないで、うちのオーストラリア人パートナーにおすすめを聞いてみました。
ちなみに Flake はサメの事。ここら辺はまた改めて書きますね。
ベイクドビーンズ
ベークドビーンズ (Baked Beans) はトマトソース味の豆が入った缶詰めで、色んなメーカーから発売されています。
トーストに乗せて食べたり、サイドディッシュにしたり…。
ちなみに缶のスパゲティを乗せる人もいるとか。これ、多分私は苦手なので試した事はありません… (笑)
これらがだいたいイギリスから受け継いで来たと思われる食文化でした。
じゃあオーストラリア独自の食べ物は全くないのか?と言えば、そんな事はありません。
オーストラリア独自の食べ物
オーストラリアで生まれた食べ物はそんなに多くないですし、わりと最近のものが多いですが、ちゃんとあります。ここではそんなオーストラリア由来の食べ物や生活に根付いているスタイルなどを紹介します。
ダンパー
ダンパー (Damper) は、簡単に言うと無発酵のパンのようなものです。
もともとはオーストラリア原住民の間で食べられていた植物の種子やナッツ、根っこなどを砕いて粉状にして焼いていたものが原型で、19世紀にオーストラリア各地で荷物を背負って農場から農場へ歩いて仕事を探していたスワッグマンたちは小麦粉を材料にしてそれを作り、焚き火で焼いてました。
現代でもキャンプなどで作られていますし、たまーに売っています。
ベジマイトサンドイッチ・トースト
オーストラリア家庭に常備されていると言われる独特の風味を持つペースト、ベジマイト (Vegemite) も、オーストラリアの食文化を語る上で欠かせない食べ物でしょう。
第一次世界大戦の時にイギリスから輸入していたマーマイトが入手困難になったので、代わりになるものをと開発されたのがこのベジマイトでした。最初は普及させるのに苦労したというのが信じられないくらい、今は一般家庭に浸透しています。
食べる時は、ベジマイトをとにかくうすーくパンに塗って食べてくださいね!バターやチーズとの相性も抜群です。
ビートルート
なぜかオーストラリア人の大好きなビートルート (Beetroot) は、生の野菜でも缶詰めでもよく売られています。
別にオーストラリアだけで食べられているわけではないのですが、オージーバーガーには必ず入っている必須アイテムですし、ディップにしたりサラダに入れたり何かと使われている食材です。
チコール
チコロール (Chiko Roll) は中国の春巻きにヒントを得て考えられた、野菜と肉をパイ生地で包んで揚げた食べ物です。1950年代にスポーツ観戦中にも食べやすい食べ物としてビクトリア州ベンディゴの会社で製造されるようになりました。
オーストラリアのソウルフードと言う人もいるようで、全盛期だった70年代は年間4千万本売り上げたとの事。かつては日本にも輸出されていたようですよ。
バーベキュー (ソーセージ)
そして、オーストラリアの生活に欠かせないバーベキュー。オーストラリア人はよく略してバービー (Barbie) なんて呼んでます。
オーストラリア独自の食事でもなければ、料理と言うよりも文化と言う方が正しいかもしれません。家の庭やベランダにバーベキュー台が常備してある事が多く、休日にそれぞれ食材を持ち寄ってパーティーをしたり、イベント事でもバーベキューだったり、とにかくオーストラリアでは何かとバーベキューをする機会があります。
公園には無料バーベキュー台もあるので、ワーホリや学生の人たちが大勢集まってバーベキューしている姿も珍しくありません。
ただ、オーストラリアでバーベキューと言ったら、ソーセージを焼いたものを指す事があり、最初は知らなくてがっかりした事も (笑) ホームセンターのバニングス (Bunnings) の駐車場で焼いてるのも有名ですね。
ジャッフル
ジャッフル (Jaffle) はホットサンドの事。
これは食べ物そのものというよりも道具なのですが、長い柄のついたジャッフルアイアン / ラインという直接暖炉などの火にかけて作るホットサンドメーカーは、1949年にシドニーの医師アーネスト・スミザーズ氏 (Ernest Smithers) が発明したものです。
柄の短いものやふたつ同時に作れるものなど色々あり、ホットサンドだけではなく、パイを焼いたり目玉焼きを作ったり、キャンプでも大活躍しそうですね!
詳しくはこの道具を教えてくれたナイーブMEさん (@kengyonouka) のブログを読むと良いと思います!
ちなみにスミザーズ氏は、1933年にゴム製のサーフマットSurfoplane も発明したそうです。
さて、最後は様々なバックグラウンドを持つ人たちが住んでいるオーストラリアならではの料理を紹介します。色んな国の食べ物が混じったモダンオーストラリア料理と呼ばれる料理です。
モダンオーストラリア料理
食の観点からオーストラリアの歴史を辿っていくと、まずは1851年のゴールドラッシュでオーストラリアに中華料理や中国の食材がもたらされました。世界中からオーストラリアに夢を求めて人が集まって来た時、多くの中国系の人々も移住して来たからです。
そして、第二次世界大戦後にはヨーロッパからの移民も多く受け入れられ、更にバラエティ豊かな食事が楽しめるようになりました。今日オーストラリアで飲まれているエスプレッソ式コーヒーが入って来たのもこの頃です。
近年にはオーストラリア独自の食材ブッシュタッカーも見直されていて、独創的な料理も注目を浴びています。
そんな色んな国の文化が混じった料理はこちらです。
フュージョン料理
フュージョン料理は様々な国の食材や調理方法を組み合わせたスタイルの料理で、モダンオーストラリア料理のひとつです。
高級レストランで提供される事が多く、例えば日本食が洋風仕上げになっているのを見ると新鮮な驚きがあります。
チキンパルミジャーノ
オーストラリアのパブなどによくあるクラシックメニューのチキンパルミジャーノ (Chicken Parmigiana) は、チキンを揚げたシュニッツェルにトマトとチーズを乗せたもので、地域によっては略して「パルミ (Parmi)」と呼ぶ人と「パルマ (Parma)」と呼ぶ人がいます。
2020年には人気のお菓子シェイプスのオージーレジェンドシリーズの味にもなりました。
Sushi
お寿司はオーストラリアで人気の食べ物のひとつですが、“Sushi” とアルファベットで呼ぶ方がしっくりするくらい本場の日本とはちょっと違う食べ物になっています。
アボカドやチキンカツが入っていたり、こういう食べ物もオーストラリア料理と言えるかもしれません。
他の国にもこういう食べ物が結構ありそうですよね。
完熟マンゴーカレー (?)
これはちょっと不確かではありますが、オーストラリアのインド料理レストランでよく見掛ける熟したマンゴーを使うチキンカレーは、オーストラリアが発祥ではないかという説が浮上しています。
インド在住の Akemiさん (@chitrini) によると、インドでは酸っぱい未熟マンゴーを使う事はあっても、熟したものはほぼ使われないとの事。昔、シドニー郊外にあるインド料理レストランのインド人スタッフと話した時「ちょっと変な料理だけど人気があるので作っている」と言ってたそうなんです。
【広く質問】熟したマンゴーを使うマンゴーチキンカリー(バターチキンにマンゴーピューレを加えたような味わい)、お住まいの国には存在しますか?写真はオーストラリア・NSW州のフードコートのもの。NZにもあるようです。 pic.twitter.com/Sy2nMpHO4P
— Akemi Madras (@chitrini) March 16, 2021
Akemiさんは、その発祥についてリサーチ中です。とても興味深い話ですよね。
スパゲティボロネーゼやラザニアなども (?)
「スパゲティボロネーゼはオーストラリア料理」というジョークをいう人もいますが、それくらいオーストラリアで日常的に食べられている海外由来の食べ物はたくさんあります。
ラクサやタイ料理などのアジア料理もオーストラリアに深く浸透しているようにも思いますし、ハンバーガーやチキンシュニッツェルなどは、もはやオーストラリア料理なのかも…。
突き詰めていくと何がオーストラリア料理なんだろう?と分からなくなりそうですね。
おわりに
様々な国の食文化が融合するオーストラリアの食文化、実にオーストラリアらしいと思うんです。
これから新しく生まれるメニューも、もしかしたらあるかもしれませんね。